10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
エドリントン・グループ社が、タムドゥ蒸留所の生産をストップしたのが2010年のこと。昨年6月にイアン・マクロード社が同蒸留所を買収したが、来年の2013年にはいよいよ操業を再開するという。イアン・マクロード社は2003年にもエドリントン・グループ社からグレンゴイン蒸留所を買い取っており、これで運営する蒸留所は2つになった。
タムドゥといえば、一時代前の製麦方式であるサラディン式モルトティングにこだわっていた蒸留所として知られる。このサラディン式というのは19世紀にフランス人のチャールズ・サラディンという人物が発明した製麦法で、長さ50メートル、深さ1.5メートル、幅3メートルほどのまるで細長いプールのような箱形のスペースに大麦を入れ、網目状の床から空気を送って撹拌する仕組み。スコップなどを使って人力で撹拌する伝統的なフロアモルティングとくらべ、効率面が大幅に改善された。
このサラディン式は多くの蒸留所で採用されたが、1980年代前半にタムドゥ以外ではすべてが撤廃されてしまった。それを機に自家製麦を廃止した蒸留所も少なくない。自家製麦が廃れた理由は、1960年代から1970年代にかけて登場したモルトスターと呼ばれる製麦業者に、麦芽づくりを委託するというやり方が主流になったため。モルトスターではサラディン式ではなく、ドラム式という低コストで大量生産が可能な新しい製麦方式を導入していた。そのためコストのかかる自家製麦を廃止し、外注する蒸留所が続々と現れた。
よってタムドゥが復活しても、サラディン式モルトティング、ならびに自家製麦は撤廃されることが予想される。コストのかかる物を、わざわざ甦らせる理由はどこにもない。エドリントン傘下の時代には、同系列の他蒸留所(グレンロセスやマッカラン、ハイランドパーク等)に麦芽を供給する役割を担っていたが、すでにその必要もなくなっている。前時代のウイスキー産業を象徴するものがまたひとつなくなることは、コアなウイスキーファンにとっては残念なことだろうが、まあ仕方がない。ちなみにサラディン式モルトティングだが、決して絶滅したわけではなく、その命脈は今日でも細くはあるが保たれている。べリックのシンプソンズ・モルト社やバッキーのグリーンコア社のような大手モルトスターでは、改良が加えられた新型サラディン式モルティングで少量だが麦芽が製造されている。
今月の23日ウイスキーメーカーのコンパス・ボックスが、ザ・ウイスキー・エクスチェンジのスキンダー・シン氏の協力を得て開発した新商品、ザ・ラスト・ヴァッテドモルトをリリースした。なぜ「ラスト」なのかというと、スコッチウイスキーの新たな法律によって、“ヴァッテド”という表現の使用が11月22日をもって規制されたからだ。11月23日以降にボトリングされるウイスキーのラベルや関連の印刷物、ウェブなどで、ヴァッテドモルトはすべて“ブレンデッドモルト”と言い換えることが義務付けられた。
英国で、スコッチウイスキーを定義する新たな法律が施行されたのは、一昨年の11月23日のこと。ヴァッテドモルトやピュアモルトといった法定外の表記は使えなくなることが決まったが、ラベルなどの表示変更には2年間の猶予が設けられた。今月の22日にその期限を迎えたわけだ。
今回の法律改正の発端となったのが、2003年のいわゆる「カードゥ=ピュアモルト論争」だ。これはディアジオ社がカードゥとグレンダランのヴァッテドモルトを、シングルモルトと同じ「カードゥ」のブランド名で発売し、もめごとを起こした一件。ラベルにはシングルモルトではなく、定義の曖昧なピュアモルトと記されていたため、「紛らわしい!」といった戸惑いの声があがり大きな論争を呼んだ。最終的には同社が当該商品をすべて回収し、この件は一応の決着を見る。しかし事態を重く見たスコッチウイスキー協会は、翌年に法律改正に向けた活動に着手した。
さてこのザ・ラスト・ヴァッテドモルトのスペックだが、ノンチルフィルタリングのカスクストレングス(53.7%)、1323本限定で価格は175ポンドだという。気になる中身だが、22%がファーストフィルのシェリー樽で寝かせたスペイサイドモルト36年もの(1974年ヴィンテージ)で、残りはアメリカンオーク・ホグスヘッドのアイラモルト26年もの(1984年ヴィンテージ)だとのこと。蒸留所名は明かしていないが、推測できるヒントを出している。スペイサイドは「アベラワー村にある2つの蒸留所のうちの若いほう」、アイラは「アスケイグ港のある村の有名な蒸留所」だとのこと。アイラはカル・イラに間違いないが、スペイサイドはちょっと考えてしまう。2つの蒸留所は恐らく、アベラワーとグレンアラヒーだ。住所にアベラワーと付く蒸留所は他にもいくつかあるが、「アベラワー村の蒸留所」といえばこの2つをはずすことはできない。となると、スペイサイドモルト36年ものの正体はグレンアラヒーだと推測できる。
なお同時に、ザ・ラスト・ヴァッテドグレーンもリリースされている。こちらの中身は、31%がインヴァーゴードン1965(42yo)、14%がカースブリッジ1979(29yo)、20%がポート・ダンダス1991(20yo)、そして35%がキャメロンブリッジ1997(14yo)となっている。これはこれで興味深い。297本限定で、価格は125ポンド。
日付が変わる間際、こんな催しも行われたようだ(笑)。
1986年11月に操業を停止したグレングラッソ蒸留所は、当時は操業再開の見込みはほとんどないとまでいわれていた。しかし2008年2月にロシアや東欧の投資家たちが中心になり、エドリントン社から同蒸留所を買収、翌年の12月には操業を再開し奇跡の復活を遂げた。最初に詰められた樽が今年の12月16日に熟成期間がちょうど3年を迎え、法律的にウイスキーと呼べる歳になる。誕生日を迎えたらすぐにボトリングされる予定だそうで、ノンチルフィルタリングでカスクストレングス、650本の限定販売だという。
この“一番目の樽”だが、リフィルのシェリーバットとのこと。ユニークなのは、熟成が2年を経た2010年12月16日に一旦他の2つのシェリー樽(ペドロヒメネスのファーストフィルと、パロ・コルタドのファーストフィル。共にホグスヘッド)に詰め替えられたことだ。9か月後の2011年9月16日には、どちらも再び元のリフィルバットに戻され、現在マリッジ中だという。
パロ・コルタドは珍しいシェリーだ。風味の特徴はオロロソの豊かさと、アモンティリャードの切れのよさを合わせもつ。オロロソと同種の酸化熟成系のシェリーだが、人為的に造ることができない偶然の産物でその確率は1~2%程度だという。
オフィシャルサイトのオンラインショップでは、すでに先行予約販売を開始している。価格は90ポンドとやや高めの設定だが、“一番目の樽”というプレミアムを考えれば仕方がないのかも。
今月の16日に“100%アイラ”のシングルモルトウイスキーが、キルホーマン蒸留所からリリースされた。100%アイラとは、すなわち原料の大麦栽培、製麦、蒸留、熟成、ボトリングのすべてをアイラ島で行ったということ。同蒸留所は創業時「100%アイラ」を目標として掲げ、一昨年には同コンセプトのニュースピリッツも発売しているので大きな驚きはないが、いよいよ出たかというのが正直な感想でもある。
100%アイラといえばブルイックラディでも同じような製品を出しているが、彼らは製麦を外部(インヴァネスのベアーズモルト社)に委ねているので正確には100%アイラとはいえない。なので今回のキルホーマンの製品には、それなりの意味がある。
この100%アイラのキルホーマンだが、加水されたアルコール度数50%のものと、カスクストレングスで詰められた蒸留所限定販売ボトルの2種類がリリースされている。公表されているそれぞれのスペックは、以下の通り。
Edition | Alc. | Outturn | Price | Description |
Normal edition | 50.0% | 11,300 | £69.00 | Combination of fresh and refil bourbon barrels for over 3 years |
Special edition | 61.3% | 1,060 | £149.00 | Presented in a hand crafted american white oak presentation box, available from the distillery only |
以前「南極で100年前のウイスキーを発掘」という記事を書いたが、その続報が届いたので紹介しようと思う。探検家アーネスト・シャクルトンが南極に残したウイスキーは、南極歴史遺産トラスト(Antarctic Heritage Trust)によって100年ぶりに発掘されたが、それが昨年2月6日のこと。その後、ウイスキーは保管されていた木箱ごと、ニュージーランド南島のクライストチャーチにあるカンタベリー博物館に送られた。「英国南極探検1907 (British Antarctic Expedition 1907)」と書かれた木箱はそこで慎重に解凍され、中のボトルが取り出されたという。
ウイスキーの銘柄は、ブレンデッドスコッチのマッキンレーズ。現在はインドUBグループ系列のホワイト&マッカイ社が、このブランドのライセンスホルダーだ。UBグループの総帥であるビジェイ・マルヤ氏は、これらの貴重なボトルが南極歴史遺産トラストの倉庫に放置されていることをいやがり、今月の17日に3本のボトルを自家用ジェットに積んでスコットランドに持ち帰った。これらのウイスキーは、今後6週間かけてインヴァーゴードンにある同社の研究室で分析され、マスターブレンダーのリチャード・パターソン氏によってアロマやフレーバーのチェックが行われる予定だという。なおサンプルの抽出方法だが、抜栓はしないで、コルクに注射針を突き刺して抜き出す。これは液体が大気に触れることによって変質するのを防ぐためで、ボトルから古い酒を抽出する際にはよく使われる方法だ。
パターソン氏は、「このウイスキーは氷の中で保存されていたため、フレーバーはほとんど劣化していない可能性が高いですね。また、風味は今日のブレンデッドウイスキーよりも重く、よりピーティであることも予想されます。分析器にかければ原料の大麦の産地と品質を特定できるばかりでなく、麦芽やピート、あるいは含まれている毒素や金属成分をも調べることができます。このサンプルが示す特性は、例えるなら“指紋”のようなものです。それらを手がかりに、現代ではすでに失われてしまった19世紀後期のウイスキー製造工程を推察することもできます。」とコメントしている。
なお分析が終われば、残りのウイスキーとボトルはニュージーランドに送り返されることになっている。というのも、歴史的な南極探検家の遺物は、研究や調査等の目的で一旦掘り起こしても、最終的には発見した場所に戻しておかなくてはならないと、国際法で定められているためだ。ただし例外のケースもあるそうで、その遺物の破損や劣化もしくは盗難を防ぐという見地から、元の場所に戻すよりも常温で保管しておく方が望ましいと判断された場合には、その法律の適用を免れるという。南極歴史遺産トラストは現在その判断をしている最中だと、専務取締役のナイジェル・ワトソン氏は説明している。
ちなみにこのマッキンレーズだが、1896~97年頃にボトリングされたものらしい。オーストラリアのウイスキー専門家は、もし市場にだされたら、9万ドル(約740万円)の値はつくだろうとコメントしている。