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明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。
昨年の11月24日にグラスゴーで行われたマクティアーズのオークションで、スプリングバンク1919が出品され20,000ポンド(約260万円)で落札された。落札推定価格が20,000~30,000ポンドだったので、予想どおりの結果だということになる。マクティアーズ社のウイスキー鑑定家アンドリュー・ベルさんのインタビュー映像がYouTubeにあり、このスプリングバンク1919についてコメントしている。
ラベルに「Campbeltown 1919」と記されたこのスプリングバンクは、1919年に蒸留され1970年にボトリングされた50年もののシングルモルトだ。24本しかボトリングされず、ギネスブックでは「ロンドンのハロッズで、1本6,500ポンドで販売されている世界一高価なウイスキー」として認定されたことでも知られる(実はアルコール度数は38%しかない。すなわち法律上では、スコッチウイスキーと呼べないのだが)。また同じくロンドンの百貨店フォートナム&メイソンでは、7,500ポンドで販売された。
余談だが、フォートナム&メイソンのスプリングバンク1919はかつて盗難にあったことがあるそうだ。しかし、ディスプレイ用のボトルには、何とモルトビネガーが詰めてあったという。モルトの代わりにモルトビネガーをつかまされた泥棒だが、当分フィッシュ&チップスの調味料には困らなかっただろう。
さて20,000ポンドという落札価格だが、すぐに思い出したのが2年前のスプリングバンク1919売買の一件だ。オランダでは2~3年前からウイスキーの投資が注目を浴びているが、2009年にオランダの投資会社がスプリングバンク1919を50,000ポンドで買って話題になった。しかも2本もお買い上げになったそうで、その気合のほどが伺える。現在このスプリングバンク1919は55,000ポンドで売りに出されているが、まだ買い手はついていない。今回の20,000ポンドという落札価格は、加熱気味のオランダの投資ブームに水を差すことになるかもしれない。
64年物のダルモア「トリニタス (Trinitas)」がリリースされた。リリースされたといっても、たったの3本のみだ。すでに2本は買い手がついたという(うち1人はウイスキーエクチェンジのスキンダー氏)。残りの1本は、ロンドンで開かれる「ウイスキーショー」のためにリザーブされているらしい。
価格はなんと、10万ポンド(約1,300万円)である。ウイスキーの価格で、6桁の数字が並ぶ(英ポンドで)のは過去例がない。なお、トリニタスとはラテン語で三位一体を意味する言葉だが、限定3本であることがその名の由来だとか。
ホワイト&マッカイ社のマスターブレンダー、リチャード・パターソン氏のテイスティングノートは以下の通りだ。
最初に広がる香りは大変複雑。甘みの強いレーズン、芳醇なコロンビアコーヒー、砕かれたクルミ、ビターオレンジ等の蠱惑的なアロマに魅了される。さらにグレープフルーツ、白檀、ホワイトムスク、そしてインドネシア産のパチョリが加わり、馥郁としたアロマが完成する。
隠れているすべてのフレーバーを引き出すため、口に含んだウイスキーは慈しむように時間をかけて味わいたい。甘いスルタナレーズン、イチジク、カラメルがトッピングされたセビリアオレンジ(ダイダイ)、リンゴ、マンゴー、そしてデーツが舌の上に広がる。すぐさまデュルセ・ムスカテルワイン、マジパン、糖蜜のトフィ、柔らかいリコリス(甘草)、そしてローストコーヒーが、いつまでも続く波のように追いかけてくる。最後にトリュフの柔らかな感触やクルミ、マスコバドシュガー(黒砂糖)が現れ、深く記憶に残るファンファーレのように完璧なフィニッシュを迎える。
ウイスキーファン(Whiskyfun)のセルジュ・ヴァレンティン氏がトリニタスについて記事を書いているが、半ばやけくそ気味のナンセンスな内容で笑った。以下にその記事の一部を引用しておくので、ご興味があればどうぞ一読を。
すでに諸君の耳にも届いていると思うが、ダルモアのナイスな皆さんと、愛すべき我らがトップリーダー、リチャード・パターソンが、ダルモアの新商品「トリニタス」を発売した。3本限定で、しかもすでに2本は、それぞれ10万ポンドで買い取られたとか。ボトルには「64」という数字が記されているが、これは64年熟成であることを示している。そう、これはいわゆる“アフリカの貧困国救済チャリティボトル”といった類のシロモノで、我々のような一般消費者のために出されたウイスキーではないのだ。だが、このウイスキーのレプリカを造ることは可能だ。どうやって? 簡単さ。パターソンが書いた詳細なテイスティングノートは、すでに頭に入ってる。
種無しカリフォルニアレーズン
コロンビアコーヒー クルミ ビターオレンジマーマレード グレープフルーツ 紫檀パウダー ホワイトムスクのアロマオイル パチョリオイル スルタナレーズン イチジク セビリアオレンジスプレッド リンゴ マンゴー デーツ モスカテルワイン マジパン トフィ リコリスキャンディ エスプレッソローストコーヒー ブラックサマートリュフ マスコバドシュガー グレーンスピリット 電動ミキサー コーヒーペーパーフィルター |
£1.00 @テスコ
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OK、買い付け完了! さて合計はいくらだ? 60.13ポンドぽっきり! (トリュフがちょっと高かったな。電動ミキサーは、もし奥さんか母親が持っていたら借りればいいよね。あと、ガレージセールに行けば安手の中古クリスタルデキャンターがみつかるかも?)その差額は99,939.87ポンド。その浮いたお金で、いったい何が買えるか想像してごらんよ!
追伸 その1
もしこれを飲んだら、一両日中は酒が飲めなくなる可能性あり。追伸 その2
もし諸君がポルシェに興味がなかったり、何を買うのも馬鹿らしいと思うのであれば、“国境なき医師団”に寄付するのがいいだろう。もしくはロンドンで開かれる豪華な「ウイスキーショー」に足を運び、最後の1本の本物のダルモア・トリニタスを買うのもよし。ただし、2人のウクライナ人ボディガードを雇うのを忘れないように。
最後の「2人のウクライナ人ボディガード」は真意がよくわからないが、ウォッカ好きで正直者のウクライナ人なら安心して護衛を任せられるといった意味なのか?
今月の8日、ブルイックラディ蒸留所がすでに売却され、アードベッグ蒸留所が現在売りに出されているという噂が流れた。結局はデマだったということで話は落ち着いたのだが、ツイッターやフェースブックなどではモルトファンらの驚きや疑問の声で一時騒然となった。
噂の発信元は、オランダの「ウイスキーフォーラム」という名のウェブサイト。オランダのウイスキー専門家であり作家としても知られるハンス・オフリンガ氏の「スコットランド発、驚愕のアイラウイスキーニュース」と題された記事の投稿が発端だった。
ブルイックラディのマネージングディレクターのマーク・レイニア氏や、アードベッグの関係者らが「噂は事実ではない」との否定コメントを相次いで発表し、とりあえず騒ぎは収束した。お騒がせの張本人オフリンガ氏も、情報が間違いであったことを認める記事をフォーラムに載せている。
噂がまことしやかに囁かれたのは、オフリンガ氏が「信頼できる筋の情報によれば」と書き添えたことも大きいのだろう。またアードベッグについていえば、ディアジオ社がLVMH社の株の35%を保有しているという背景も、噂の信憑性を高めていたのかもしれない。ともあれ、ウイスキー専門家という立場でありながら、オフリンガ氏の行動はあまりに軽率だったとしかいいようがない。
ブルイックラディ蒸留所のジム・マッキューワン氏が進めていたポート・シャーロット蒸留所の創業計画が頓挫したという。その理由だが、この新蒸留所のウリにするはずだったローモンドスティルが原因らしい。このスティルには、その異様な外観から「醜いベティ (Ugly Betty)」なんていうニックネームがつけられ、トップの部分にはイラスト付きのプレートまで取りつけられている。
ローモンドスティルは、20世紀半ばにハイラム・ウォーカー社が開発した蒸留器。蒸溜釜のネックの部分は円筒形になっており、内部には蒸気の還流率を調整するために角度を変更できる棚が、3段設けられていた。またスワンネックとコンデンサーをつなぐラインアームも、角度の変更ができるという優れもの。
ローモンドスティルは1959年にインヴァリーヴン蒸留所(1938-1991)に試験的に導入され、通常のポットスティルと並べて設置された。ローモンドスティルで造られたウイスキーは「ローモンド」と呼ばれたが、結局一度も発売されることなく、1970年代後半には操業が止められてしまった。ローモンドは正に幻のシングルモルトなのだ。
ブルイックラディが導入したのは、このインヴァリーヴンの中古のローモンドスティルだ。しかしシミュレーションの結果、このローモンドスティルではモルトの生産は厳しいという結論を出したのだという。
そこでブルイックラディは、何とジンを造るという奇策に打って出た。今月の3日から、すでに生産を開始しているという。当ブログの4月5日付けの記事で、「ブルイックラディ蒸留所がジンを造るかも」といったエイプリルフール記事を紹介したが、それが現実となった形だ。伝説のローモンドスティルを鳴り物入りで導入したブルイックラディ蒸留所だっただけに、「結局使えませんでした。」では格好がつかなかったのは確かだろう。
ジンの名前はまだ公けにはなっておらず、コリアンダーや杜松(ねず)の実といった一般的なものを始め、30種類もの植物を使って香り付けがされていることのみが伝わってきている。うち21種類は、アンゼリカやヤチヤナギ、セイヨウカワラマツバ、メース、ホウキ花などのアイラ島産の植物だという。
ローモンドスティルで造られるポート・シャーロットが飲めなくなったのは、個人的には極めて残念だ。しかしこの蒸留所の創業計画は、何らかの形でぜひ復活させて欲しいものだ。
ローランド地方のダンフリースシャーに、アナンデールという蒸留所がかつてあった。1920年に閉鎖された、いわゆる失われた蒸留所だ。蒸留設備は閉鎖後間もなく撤去されたが、建物はほぼ完全な形で残されている。そのアナンデール蒸留所が、ほぼ90年ぶりに復活しようとしている。来年の夏の終わり頃には、操業を開始する予定だという。
アナンデールを甦らせたのは、実業家で大学教授でもあるデイヴィッド・トムソン氏だ。2007年に蒸留所を買い取り、同年に夫人のテレサ・チャーチさんとともにアナンデール・ディスティラリー社を創設した。蒸留所再建は英政府からも奨励され、補助金が出たという。
旧アナンデール蒸留所は、農夫のジョージ・ドナルドによって1830年に創業された。仕込水は、街に引かれているものと同じミドルビー川からの水を使用し、冷却や動力用にはガリーランズ川から引いた水を使った。1887年、老朽化した設備や建物が改築される。動力は水車に代わって蒸気タービンが設置され、煙突はブロック製の大きなものに置換された。1920年、当時のオーナーだったジョン・ウォーカー&サンズ社が閉鎖を決定。1924年以降、敷地はロビンソン家によって農場として使用されてきた。
オリジナルのアナンデールの蒸留設備に関する記録は、何も残されていないという。すなわちアナンデール復活は、新生アナンデールの誕生だということもできる。これについては、2008年1月14日付けの The Scotch Blog に、興味深いインタビュー記事が載っていた。ブログ筆者のケヴィン・アースキン氏は、「かつてのアナンデール・ウイスキーの味を知っていたり、あるいはウイスキーのサンプルを持っている人物が、もしいたらどうしますか?」と尋ねている。それに対しトムソン氏は、「もしいたとしても、恐らく名乗り出てはくれないでしょう。そもそもアナンデールのウイスキーは、そのほとんどがブレンデッドのジョニーウォーカーの原酒として使われていたはずなので、ボトリングされたシングルモルトは少なかったのではないでしょうか。それにアナンデールのシングルモルトは、実はたいして美味しくなかった、そんな気が私はするのです。」と答えている。
「実はたいして美味しくなかった」というトムソン氏の考えは、まるでイソップ童話の「狐と葡萄」のようだが説得力はある。もし本音だとすれば、オリジナルにこだわる動機は、彼にとってはまったくないわけだ。ともあれ、蒸留所の数が少ないローランドで、新しいウイスキーが誕生するのは喜ばしいことである。早ければ2014年には、アナンデールのシングルモルトが飲めるかもしれない。