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スプリングバンク蒸留所とグレンガイル蒸留所の操業を最長2年間停止するという記事を7月2日に書いたが、来年の前半には操業を再開するらしい。
停止の期間が短縮されるという話は日本の代理店を通じて以前から耳に入っていたが、今月の21日、生産責任者のフランク・マクハーディ氏からの正式な通知が関係者に届いたという。以下はその内容だ。
“私たちがスプリングバンク蒸留所とグレンガイル蒸留所の操業停止という難しい判断をくだしてから、約半年が経とうとしています。電気、オイル、樽、そして大麦等の価格高騰が、操業を一時停止せざるを得なかった理由でした。また当時はスティルハウスの屋根も交換が必要でしたが、その修理はすでに終わっています。ウェアハウスは樽でほぼいっぱいだったのですが、世界中の需要に応えるためにボトリングを続け、今はウェアハウスのスぺースに余裕ができています。私たちは半年前、「原料市場の動向はずっと見守り続けていく。」と申しました。そして今、両蒸留所の操業を2009年の前半から再開することを表明します。
公共料金の価格は最近劇的に下がりました。操業を再開するなら、この機を逃す手はありません。最近ひとりのウイスキーライターが、J&A・ミッチェル社を『炭鉱のカナリア』に例える記事を書きました。ご存じのように、炭鉱夫が坑内で有毒ガスを感知するセンサーとして使用していたカナリアです。私たちは充分早い時期に警告の信号を感知し、ブランドと会社を守るために賢明に行動したと考えています。創業以来180年間蒸留を続けてきた私たちの蒸留所は、ウイスキー産業の中で起きる状況の変化にどう対処すればいいのかよくわかっているのです。
今年私たちは、地元農家のロバート・ミラーさんに25エーカーのオプティック種大麦の栽培を依頼しました。収穫した50トンもの大麦は現在大麦収納用ロフトに置かれ、休眠期間が終わって発芽の準備が整うのを待っているところです。ディスティラリー・マネージャーのスチュアート・ロバートソンは彼の弁当箱だと勘違いされてもおかしくないような、小さなプラスチックの食器でできた『ミニスティープ』で大麦の浸麦を毎週行なっています。大麦にひとたび『目覚め』が起こり発芽できる状態になったら、私たちはモルティングに着手します。すでに麦芽保管ボックスに収納されているその麦芽の詰まった地元産大麦は、とても喜ばしいことに、私たちの両蒸留所で最大で来年半年間のアルコール生産を約束するものなのです。
F. McH.”
“ひとりのウイスキーライター”とは、「モルトアドヴォケート」のジョン・ハンセル氏のことだ。同誌の最新号にスプリングバンクを炭鉱のカナリアに例えた記事を書いている。
フランク・マクハーディ氏は、オフィシャルサイトの中でもこの件に関する手記を載せているので、その訳文も載せておくことにする。
“私たちが操業の中止を決定したときに多くの方々からコメントをいただいたことは、きっとあなたも覚えていらっしゃるでしょう。「炭鉱のカナリア」と比喩されたばかりでなく、経験が浅く浅慮な一部の同業者には仕事を投げ出したおかしな会社だと、恐らく思われていました。
しかし変わった(ODD)会社だと思われていた正にその事実が、私たちにあるアイディアを与えてくれたのです。『ODDという言葉が、何かのスローガンの頭文字にならないだろうか・・・?』
そこで私たちはいくつか考えてみました。ピートは『Oldest Distilling Dynasty (最古の一族経営蒸留所)』はどうだと言ってます。私は、蒸留業者がしばしば祈る‘今日も我々に一杯が賜れんことを’という言葉から、『One Daily Dram』を思いつきました。
皆さんからもスローガンを募集したいと思います。そして2009年1月31日に、このコンペティションの優勝者を発表し表彰する予定です。優勝者には、彼の作ったスローガンが印刷されたラベルのスプリングバンクを1本差し上げます。
また、来年に東京で開かれるウィスキーマガジン・ライヴのセールススタッフのために、スローガンがプリントされたTシャツも作ろうと考えています。
どうかあなたの作ったスローガンをinfo@springbankwhisky.comまで送ってください。私たちのブログでは、1月末の発表に先がけて最優秀作品の発表を行なう予定です。”
「経験が浅く浅慮な一部の同業者」というのは、恐らくブルイックラディのマーク・レイニア氏のことだと思う。彼の「おかしな会社だ」というコメントに対してユーモアで切り返した形だが、何となく痛々しく感じてしまうのは私だけだろうか? ともあれ、私も考えてみようかな。
スコットランドのちょうどエジンバラとグラスゴーの中間に、ファルカークというマーケットタウンがある。モルトファンにはローズバンク蒸留所がある町としても知られるが、今年の4月24日付けのファルカーク・ヘラルドという地方紙にローズバンク・ファンには朗報となる記事が載った。記事の内容は、ファルカーク・ディスティラリー・カンパニーという会社が、ローズバンクの後を継ぐ新しい蒸留所の創設に向けて動き出しているといったもの。ローズバンクはローランドモルトの中でも随一の人気を誇るシングルモルトだ。1993年にディアジオ社によって閉鎖され、すでに15年もの年月が流れている。
その後新蒸留所に関するニュースはとんと流れてこなかったのだが、9月13日付けのサンデー・ヘラルド紙に久しぶりに関連記事が載った。それによると計画は進められてはいるのだが、大方の予想通り、新蒸留所に「ローズバンク」の名を譲る気がないことをディアジオ社が明らかにしたらしい。ローズバンク蒸留所は現在売りに出されているので、それを丸ごと買い取れば「ローズバンク」の名をどのように使おうがもちろん構わないわけだが、ファルカーク・ディスティラリー社は資金的にそれができなかったのだという。
そもそもローズバンク蒸留所が閉鎖された理由のひとつは、敷地を分断する道路が敷かれたことだと言われている。交通量が多いときには蒸留所の運営に支障をきたしたそうで、場所を移さない限りは操業再開の可能性は低そうだ。また現在、建物の一部はチェーン店のレストラン・パブとして利用されており、すでに見限られている感を一層強くする。
新蒸留所の建設予定地は、同じファルカーク市内のローリーズトン(Laurieston)という、現在の場所から直線距離で約7キロメートルほど離れた場所だという。ローリーズトンと言えば、かつて同名の蒸留所(Lauriston, 1821-1826, 転居先の地名とは少し綴りが違う)がファルカーク市内で操業していた。1826年に閉鎖されたが、同年に場所を移してキャメロン蒸留所(1826-1861)に操業が引き継がれている。そのキャメロン蒸留所が閉鎖した後に、建物と敷地はローズバンク蒸留所がすべて買収したという。ローリーズトンという名前とローズバンクとの間にはそんな因縁めいた話もあるのだが、もしかしたら偶然ではなくファルカーク・ディスティラリー社がこだわりを持って選んだ土地なのかもしれない。
ディアジオ社のスポークスマンは、「新蒸留所の設立に、私たちが何かのお役に立てればよいのですが・・・。ただ、ローズバンクの‘商標’を手放す気はありませんし、今後もその予定はありません。」とのコメント。まだまだ原酒を抱えているディアジオ社の、ブランド名だけを譲るというわけにはいかないという主張は、まあ当然と言えば当然だ。
ファルカーク・ディスティラリー社のフィオナ・スチュワート女史は、次のように言う。「2、3年前からローズバンク蒸留所が売りに出されていることは知っていましたが、私たちには買収することができなかったのです。そこで、蒸留所に捨て置かれている設備の一部をもらい受け、新しい蒸留所で利用しようと考えました。具体的に言いますと、ポット・スティルやマッシュ・タン等の設備です。」
また彼女は、「ローズバンクの名を使えないのであれば、私たちは『ファルカーク』を蒸留所の名前にしようと考えています。すなわちそのことは、あと数年の内にローズバンクという名の蒸留所が消えてしまうことを意味するのです。そうなれば、ファルカークの歴史の一部は失われることになるでしょう。」ともコメントしている。ローズバンクの名にこだわりたい気持ちはよく分かる。でも、こういうケースではあきらめるしかないかな。
ローズバンクの設備を再利用するとはいえ、キャラクターをどこまで蘇らせられるかについてはかなり微妙だと思う。ただ、ローランドの伝統的な3回蒸留を行なう蒸留所がひとつでも増えることには間違いなく意義があるし、個人的にも嬉しい。ちなみに新蒸留所オープンは、当初は2009年の4月を予定していたがどうやら2010年にずれ込みそうだとのこと。
メジャーなブランドほどフェイクがたくさん出回るというのは、ウイスキーも例外ではない。ブレンデッド・スコッチのジョニーウォーカーなどは、その代表格だと言えるだろう。贋物商品を大別すると、本物そっくりに作ったコピー商品と、スペルやデザインの一部を変えたパロディ商品とがある。コピー商品には強い悪意を感じるし、これはもう弁明の余地なくアウトだ。。
しかしパロディ商品の造り手たちには、私たちが受け取る悪意に見合うほどの罪悪感はないこともあるらしい。そうでなければ、堂々とウェブサイトで宣伝するようなまねはしないだろう。その図太い神経にはまったく恐れ入るし理解しかねるものがあるが、国民性や文化の違いによるものだと考える以外ないのだろうか。
パロディ商品にはそのセンスの良さ(悪さ?)に、思わずくすっとさせられるものもある。ここで紹介するジョニ赤のニセモノ、「Johnnie Worker Red Labial (ジョニーワーカー・レッドラビアル)」もそのひとつだ。
この贋ジョニ赤は、今年の5月末に書かれたジャロッド・D・カリー氏のブログ記事を発端に、その存在が広く知られるようになった。そのネーミングの面白さ故か、たくさんのブログでネタにされたようだ。なお同じメーカーのものかどうかは不明だが、ジョニーワーカーのブラックラビアルもちゃんと存在する。
さてこのレッドラビアル(連呼するのはやはり恥ずかしい・・・)だが、中身はなんとワインだという。メーカーのウェブサイトには、原料はブドウでアルコール度数は7%だと書かれてある。ちょっと興ざめであるが、同時にそのアバウトさには何故だか好感が持てる。
このメーカーの商品群は突っ込みどころ満載で、大いに楽しませてもらえる。極めつけは、何と言っても「ブドウから作ったレアモルトウイスキー」だろう。いや、確かにいろんな意味でレアであることは間違いない。独自のルールでウイスキーと呼ぶことも、百歩譲っていいとしよう。だが、「モルト」という表記はどう取り繕っても虚偽だろう。ただ、すべての商品の説明としてブドウが原料だと記されているので、もしかしたらこのサイトの誤記の可能性はある。実際はモルトウイスキーなのかも?
ウェブサイトの作りにはなかなか力が入っているが、商品画像が意味もなくGIF形式だったり部分的にレイアウトが崩れていたりと、これまた突っ込みがいがあり期待を裏切らない。
しかし、そんなことで笑ってばかりもいられない。言うまでもなくウイスキーは人の体に入るもの。怪しげなフェイクウイスキーなどは以ってのほか、言語道断だ。2003年には高い濃度のメチルアルコールが含まれているジョニ黒の贋物が見つかり、ニュースにもなった。また昨今では我が国でも食品偽装の事件が急増しており、贋物を見分ける知識と嗅覚が益々必要とされる時代になりつつあることをひしひしと感じる。
今年の2月7日に「ボウモア1964、黒・白・赤の3部作?」という記事を書いたが、第2弾のホワイト・ボウモアのレビューを「モルトアドヴォケート」のジョン・ハンセル氏がブログに書いているので紹介しようと思う。
ハンセル氏によれば、「バーボン・バレルで熟成されたボウモアの中では、過去15年に渡っていくつかリリースされたどの超熟(ultra-mature)ボウモアよりも美味しいですね。オークの風味は終始感じられるのですが、支配的ではありません。
またブラック・ボウモアとは、明らかに共通する特徴があります。特に強く感じられるのが果物のニュアンス、瑞々しい果実の風味です。桃、タンジェリン、マンゴー、熟したメロン、そしてパイナップル。ウイスキーそのものにも柔らかく穏やかな要素があり、パンケーキシロップやオレンジケーキ、ホワイトチョコレートの風味によってより甘さが増しています。
土っぽい煙とともに現れる重厚なオークの風味は、キャラクターに深みを与えつつ味わいのベースとなっています。煙とオークの香りはフィニッシュで長く後を引き、思わず言葉を無くすほどです。一言でいえば魅惑的なウイスキーなのですが、ブラック・ボウモアの素晴らしさにはちょっと及びません。」とのこと。
この43年物のボウモア、アウトターンは732本で発売は10月を予定しているらしい。さて気になるのはやはり価格だが、6,000米ドル(約3,000ポンド、660,000円)だという。昨年に出たブラック・ボウモアが2,000ポンドだったから、単純計算でおよそ1.5倍だ。この調子だと、来年にリリース予定のレッド・ボウモアの価格は予想するのも怖いが、5,000ポンド(約1,000,000円)くらいの値はつけられるかもしれない。
※上の画像は私の想像で作った合成写真です。本物ではありません。
LVMH社(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)がグレン・マレイ蒸留所を、ぺルノー・リカール社がグレンドロナック蒸留所を、それぞれ売却する意向であるというニュースが先日立て続けに流れた。いずれも現在はまだ買い手が決まったという発表はなされていないが、ある情報筋によればグレンドロナックの売買交渉はすでに最終段階であるという。
LVMH社はグレン・マレイ蒸留所を手放すのではないだろうかという憶測は、グレンモーレンジ社を買収した当時すでにまことしやかに囁かれていたのだが、果たしてその通りになった。一部の報道によれば、ホワイト&マッカイ社を傘下に置くユナイテッド・ブリュワリーズ・グループが、グレン・マレイに対し食指を動かしているとのことだったが、その後続報は聞こえてこない。
アライド時代に1995年から2002まで操業を停止していたグレンドロナックは、2005年にぺルノー・リカール社の手に渡った。多くのシーバス系蒸留所が買収されたのちに操業停止に追い込まれたことを思えば、グレンドロナックの扱われ方は不遇とまでは言えまい。しかし現在、常時製造されているのは「オリジナル12年」の一種類だけだ。ボディは軽くシェリーのニュアンスも希薄で、往年のグレンドロナックらしさは私には感じられない。この蒸留所は古くからのファンも多く、人気のあるシングルモルトとして名を馳せた時期もあったが、その面影は今やまったくない。
まあどこが買収したにせよ、これまでよりもいい状況で新たなスタートを切ってくれたらと切に思う。特にグレンドロナックには、かつてのような勢いを取り戻して欲しいと強く願わずにはいられない。