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ブルイックラディのマネージングディレクターであるマーク・レイニア氏によれば、英国地質研究所が出版する『Whisky on the Rocks』という本に、ブルイックラディのウイスキーは「南米の岩のエキスが含まれている」と書かれているらしい。どういうことかというと、ブルイックラディ蒸留所があるアイラ島南西部のリンズ地方の地質は、18億年前に形成されたもので南米大陸の地質と同じものだからだという。
かつて今より海面のレベルが高かった頃、アイラ島はインダール湾とグルーニアートの入り江が繋がっていたと考えられている。すなわち現在のアイラ島は、2つの島が陸続きになりできあがったというわけだ。グルーニアートを境に西と東では地質も異なっており、岩の間を流れる地下水の質もアイラ島の西側と東側では微妙に違っている。
ジュラ島を含む東側は、6~8億年前のカレドニアン造山運動によって形成された背斜(地層が褶曲して山形になっている部分)で、地質はダルラディアンと呼ばれる変成岩(いったんできた岩石が熱や圧力などの作用を受け、構成する鉱物の組み合わせ構造が変化したもの)。一方西側の陸地の形成時期は18億年前まで遡り、地質は角閃岩と堆積砂岩だ。角閃岩も東側のダルラディアンと同種の変成岩だが、堆積砂岩は学術的には変成岩とは区別され堆積岩というカテゴリーの砕屑岩に分類される。砕屑岩は火山由来以外の成分(砕屑物)が堆積したもので、明らかに変成岩とは組成が異なる。
また東側のダルラディアンと西側の角閃岩はどちらも変成岩だが、その歴史は3倍ほども違う。岩の間を流れる水の質が、まったく同じだとは思えない。隣接した場所でなぜそういう現象が起きるのかは、現在広く信じられているプレートテクトニクス(大陸移動説)で説明できる。
18億年前、地球には第3次ウル大陸(現在の南アフリカ、北インドなど)、ローレンシア大陸(東南極、北米、グリーランド、シベリア、スカンジナビア半島など。別名ニーナ大陸)、アトランティカ大陸(南米、中央・北西アフリカ)の3つの大陸が存在した。10億年前にこれらの3大陸は合体し、地球史上初めての単一の超大陸ロディニアを形成、6億年前にはバルティカ(ヨーロッパ)、ローレンシア(北米、グリーンランド、北スコットランドなど)、ゴンドワナ(アフリカ、南米、インド、南極、オーストラリア、アラビア半島、マダガスカル島など)の3大陸に再び分裂。そのときアイラ島の東側を含むスコットランド北部はローレンシア大陸に、ブルイックラディのある西側はゴンドワナ大陸に分断されたのだという。その後、ローレンシア大陸とゴンドワナ大陸は再び衝突し、カレドニアン造山運動が誘発され、東側のダルラディアン変成岩が形成された。
ブルイックラディ蒸留所の仕込み水は、詳しく明かされておらず「背後の丘にある貯水池の水」としか公表されていない。レイニア氏によれば低い丘の泥炭層の沼地から引く水だそうで、岩盤の影響は受けていないという。しかしボトリングの際に加水する水は、堆積砂岩と片麻岩の間を流れてくるダーティ・ボッティの湧水を利用している。すなわち加水タイプのブルイックラディには、南米と同じ18億年前の岩のエキスが含まれているといえるのだ。
ブルイックラディのマネージングディレクターであるマーク・レイニア氏が、「スコッチウイスキーの起源はヴァイキングかも?」といった興味深い記事をオフィシャルサイトに載せている。スコッチの蒸留技術はアイルランドの宣教師によって伝えられたというのが定説だが、ヴァイキング起源説はそれを覆す新説だ。
ヴァイキングが伝えたのかもしれないというその根拠だが、スコットランド在来種の大麦であるベア種はそもそもヴァイキングが持ち込んだもの、そして彼らは最初に蒸留アルコールが製造されたといわれる中東にまで進出していたという、その2点だ。
いわゆる海賊としての「ヴァイキング時代」は793年にイングランドのリンディスファーン修道院を襲撃したのを皮切りに、1066年にスタムフォード・ブリッジの戦いでイングランド軍に敗北するまでとするのが一般的。また最初に蒸留アルコールが製造されたのも8世紀から9世紀にかけてだといわれている(レイニア氏によれば、800年ごろにガーバーというアラブ人が、シリアで最初の蒸留酒を造ったという記録があるのだそうだ)。すなわちヴァイキングが、ベア種の大麦と蒸留技術を一緒にスコットランドに持ち込むことは可能だったということなのだ。
ウイスキーが歴史上はじめて文献に登場したのは、1405年のアイルランドだ。スコットランドでは1494年が最初で、スコットランド王室財務記録帳に、「王の命令により修道僧ジョン・コーに8ボルの麦芽を与え、アクアヴィテを造らしむ」と書かれている。しかし実際は、これより数百年前から麦芽の蒸留酒はあったというのが定説だ。この点でも、ヴァイキング起源説は矛盾しない。
あるいは、どちらの説も間違いではないという可能性もある。双方もしくは複数のルートから伝わったと考えるのが、むしろ自然ではないだろうか。もしかしたらヴァイキング起源説も、別に目新しい考え方ではないのかもしれない。キリスト教が生活の中心にある国々で、ヴァイキング説が遠ざけられ、アイルランド宣教師説だけが取り上げられるのは決して不思議なことではない。
今週の土曜日、3月26日(土)はアースアワー(Earth Hour)の日だ。アースアワーとは世界中の人々が、同じ日・同じ時刻に電気を消すなどのアクションを通じて、地球温暖化を止めたい!という思いを示す、国際的なイベントだ。それぞれの国の時刻で20:30から21:30までの1時間、電気製品や照明等のスイッチをオフにする。時差の関係から、南太平洋のチャタム諸島からスタートし、最後のサモアまで東から順に消灯が地球をぐるりと回ってくる。
このアースアワーは2007年3月、オーストラリアのシドニーで、 WWF(世界自然保護基金, World Wide Fund for Nature)の温暖化防止キャンペーンの一環として始まった。わが国でも昨年から取り組みが始まり、東京タワーや広島城で実施されている。昨年は、128の国や地域、4,616の都市や町からのべ13億人が参加したという。本家のオフィシャルサイトからでも参加表明は可能だが、WWFジャパンのサイトの方がわかりやすいだろう。個人での参加はもちろん可能だが、法人や自治体など団体でのエントリーも受け付けている。本家のサイトは英語表記だが、今回の東北地方太平洋沖地震の報道を受け「日本の皆さん、勇気を持って頑張って下さい」という日本語表記が、トップページに載せられている。
ウイスキーの蒸留所では、ディーンストンがアースアワーへの参加を表明している。ディーンストンはもともと、エコロジー志向の強い蒸留所として有名だ。電力を自給自足する唯一のスコットランドの蒸留所であるばかりでなく、化学肥料や農薬を使わないで栽培された有機栽培大麦のみを原料とした、いわゆるオーガニックウイスキーを造ったりしている。近くを流れるティス川の水は、仕込み水としてばかりでなく発電タービンの回転にも利用しているのだ。発電量は蒸留所が使うものしては充分すぎるほどの量で、余った電気は公共の送電線網に流して電力会社に買い取ってもらってるという。
WWFスコットランドの総責任者、リチャード・ディクソン博士はいう。「地球の温暖化対策は私たちの社会が直面している最も重要な課題の一つであり、アースアワーへの参加は温暖化解消へ取り組んでいることへの証しとなります。我が祖国スコットランドは、我らが愛し誇りとするスコッチウイスキーの支えも得て、アースアワーへのエントリーを表明します。」
今回の地震により東北や関東地方で深刻な電力不足が予想されることから、寒がりな私もなるべく暖房を控えるようにしている。しかし今は未曾有の国難であり、今こそ無駄は徹底的に省くべきときだ。節電のさらなる啓蒙のために、今週末のアースアワーの実施は実にいいタイミングだろう。
スコットランドの東岸に、緩やかなS字を描くように切れ込む込むテイ湾。その北岸に、スコットランド第4の都市ダンディがある。この町の歴史上で最も大きな火災だといわれているのが、1906年の7月19日に起こった、ウイスキーブレンド会社のジェームズ・ワトソン社保税倉庫の大火災だ。
倉庫があったのは、キャンドルレーン通りがシーゲート通りに突き当たるT字路の東側。出火時刻は18時20分頃と推定されており、まる2日燃え続けたという。炎は近隣の建物にまで延焼し、一帯は見るも無残な姿に変わりはてた。
貯蔵されていた約100万ガロン(455万リットル)のウイスキーとラムは全焼し、燃えさかるウイスキーはまるで川のようにダンディ通りを流れていったという。建物ばかりでなく大量のウイスキーまでもが失われてしまったため、この火事は「大人たちが泣いた日」などと比喩されることもある。なお出火原因は、突き止められていない。
この火災に関する記録は、これまではジェームズ・ワトソン社と深く関わる資料は見つかっていなかったらしい。しかしこの度、ワトソン社の従業員が書いたと思われる絵葉書を、歴史家のノーマン・ワトソン氏が発見したという。カナダのスカーバラに住む人物に宛てたこの絵葉書には、建物内部の惨状がリアルに描写されている。以下はその全文だ。
「この絵葉書に写っているのは、キャンドルレーン通りの一番端にある建物です。火事のとき、私たちはちょうどその場所にいました。壁や柱が次々に崩れ落ちていき・・・、それはもう本当にすさまじい光景でした。手は火傷とすすで真っ黒け、脚はむくんでパンパンです。樽に寝かせていた酒は、どんどん流れ出していきました。私たちは外に出て、キャンドルレーン通り沿いにあるC・R・バクスター(イングランドのランカシャー州に本拠を置くビールメーカー)の店の屋根に、消火ホースを抱えてのぼりました。そして夜の10時から翌朝の5時まで、ずっと放水を続けたのです。そんな騒ぎの中で、会社の仲間たちは散り散りなってしまいました。その週末は、私たちは結局休みなしになってしまいましたよ。」
消火作業が手間取った原因だが、ジェームズ・ワトソン社の終業時刻が17時で、出火したころにはほとんどの従業員が帰宅したあとだったためでもあるという。同社の関係者の目撃談が、ほとんど残されていなかったのも同じ理由によるものだろう。
なおジェームズ・ワトソン社は、今でも存続している。1815年に設立され、1923年にDCLに買収されるまでは4つの蒸留所、バルメナック(1824-)、グレン・オード(1838-)、パークモア(1894-1988)、そしてプルトニー(1826)のオーナーだった。また19世紀末から20世紀の初頭にかけては、クラガンモア蒸留所の原酒をすべて買い取っていたという。現在はディアジオ社の系列会社だ。
ウイスキーの語源はゲール語のウシュク・べ一ハ(Uisge Beatha)だといわれている。それは“生命の水”を意味し、ラテン語のアクアヴィテ(Aquavitae)と同じだ。フランスではブランデー類を総称してオー・ド・ヴィー(Eau de Vie)と呼ぶが、これも同じ語源である。オー・ド・ヴィーはアルザス地方のものがつとに有名だが、アルザス産オー・ド・ヴィーと同じ方法でウイスキーを熟成させるという面白い試みを、ウイスキーファン(Whiskyfun)のセルジュ・ヴァレンティン氏が2~3年前から行っているらしい。
ポイントは2つあるが、その1つが熟成に樽を使わないこと。そうすることで、木材からの好ましくない影響をシャットアウトするのだそうだ。この実験ではデミジョン(ワイン用の大型のガラス瓶)が使われている。栓にはシリコン製のもの使用し、容器との間に布をはさんでウイスキーが呼吸できるようにしてあるという(そこが重要なポイントだと彼は強調している)。
もう1つは温度。アルザスの気候は半大陸性気候で、冬は寒さが厳しく、逆に夏は非常に高温になる。その気候に似せた環境を作り、ウイスキーにバーチャル体験させてやるわけだ。実際には屋根裏においているとのことで、夏は40℃、冬はマイナス20度くらいにまでなるらしい。上の画像は1月に撮影したものだそうで、容器の表面は氷に覆われている。
サンプルとして選んだウイスキーは、アルコール度数が64%のヘヴィーピーテッド・アイラモルト3年物だという。将来比較できるように、実験前のものは少し取り分けてあるそうだ。
果たして温度差だけでウイスキーが熟成するのかどうか、はなはだ疑問ではあるが面白い試みだとは思う。