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今年のエイプリルフールも終わったが、目についたフーリッシュなウイスキーニュースをいくつか紹介しよう。
この記事で面白かった箇所は二つある。一つはクロックセリー1924年のアルコール度数が38%しかなかった(スコッチウイスキーの法律で40%以上と定められている)ため、ディアジオ社はSWA(スコッチウイスキー協会)に掛け合い、40%に満たないという理由でスコッチと呼べないシングルモルトを「準シングルモルトスコッチウイスキー (Nearly Single Malt Scotch Whisky)」と呼び、新たな規定を作ることで合意を得たというもの。ただ、SWAのお墨付きがもらえても、まだ法案も通っていないのにという点ではちょっとリアリティに欠けるのだが。
もうひとつは、これらのウイスキーが超高額であるため、販売ではなくレンタルするという新商法(笑)。もちろん飲むことはできないが、短い期間だけでもウルトラレアなモルトのオーナー気分を味わえるというものだ。250,000ポンド(約3,600万円)の預かり保証金を支払うことで、6か月間だけ手元に置くことができる。保証金が買い取り額よりも高いのだから、ついつい飲んでしまったなんていう不埒な輩は現れないだろうということだ。ちなみに販売価格だが、パークモアが49,999ポンド(約719万円)、クロックセリーが120,000ポンド(約1,725万円)、モルト・ミルはなんと135,000ポンド(約1,940万円)だそうな。
ちなみにロッホ・ドゥ1929年だが、これだけは架空の蒸留所だ。このへんがウィットに富んでいていい。ロッホ・ドゥは、マノックモア蒸留所が造る真っ黒な炭漬けウイスキーのブランド名だ。ちょっと私の嗜好には合わないウイスキーなのだが、ヴァレンティン氏も同様のようである。
面白い動画をYOUTUBEで見つけたので紹介しよう。
登場しているのは、ボウモアのマスターブレンダーであるイアン・マッカラム氏だ。蒸留所のマークが印刷されたテイスティンググラスで、真剣にテイスティングしている。さてどんなボウモアをテイスティングしているのかと思いきや・・・。最後のげっぷが、うまく落ちを作っている。
IRN-BRUは日本ではあまり馴染みがないが、英国生まれの炭酸清涼飲料でアイアン・ブリュと読む。スコットランドでは、知らない人はいないといわれるほど普及している。マッカラム氏がノージングしながら、「オレンジの香りがバブルガムのようになっていく。」と言っているがまさにそんな風味だ。
スコットランド人の探検家、アーネスト・シャックルトン(1874-1922)が南極探検の際に持ち込んだウイスキーが、いまだに南極大陸に残されている。これまでにも発見され回収された記録はあるが、このたびまた新たな発掘作業が行われたという。
彼らが拠点として使用した小屋の床下から、2箱ほどのウイスキー見つかったのは2006年1月のこと。昨年末には発掘が計画され、先日これらのウイスキーが掘り起こされ回収されたと、今月6日付けでAFP通信が伝えた。この小屋はロス島のロイズ岬にあり、シャクルトン卿率いる探検隊が1907年から09年にかけての探検で使ったという。すなわちこのウイスキーボトルは、約1世紀もの間氷の中に埋もれていたことになる。当初2箱だろうと思われていたウイスキーだが、掘り起こしてみたところなんと5箱あったという。そのうちの2箱はウイスキーではなくブランデーだったらしい。あたりはウイスキーの香りが漂い、何本かはボトルが破損している可能性が高いという。しかし液体が揺れる感触もあったそうで無事なボトルもありそうだというが、開けてみるまではわからない。
アーネスト・シャックルトンといえば、南極大陸を横断中に遭難したにもかかわらず、27人の隊員たち全員を奇跡的に生還させた人物としても有名だ。しかしこのときの探検は1914年から17年にかけて行われており、ウイスキーの見つかったロイズ岬の小屋はその時に使ったものではない。残念ながら、伝説の物語との直接の繋がりはないようだ。
さて見つかったウイスキーだが、ブレンデッドスコッチのマッキンレーズである。南極探検隊のオフィシャルスコッチとして、アーネスト・シャックルトンがマッキンレーズを選んだという話はつとに有名で、同ブランドの宣伝に大いに貢献した。もともとマッキンレーズはチャールズ・マッキンレーが1815年に創業したマッキンレー社によって造られていたブレンデッドウイスキーだが、現在はインドUBグループ系列のホワイト&マッカイ社がこのブランドのライセンスを持っている。
ホワイト&マッカイ社のマスターブレンダー、リチャード・パターソン氏は、この発見について「これはウイスキーファンへの、天国からの贈り物ではないでしょうか。」とコメントしている。そして、「もし中身を問題なく取り出せ分析できたなら、100年前のマッキンレーズを復元できる可能性があります。実は当時のレシピはすでに失われてしまい、もう存在しないのです。これまで閉ざされていた歴史の扉を、開けることができるかもしれません。」とも述べている。
マッキンレーズは、かつてはよく飲んだブレンデッドだ。最近のは飲んでいないのでわからないが、とても美味しいスコッチだという印象がある。特に特級表示の頃のレガシー12年は格別だった。100年前のマッキンレーズがどんな味なのかは想像もつかないが、ぜひとも復元して欲しいものだ。
1月25日付けの英タイムズ紙に、タイワニーズウイスキーの興味深い記事が載った。4名のウイスキー愛好家によって5種類ほどの若いウイスキーのブラインドテイスティングが行われたが、その中で台湾のカヴァランウイスキーが最高点を獲得したという。その中にはイングリッシュウイスキーのセントジョージズ・チャプター3(なかなか旨い!)や、アイラ島のビッグネームのシングルモルトが含まれていたというから、ますます興味は深まる。
先月の24日にタイムズ紙の記者の主催で、エディンバラのリースにある歴史あるレストラン・ヴィントナーズルーム(Vintners Rooms)でテイスティング会が開かれ、4名のウイスキー愛好家が招かれた。そのうちの一人は作家でウイスキー専門家でもあるチャールズ・マクリーン氏だ。陽気な雰囲気の中テイスティングは終了し、得点の集計結果が発表された。だが最高得点がタイワニーズウイスキーのカヴァラン(Kavalan)だと知らされた途端、テイスターたちは目を見張り会場の雰囲気は一変したらしい。マクリーン氏は「おお、神よ・・・。」とつぶやき、別のテイスターは「今日は4月1日ですか?」と尋ねたという。その場にいたテイスター以外の人々からも、「信じられない・・・」「素晴らしい!」「ああ、まさか・・・」といったつぶやきが漏れていたそうだ。
チャールズ・マクリーン氏は、30年以上もウイスキーと関わってきたベテランだ。ちなみに他のテイスターたちは、ジンの専門家ジェラルディーン・コーツ氏、酒類販売業を営むズバイル・モハメド氏、そしてシナリオ作家のポール・レヴァティ氏といった面々。レヴァティ氏は、昨年カンヌ映画祭で話題になったケン・ローチ監督の「Looking for Eric」でも脚本を書いた人物だ。
カヴァランウイスキーは、台湾東北部のイーラン(宜蘭)にあるキング・カー蒸留所で造られている。ここは2008年に建造されたばかりの蒸留所で、台湾で操業している唯一の蒸留所でもある。カヴァランウイスキーは現在4種類が製造販売されているが、そのうちの3種類はシングルモルトという本格的な蒸留所だ。輸入ウイスキーを製品に一切使用していないかどうかは不明だが、キング・カー蒸留所で造られたウイスキーに限っていえば、熟成年数は最長でも2年ということになる。今回のテイスティングに出されたカヴァランも2年物だそうで、実はスコッチの定義に当てはめるとまだスピリッツであり、ウイスキーとは呼べない。
さて気になる2位以下のウイスキーだが、全順位を以下に列挙する。なお点数は40点が満点だとのこと。
1位 (27.5点) : カヴァラン (タイワニーズ, 2年物)
2位 (22.0点) : ラングス・プレミアムブレンド (スコッチ, 3年物)
3位 (20.0点) : キングロバート (スコッチ)
4位 (15.5点) : セントジョージズ・チャプター3 (イングリッシュ, 3年物)
5位 ( 4.5点) : ブルイックラディX4 +3 (シングルモルトスコッチ, 3年物)
やはり注目すべき点は、2年熟成のカヴァランが3年熟成の“ウイスキー”を抑えてのトップだということだろう。台湾の気温はスペイサイド地方より、年間を通して20℃近く高いのだという。すなわちそれだけ熟成が早く進む訳で、若いウイスキーのうちは、少しでも熟成感のあるほうが美味しく感じるということなのかもしれない。ただ、熟成の速度が速いことと、いいウイスキーが出来上がることとは本来なら別の話だ。
あとは目を引くのは、やはりというべきかブルイックラディX4の“4.5点”だろうか。マクリーン氏はブルイックラディX4について、「食用油でもディーゼル油でもなく、機械用油の風味だ。」という辛辣なテイスティングノートを残したらしい。ブルイックラディX4は、私はTHE Whisky Worldで72点をつけたが、熟成させていないニュースピリッツ・バージョンだったので多少評価は甘かったかもしれない。
このテイスティング会だが、2006年からイングランドで本格的にウイスキー造りが始まったことを受け、改めてスコッチウイスキーの素晴らしさを見直そうという意図のもと、バーンズナイトに合わせて開催されたものだという。こういう皮肉な結果に終わったことはスコッチファンとしては複雑な心境だが、日本も含めたアジアンウイスキーの輝かしい未来を想像することもまた楽しい。
4年前に書いた「R・ソーン&サンズの真贋問題」という記事の中で、ウイスキーに含まれている放射性炭素の濃度を測定することで、年代鑑定をすることができるといったことを書いた。いわゆる炭素14年代測定法と呼ばれるやつだが、有機体の年代測定では一般的に広く利用されている方法だ。ウイスキーの原料である大麦ももちろん有機体だから、この測定法が有効なわけである。
その方面の関連記事が、今年になってからいくつかのニュースサイトに掲載された。先日、英テレグラフ紙にも載ったので、要約して紹介しようと思う。
英オクスフォード大学のオクスフォード放射性炭素加速装置(ORAU)の研究者らは、1950年代の核爆弾実験で作られた放射性粒子の量を測定することにより、ウイスキーの年代を正確に割り出せることを発見した。収穫される前の大麦が吸収した微量の放射性炭素の濃度を測定すれば、年代の特定が可能なのだという。
研究所副所長であるトム・ハイアム博士は、次のようにコメントしている。「もし20世紀の半ば以降に造られたフェイク・ウイスキーならば、その特質から簡単に判別することができます。更に古いウイスキーでもある程度の年代の特定は可能で、多くの場合は何世紀につくられたウイスキーであるかを割り出すことができるのです。私たちがこれまでに測定したウイスキーの大半は1800年代に造られたものでしたが、最も古いものでは1700年代のウイスキーもありました。
この技術は放射性炭素年代測定法といって、最近では古代の化石の年代を特定するために考古学者らによって頻繁に利用されています。すべての生物は呼吸をし、大気中にわずかに存在する炭素14を体内に取り込んでいます。しかし死んでしまうと呼吸は止まり、その時点から体内の炭素14は減少していくのです。すなわち、その濃度を測定すれば生命活動を停止した時期が特定できるというわけです。
これまでに行われたテストのほとんどは、スコッチ・ウイスキー研究所から依頼された真贋鑑定でした。年代物のウイスキーから採取されたサンプルは小瓶に詰められてオクスフォードの実験室に送られます。そして、サンプルの液体は測定精度を上げるために燃やされ、発生したガスに荷電粒子が照射されます。
近年、クリスティーズのオークションに20,000ドルの値がつくとも予想された1856年ヴィンテージのマッカラン・レア・リザーブが出品されたのですが、オクスフォード大学の検査で中身は1950年に造られたウイスキーであることが判明し、出品が取りやめになるというケースもありました。」
上記のオークションとは、2007年12月8日にニューヨークのロックフェラープラザで開かれたワインオークションのこと。少量だが、ワイン以外の酒も出品されている。調べてみると、確かに件のマッカランは出品されていない。
このテクノロジーの直接的な恩恵に与れるのは、一部のコレクターたちだけなのかも知れない。しかし間接的には、フェイク・ウイスキーの横行に対して間違いなく抑止力になるとも思う。限定的とはいえ、真贋鑑定の切り札があるというのは何とも心強い限りだ。