10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今月の3日に、イングランド南部にあるリュースという町(イースト・サセックス州の州都でもある)でオークションが開かれ、地元ダイバーのボブ・パート氏が興味深いウイスキーを出品した。そのウイスキーとは、1941年から半世紀以上も沈没船とともに海の底で眠っていたスコッチのバランタイン。1970年にパート氏は、英デイリー・ミラー紙からの依頼を受け、ダメージを受けていない6本のウイスキーを回収したのだという。今回出品されたのは、そのうちの1本だとのこと。
その沈没船とは、1941年2月5日にニューヨークへ航行中だったSSポリティシャン号。スコットランド北西の大西洋上に浮かぶアウター・ヘブリディーズ諸島のエリスカー島北岸の沖で、砂州に乗り上げ沈没した。乗組員たちが避難し船がサルベージを待つ間に、地元の漁師が船に忍び込んで大量の密輸ウイスキーを発見。そして彼らはなんと、夜の闇に乗じてウイスキー等の積み荷を運びだしてしまったのだ。積まれていたウイスキーは240,000本とも260,000本とも言われ、そのうちの1割が彼らによって運び出されてしまったとのこと。略奪に加わった19人の島民はその後起訴され、1か月間投獄されたという。
その実話をもとにコンプトン・マッケンジーによって書かれた小説が、かの『ウイスキー・ガロア! (1947)』だ。この本はロングセラーとなり、今でも多くのスコットランド人に愛され続けているという。またこの物語は、小説が出版された翌々年に同名のタイトルで映画化もされた。映画はドタバタのコメディで、略奪の様子がユーモラスに描かれている。なおエキストラとして登場する島民たちだが、すべて実際の島民なのだそうな。
ただし、SSポリティシャン号のウイスキーがオークションに出されたのは今回が初めてではない。サウス・ウイスト島のアマチュアダイバーがサルベージした8本のウイスキーが、1987年のクリスティーズのオークションに出品され£4,000で落札されている。また10年ほど前には、空瓶だが何本かがオークションにかけられたこともあるという。
今回のバランタインの落札価格は2,200ポンド。見事落札したのはパリに住む18歳の青年だという。落札後、彼は次のようにコメントしている。「“ウイスキー・ガロア!”は、子供の頃に、楽しく読みました。今回オークションにそのウイスキーが出品されることを知り、入札しようと決めたのです。正直に言うと、ずいぶんと過小評価されているなとは感じました。このウイスキーは飲みたいです。でも飲まずにこのまま保存しておこうと思っています。」
出品したボブ・パート氏は、ウイスキーよりは赤ワインがお好きだとのこと。「今回の落札の結果には大変満足しています。このウイスキーを拾い上げてきた当時は、こんな高値で売れるとは思いもしませんでした。今頃は家族が、臨時収入を楽しみにしていることでしょう。このウイスキーの背景にある物語に多くの人々が興味をもってくれることは、とても嬉しく思います。中身はコルクを通して蒸発して2センチほど目減りしていますが、きっと飲めるはずです。」と、彼はコメントしている。
なお、かつてSSポリティシャン号からサルベージされたウイスキーが、実際に加えられたブレンデッドスコッチが1,400本限定で発売されたことがあった。その名もずばり『SSポリティシャン (SS Politician)』。近年ダンカン・テイラー社からも同名のウイスキーが出されているが、それとはもちろん別。しかし回収されたウイスキーは12本だったそうだから、目減り分も考慮すると単純計算で1本当たり5ミリリットル程度しか含まれていないことになる。まあそんなもんだろう。この場合大事なのは味ではなく、あくまでも気分だからね。
シングルモルトをベースにしたカクテルが、「ウイスキーファン(Whiskyfun)」で2つほど紹介されている。ミクソロジストのステファン・クライン氏が、ウェブサイトの管理人セルジュ・ヴァレンティン氏のために考案したカクテルだとのこと。そのうちのひとつが、レシピがクレージーであるばかりでなく二人のコメントも笑えるので紹介しようと思う。以下はそのレシピだ(分量はダブルサイズ)。
『セルジュ・スペシャル・ウイスキー・ファン』
●クラインリシュ14年(OB)・・・60ml
●ホワイトミントリキュール(GET 31とか)・・・10ml
●パイナップル&グァバジュース・・・30ml
●ライムジュース・・・30ml
●醤油・・・1/2ティースプーン
氷と以上の材料をシェーカーに入れ、20秒間シェイク。
グラスに注いだら、スライストマト1/2枚、スライスレモン1枚、
ピクルスとパールオニオンを1個ずつ加え、
新鮮なアサツキを一つまみ、粉末の生姜もしくは白胡椒を一つまみ、
アンゴスチュラビター2~3滴を最後にトッピングして出来上がり。
【クライン氏のコメント】
ちょっと変わった味を試してみたい方のためのカクテルです。口に含んだとたん広がる「とても風変りな風味」をもしクリアできたなら、このカクテルはとても異色な素晴らしい食前酒になります。オフィシャルの14年物の代わりに、他のクラインリシュを使うのもいいでしょう。ブローラで作るのもありです。またフルーツジュースも、いろいろなものを試してみてください。ニンジンやキュウリなど、あなたのお好きな生野菜を添えるのもいいですね。他にはペパローニ、タバスコ、ウスターソース、セロリソルト、パプリカ等々・・・。またトマト・ジュースのしぶきを加え「血のセルジュ・スペシャル」に変えてしまうのもいいでしょう。
【ヴァレンティン氏のコメント】
あはは、参ったなあ。まあできれば試してみますけど、リチャード・パターソン氏ならきっと「ブローラでこんなカクテルを作ったら、あなたを殺しに行きます。」なんて言いそうですね。ステファンは、たくさんのクレイジー・サマー・カクテルをこれからも続々と私のために考案してくれるそうですが、私はずっとこんな感じで唖然とさせられるのでしょう。
従来のカクテルの常識にとらわれないアイデアは、とてもユニークで斬新だとも言える。醤油を加えるというのもすごい。しかしカクテルというよりはむしろサラダ、もしくは料理だとも言えそうだ。試すにはかなりの勇気が必要だろう。なお「ブローラで作ったら殺す。」という意見には、私も賛同する(笑)。
7月14日付けのデイリー・レコード紙に、ディアジオ社がとある実験に取り組んでいるという記事が載った。ウイスキーの風味を変えずに、「天使の分け前」を節約するというのだが・・・なんと、ポリエチレン製のラップを樽に巻くのだという。(!) あまりにも単純で、ちょっと拍子抜けしそうだ。
しかしディアジオほどの大企業の取り組みである以上、それなりの成算も狙いもあるのだろう。実験の結果は「科学者たちを驚かせるものだった」そうで、ウイスキーの風味にも変化は見られなかったという。
しかし、この記事にはそれ以上の情報がまったく書かれていない。科学者たちがどの点にどう驚いたのか、もう少し詳しく知りたいものだ。
ディアジオ社のスポークスマンによれば、「今の段階では、この技術の有用性が証明されたことにはなりません。私たちはまだ研究を継続中です。」とのこと。検証には時間も掛かりそうだ。続報を待ちたい。
地球の温暖化にともない海面が上昇すれば、沿岸地域の蒸留所は水没してしまう可能性があるという記事を以前書いたが、気温の上昇については他にもウイスキー産業を脅かす要素があるのだという。地球温暖化がこのまま進めば、スコッチ産業は将来衰退する可能性が高いという記事が、6月5日付けのプレス・アンド・ジャーナル紙(スコットランド)に載った。今回提起された問題はかなり本質的なものであり、ウイスキーファンや業界関係者にとっては何とも気の滅入る話だ。
その筋の専門家によれば、このまま気温が上昇し続ければ、今後70年以内にスコットランドにはワイン造りに最適な環境が訪れるというのだ。すなわちそれは、ウイスキーの熟成には適さない環境に変わることを意味する。段階的に変化していくのであれば、70年とはいえ決して遠い将来ではないだろう。インペリアル・カレッジ・ロンドンのリチャード・セリー教授は、次のようにコメントしている。
「スコットランドでは2080年までに気温が2度上がると考えられており、それはまさにワインの生産に適した条件なのです。その温度は小麦や大麦には理想的とはいい難く、そうなるときっと私たちは皆アイスランド産のウイスキー飲むことになるでしょう。グレート・グレン渓谷やネス湖、そしてキャムシー・フェル山などが、ピノ・ノワール、シャルドネなどの品種を産出するカリフォルニアのナパヴァレーやシャンパーニュ地方と同じ土俵の上のライバルとなる日が、そのうちやってくるかもしれないのです。」
科学的、理論的にはそういうことになるのだろう。しかし現実問題として考えるなら、ウイスキーからワインへのシフト、これは生産者にとってはとてつもなく高いハードルだと思う。ちなみにセリー教授のこのコメントだが、あまりにのんきで能天気だ。生産者側の事情がまったく汲まれていないから、きっとそう感じてしまうのだろう。
またグレート・グレン渓谷に住む不動産管理人のひとりも、次のようにコメントしている。「ブドウを育てるのは簡単なことではありません。フランスでさえ、ぶどうにとって好ましくない夏を迎えたなら、もうよいワインは造れないのですから。英国南部のいくつかのブドウ畑では、確かにうまく栽培が行われているようです。でも北部に住む私たちにとって、それはとても遠い世界のことのように感じています。」
またスコッチウイスキー協会のデイヴィッド・ウィリアムソン氏は、「産業はその地域の自然環境に依存するものです。環境が与える影響を、私たちは広い視野で注意深く見守っています。そして何十年もの先を見越した上で、その産業が環境にうまく対処していけるように見極めている最中です。」とのコメントを出している。やはり、環境の変化とはケンカをしても無駄だということなのだろう。
来月北海道の洞爺湖で開かれる主要8か国(G8)首脳会議では、地球温暖化を始めとした環境問題への対策が主要な議題のひとつだという。大きな成果を期待したい。
今月の11日に、スコットランドで最高齢だった女性が亡くなったという。享年は110歳。名前はマージョリー・マクガウンさんといい、アイラ島のボウモアにある老人ホームにお住まいだったとか。マクガウンさんは、生前モルトウイスキーを嗜むことを日課にしていたそうな。
彼女のお気に入りの銘柄は、なんとアードベッグだったとか。存命だったころ、インタビューで彼女は次のように語ったことがあるという。「私にとってウイスキーは、まさに命の水なのです。アイラ島のモルトウイスキーはとても有名ですが、中でも私はアードベッグをことのほか贔屓にしています。私たちの家から続く道路の、最果ての地で作られているウイスキーです。あ、でも飲んだらもちろん運転はしませんよ。」
ちなみに彼女は102歳のとき、その年の英国の最年長ドライバーとして認定されたこともあるという。交通量の多い土地ではちょっと考えられない話だが、アイラ島の道路事情ならではの微笑ましいエピソードと言えるだろう。
ポリフェノールの一種のエラグ酸が大量に含まれるウイスキーと、健康とのかかわりは科学的に証明されている。彼女にとって、アードベッグは本当に長寿の秘薬だったのかもしれない。