10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ブルイックラディのマネージングディレクターであるマーク・レイニア氏によれば、英国地質研究所が出版する『Whisky on the Rocks』という本に、ブルイックラディのウイスキーは「南米の岩のエキスが含まれている」と書かれているらしい。どういうことかというと、ブルイックラディ蒸留所があるアイラ島南西部のリンズ地方の地質は、18億年前に形成されたもので南米大陸の地質と同じものだからだという。
かつて今より海面のレベルが高かった頃、アイラ島はインダール湾とグルーニアートの入り江が繋がっていたと考えられている。すなわち現在のアイラ島は、2つの島が陸続きになりできあがったというわけだ。グルーニアートを境に西と東では地質も異なっており、岩の間を流れる地下水の質もアイラ島の西側と東側では微妙に違っている。
ジュラ島を含む東側は、6~8億年前のカレドニアン造山運動によって形成された背斜(地層が褶曲して山形になっている部分)で、地質はダルラディアンと呼ばれる変成岩(いったんできた岩石が熱や圧力などの作用を受け、構成する鉱物の組み合わせ構造が変化したもの)。一方西側の陸地の形成時期は18億年前まで遡り、地質は角閃岩と堆積砂岩だ。角閃岩も東側のダルラディアンと同種の変成岩だが、堆積砂岩は学術的には変成岩とは区別され堆積岩というカテゴリーの砕屑岩に分類される。砕屑岩は火山由来以外の成分(砕屑物)が堆積したもので、明らかに変成岩とは組成が異なる。
また東側のダルラディアンと西側の角閃岩はどちらも変成岩だが、その歴史は3倍ほども違う。岩の間を流れる水の質が、まったく同じだとは思えない。隣接した場所でなぜそういう現象が起きるのかは、現在広く信じられているプレートテクトニクス(大陸移動説)で説明できる。
18億年前、地球には第3次ウル大陸(現在の南アフリカ、北インドなど)、ローレンシア大陸(東南極、北米、グリーランド、シベリア、スカンジナビア半島など。別名ニーナ大陸)、アトランティカ大陸(南米、中央・北西アフリカ)の3つの大陸が存在した。10億年前にこれらの3大陸は合体し、地球史上初めての単一の超大陸ロディニアを形成、6億年前にはバルティカ(ヨーロッパ)、ローレンシア(北米、グリーンランド、北スコットランドなど)、ゴンドワナ(アフリカ、南米、インド、南極、オーストラリア、アラビア半島、マダガスカル島など)の3大陸に再び分裂。そのときアイラ島の東側を含むスコットランド北部はローレンシア大陸に、ブルイックラディのある西側はゴンドワナ大陸に分断されたのだという。その後、ローレンシア大陸とゴンドワナ大陸は再び衝突し、カレドニアン造山運動が誘発され、東側のダルラディアン変成岩が形成された。
ブルイックラディ蒸留所の仕込み水は、詳しく明かされておらず「背後の丘にある貯水池の水」としか公表されていない。レイニア氏によれば低い丘の泥炭層の沼地から引く水だそうで、岩盤の影響は受けていないという。しかしボトリングの際に加水する水は、堆積砂岩と片麻岩の間を流れてくるダーティ・ボッティの湧水を利用している。すなわち加水タイプのブルイックラディには、南米と同じ18億年前の岩のエキスが含まれているといえるのだ。