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エドリントン・グループ社が、タムドゥ蒸留所の生産をストップしたのが2010年のこと。昨年6月にイアン・マクロード社が同蒸留所を買収したが、来年の2013年にはいよいよ操業を再開するという。イアン・マクロード社は2003年にもエドリントン・グループ社からグレンゴイン蒸留所を買い取っており、これで運営する蒸留所は2つになった。
タムドゥといえば、一時代前の製麦方式であるサラディン式モルトティングにこだわっていた蒸留所として知られる。このサラディン式というのは19世紀にフランス人のチャールズ・サラディンという人物が発明した製麦法で、長さ50メートル、深さ1.5メートル、幅3メートルほどのまるで細長いプールのような箱形のスペースに大麦を入れ、網目状の床から空気を送って撹拌する仕組み。スコップなどを使って人力で撹拌する伝統的なフロアモルティングとくらべ、効率面が大幅に改善された。
このサラディン式は多くの蒸留所で採用されたが、1980年代前半にタムドゥ以外ではすべてが撤廃されてしまった。それを機に自家製麦を廃止した蒸留所も少なくない。自家製麦が廃れた理由は、1960年代から1970年代にかけて登場したモルトスターと呼ばれる製麦業者に、麦芽づくりを委託するというやり方が主流になったため。モルトスターではサラディン式ではなく、ドラム式という低コストで大量生産が可能な新しい製麦方式を導入していた。そのためコストのかかる自家製麦を廃止し、外注する蒸留所が続々と現れた。
よってタムドゥが復活しても、サラディン式モルトティング、ならびに自家製麦は撤廃されることが予想される。コストのかかる物を、わざわざ甦らせる理由はどこにもない。エドリントン傘下の時代には、同系列の他蒸留所(グレンロセスやマッカラン、ハイランドパーク等)に麦芽を供給する役割を担っていたが、すでにその必要もなくなっている。前時代のウイスキー産業を象徴するものがまたひとつなくなることは、コアなウイスキーファンにとっては残念なことだろうが、まあ仕方がない。ちなみにサラディン式モルトティングだが、決して絶滅したわけではなく、その命脈は今日でも細くはあるが保たれている。べリックのシンプソンズ・モルト社やバッキーのグリーンコア社のような大手モルトスターでは、改良が加えられた新型サラディン式モルティングで少量だが麦芽が製造されている。