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アンドリュー・ジェフォード(Andrew Jefford)と言えば「ピート・スモーク・アンド・スピリット(Peat Smoke and Spirit)」の著者としても知られる人物だが、先月10日付けの彼のブログにとても興味深い記事が掲載された。9月28日にグラスゴーで行なわれたマクティアーズのオークションで落札されたボウモアの年代鑑定は大変疑わしいというのだ。
その中で「スコティッシュ・ブリューイング・アーカイヴ(Scottish Brewing Archive)」の公文書保管人であるイアン・ラッセル氏が、ジェフォード氏に宛てた手紙が紹介されている。もちろん内容はこのボウモアに関するものだ。ラッセル氏は7つ疑問点を書き出しているので、抜粋超訳してみる。
1. |
ボトルが手吹きで作られたものならば、首の部分が球根状に膨らんでいるのはおかしい。もっと直線的なフォルムになるはず。
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2. |
19世紀のマター・ボウモアの外観に関して、私の知る限りモリソン・ボウモア社のウェブサイトに掲載されている広告(19世紀後半頃のもの)が唯一の資料である。それによれば、ボトルのガラスの色はとても暗い。それは、透明度の高いガラスが当時はとても高価だったためだ。オークションのボウモアには、1850年頃のボトルという説明がされてあるにも関わらずガラスの透明度が高い。またこの広告に描かれているボトルでも、首の形状は球根状ではなく直線的。
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3. |
マクティアーズの説明によれば、オリジナルのボール紙カートンに収められているとのこと。しかし19世紀の半ばに流通したウイスキーで、ボール紙のカートンに収められたものがあったという話は見たことも聞いたこともない。しかしこのカートンだが、実物はオークションでお披露目されず、写真の公開どころか一切の説明さえも記述されていない。なので、このカートンに関するコメントはこれ以上は差し控えておく。
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4. |
液面のレベルは、ボトルの首あたりにまで達している。150年前にボトリングされ、しかもコルクとキャップカバーが破損しているのであれば、中身はもっと蒸発していて然るべき。ただ残念ながら、コルクがいつ破損したのかは判っていない。
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5. |
ブランド名やロゴマークが広く登録されるようになったのが、1870年代の初頭だったことはよく知られている。それまでのウイスキーのラベルは、簡素な台紙にウイスキー名とボトリングした業者の名前、そして簡単な説明程度しか記述されていないようなものだった。しかしこの“1850年頃に出回った”と説明されたボウモアのラベルは、4色のカラー印刷でとても洗練されている。
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6. |
私はマクティアーズのマーティン・グリーン氏宛てにボトルの年代考証に関する資料を送ったのだが、件のボウモアが1850年頃のものだという主張を彼は曲げなかった。彼によれば、ボウモアを出品したマター家の末裔を名乗る人物が申し述べた“言い伝え”がその根拠だとのこと。しかしだ。BBCの「Who Do You Think You Are? (イギリスの家系図ブームの引き金となったといえるBBCの人気番組)」を見た方にならすぐに納得してもらえるだろうが、家系図なんてものは長い年月の中でしばしば捻じ曲げられたり混乱したりするもの。ウィリアム・マターというありふれた名前の人物が19世紀にも沢山いたことは想像に難くないし、そのマター家の家系図や言い伝えが正しいなんて保証はどこにもない。
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7. |
私はこの件をマイケル・モス教授(ウイスキー産業史の名著「スコッチウイスキーの歴史(The Making of Scotch Whisky)」の共著者でもあり、オークションのカタログに記載されるボウモア蒸留所の歴史の執筆なども手がける)に打ち明けた。彼は、件のボウモアが1850年頃のものではありえないと言う。なぜなら、W&J・マターが最初に商標を登録したのは1876年(6年前の1870年からその商標を使用し続けてきたことの申請だった)で、すなわち1869年以前にこのようなラベルのボトルは存在しえないからだと。なお現在彼は、その商標がいつまで登録されていたのかを解明するためにさらに研究を進めているとのこと。
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とまあこんな感じだ。6つ目などは「ふーん、そうかも。」という程度だが、7つ目に書かれてある内容は“1850年頃のボウモアではない”ことの動かしがたい証拠だと言えるだろう。なおマイケル・モス教授によれば、「1890年頃」というのが妥当な鑑定だとのこと。
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【プロフィール】
HN:
MUNE
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性別:
男性
自己紹介:
1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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