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1月25日付けの英タイムズ紙に、タイワニーズウイスキーの興味深い記事が載った。4名のウイスキー愛好家によって5種類ほどの若いウイスキーのブラインドテイスティングが行われたが、その中で台湾のカヴァランウイスキーが最高点を獲得したという。その中にはイングリッシュウイスキーのセントジョージズ・チャプター3(なかなか旨い!)や、アイラ島のビッグネームのシングルモルトが含まれていたというから、ますます興味は深まる。
先月の24日にタイムズ紙の記者の主催で、エディンバラのリースにある歴史あるレストラン・ヴィントナーズルーム(Vintners Rooms)でテイスティング会が開かれ、4名のウイスキー愛好家が招かれた。そのうちの一人は作家でウイスキー専門家でもあるチャールズ・マクリーン氏だ。陽気な雰囲気の中テイスティングは終了し、得点の集計結果が発表された。だが最高得点がタイワニーズウイスキーのカヴァラン(Kavalan)だと知らされた途端、テイスターたちは目を見張り会場の雰囲気は一変したらしい。マクリーン氏は「おお、神よ・・・。」とつぶやき、別のテイスターは「今日は4月1日ですか?」と尋ねたという。その場にいたテイスター以外の人々からも、「信じられない・・・」「素晴らしい!」「ああ、まさか・・・」といったつぶやきが漏れていたそうだ。
チャールズ・マクリーン氏は、30年以上もウイスキーと関わってきたベテランだ。ちなみに他のテイスターたちは、ジンの専門家ジェラルディーン・コーツ氏、酒類販売業を営むズバイル・モハメド氏、そしてシナリオ作家のポール・レヴァティ氏といった面々。レヴァティ氏は、昨年カンヌ映画祭で話題になったケン・ローチ監督の「Looking for Eric」でも脚本を書いた人物だ。
カヴァランウイスキーは、台湾東北部のイーラン(宜蘭)にあるキング・カー蒸留所で造られている。ここは2008年に建造されたばかりの蒸留所で、台湾で操業している唯一の蒸留所でもある。カヴァランウイスキーは現在4種類が製造販売されているが、そのうちの3種類はシングルモルトという本格的な蒸留所だ。輸入ウイスキーを製品に一切使用していないかどうかは不明だが、キング・カー蒸留所で造られたウイスキーに限っていえば、熟成年数は最長でも2年ということになる。今回のテイスティングに出されたカヴァランも2年物だそうで、実はスコッチの定義に当てはめるとまだスピリッツであり、ウイスキーとは呼べない。
さて気になる2位以下のウイスキーだが、全順位を以下に列挙する。なお点数は40点が満点だとのこと。
1位 (27.5点) : カヴァラン (タイワニーズ, 2年物)
2位 (22.0点) : ラングス・プレミアムブレンド (スコッチ, 3年物)
3位 (20.0点) : キングロバート (スコッチ)
4位 (15.5点) : セントジョージズ・チャプター3 (イングリッシュ, 3年物)
5位 ( 4.5点) : ブルイックラディX4 +3 (シングルモルトスコッチ, 3年物)
やはり注目すべき点は、2年熟成のカヴァランが3年熟成の“ウイスキー”を抑えてのトップだということだろう。台湾の気温はスペイサイド地方より、年間を通して20℃近く高いのだという。すなわちそれだけ熟成が早く進む訳で、若いウイスキーのうちは、少しでも熟成感のあるほうが美味しく感じるということなのかもしれない。ただ、熟成の速度が速いことと、いいウイスキーが出来上がることとは本来なら別の話だ。
あとは目を引くのは、やはりというべきかブルイックラディX4の“4.5点”だろうか。マクリーン氏はブルイックラディX4について、「食用油でもディーゼル油でもなく、機械用油の風味だ。」という辛辣なテイスティングノートを残したらしい。ブルイックラディX4は、私はTHE Whisky Worldで72点をつけたが、熟成させていないニュースピリッツ・バージョンだったので多少評価は甘かったかもしれない。
このテイスティング会だが、2006年からイングランドで本格的にウイスキー造りが始まったことを受け、改めてスコッチウイスキーの素晴らしさを見直そうという意図のもと、バーンズナイトに合わせて開催されたものだという。こういう皮肉な結果に終わったことはスコッチファンとしては複雑な心境だが、日本も含めたアジアンウイスキーの輝かしい未来を想像することもまた楽しい。