12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
樽の影響が強く出すぎ、渋みの強いモルトはしばしばある。食べ物やシガーとのマリアージュで、その渋みを楽しむのもいいがそれも程度問題だ。先日、ひょんなことでミラクルフルーツが入手できた。渋いモルトに有効かどうか、試してみたのでレポートしようと思う。
ミラクルフルーツというのは、その実自体は甘くないが次に食べた物を甘く感じさせる作用をもっている果実で、ミラクルベリーとも呼ばれる。この不思議な作用は、果実に含まれる「ミラクリン」という物質が、酸味を感じた際に舌の甘味受容体を刺激するため酸味が甘く感じられるというものだ。ミラクリンは複数の糖鎖が結合した糖タンパク質で、24,600の分子量をもつ化合物。
ミラクルフルーツが発見されたのは、1725年のこと。フランスの探検家シェヴァリエ・デ・マルシェ(Chevalier des Marchais)が、西アフリカの人々が食事の前にこの果物を採って噛んでいることを知り、その効能に気付いたという。その酸味を軽減する作用だが、30~120分程度で消えるため扱いはわりと楽だ。また熱に弱いため、熱いものを食べたり飲んだりすると、効果の持続時間はさらに短くなる。
ウイスキーのサンプルには、13年物のジャパニーズモルトを用意した。シェリー樽熟成のシングルカスクで、度数は63%というかなりマッチョなウイスキーだ。アロマはとてもドライ。ストレートで口に含むとかなりスパイシーに感じられ、まるで舌から揮発するような感触もある。
さて、実験開始だ。まずミラクルフルーツを口に含み、噛んで果肉と種が口全体にいきわたるように舌でころがす。それを1~2分続け種を吐き出し、ウイスキーを口に含む。本来は酸味の軽減に効果のあるミラクルフルーツなのだが、渋みに対しても明らかに効果が認められた。完全になくなったわけではないのだが、まるで渋みの要素がフィルターで濾し取られたかのように感じる。ただしその分、味の奥行きが浅くなり、複雑さも減少するようだ。また収斂性が軽くなったせいだろうか、アルコール度数も下がったような錯覚を覚える。しかし飲み込むときは喉が本来の度数を感じるため、もう少しでむせそうになった。余韻は口中と喉のギャップのせいで、口の中だけ軽く麻酔をかけられたような不思議な感覚が残る。
ついでに、風味のバランスがとれた別のシングルモルトを飲んでみる。劇的な変化はないが、甘みがアップする。ただし加糖したかのような甘さであり、ややしつこく感じられた。アルコール度数はやはり下がったように感じられ、フィニッシュは前のジャパニーズモルトと同じような、何とも不思議な余韻があとを引く。
結果としては、予想以上の効果はあった。ご興味のある向きは、飲みにくいと感じるウイスキーに1回試してみてはいかがだろうか。なお、今回の実験は興味本位で行ったものだが、ウイスキーの楽しみ方としては邪道だと強く思う。