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Kilchoman.jpgスコッチ文化研究所のウェブサイトに、「ザ・テイスタールーム」という新しいコーナーができた。このコーナーでは、『THE Whisky World』で執筆している4人のテイスター達が綴った、ウイスキーの最新ニュースやエッセイ等を公開していく予定だという。

先日、「キルホーマン、オープンデーにオークション」という記事をアップしたので、ご興味があればご覧いただけたらと思う。

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9559410_14e4b0d3eb.jpg4年前に書いた「R・ソーン&サンズの真贋問題」という記事の中で、ウイスキーに含まれている放射性炭素の濃度を測定することで、年代鑑定をすることができるといったことを書いた。いわゆる炭素14年代測定法と呼ばれるやつだが、有機体の年代測定では一般的に広く利用されている方法だ。ウイスキーの原料である大麦ももちろん有機体だから、この測定法が有効なわけである。

その方面の関連記事が、今年になってからいくつかのニュースサイトに掲載された。先日、英テレグラフ紙にも載ったので、要約して紹介しようと思う。

英オクスフォード大学のオクスフォード放射性炭素加速装置(ORAU)の研究者らは、1950年代の核爆弾実験で作られた放射性粒子の量を測定することにより、ウイスキーの年代を正確に割り出せることを発見した。収穫される前の大麦が吸収した微量の放射性炭素の濃度を測定すれば、年代の特定が可能なのだという。

研究所副所長であるトム・ハイアム博士は、次のようにコメントしている。「もし20世紀の半ば以降に造られたフェイク・ウイスキーならば、その特質から簡単に判別することができます。更に古いウイスキーでもある程度の年代の特定は可能で、多くの場合は何世紀につくられたウイスキーであるかを割り出すことができるのです。私たちがこれまでに測定したウイスキーの大半は1800年代に造られたものでしたが、最も古いものでは1700年代のウイスキーもありました。

この技術は放射性炭素年代測定法といって、最近では古代の化石の年代を特定するために考古学者らによって頻繁に利用されています。すべての生物は呼吸をし、大気中にわずかに存在する炭素14を体内に取り込んでいます。しかし死んでしまうと呼吸は止まり、その時点から体内の炭素14は減少していくのです。すなわち、その濃度を測定すれば生命活動を停止した時期が特定できるというわけです。

これまでに行われたテストのほとんどは、スコッチ・ウイスキー研究所から依頼された真贋鑑定でした。年代物のウイスキーから採取されたサンプルは小瓶に詰められてオクスフォードの実験室に送られます。そして、サンプルの液体は測定精度を上げるために燃やされ、発生したガスに荷電粒子が照射されます。

d1641696x.jpg近年、クリスティーズのオークションに20,000ドルの値がつくとも予想された1856年ヴィンテージのマッカラン・レア・リザーブが出品されたのですが、オクスフォード大学の検査で中身は1950年に造られたウイスキーであることが判明し、出品が取りやめになるというケースもありました。」

上記のオークションとは、2007年12月8日にニューヨークのロックフェラープラザで開かれたワインオークションのこと。少量だが、ワイン以外の酒も出品されている。調べてみると、確かに件のマッカランは出品されていない

このテクノロジーの直接的な恩恵に与れるのは、一部のコレクターたちだけなのかも知れない。しかし間接的には、フェイク・ウイスキーの横行に対して間違いなく抑止力になるとも思う。限定的とはいえ、真贋鑑定の切り札があるというのは何とも心強い限りだ。

先月末に神保町のバー、ポルカドッツ・アンド・ムーンビームスで古いオフィシャルのラガヴーリンを飲ませていただいたので、テイスティング・ノート等を書き残したいと思う。

Bar PolkaDots & MOONBEAMS
(バー・ポルカドッツ・アンド・ムーンビームス)
千代田区神田神保町2-2-12 サンエスビルB1F
(東京メトロ神保町駅 A4出口徒歩1分)
TEL: 03-3263-3211

31660794_1761596071.jpg店主の三輪さんは、「このラガヴーリンは、いわゆる“ホワイトラベル”と呼ばれているオフィシャルボトルですね。ボトルの肩に馬の刻印(ホワイトホースのロゴマーク)がないタイプなので、70年代にボトリングされた後期タイプだと思います。前期タイプだとコンディションは開けてみないとわからないケースも多いのですが、後期タイプはハズレが結構少ないですね。このボトルも大変いいコンディションだと思います。」とおっしゃる。

さっそくいただいてみたが、香りに経年のへたりはほとんど感じられない。煙と果実がバランスよく絡み合い、まろやかに鼻に抜ける。喉越しにもインパクトがあり、状態の良さをうかがわせた。フィニッシュでは、心地いい苦味と潮の風味、そして暖かさが締めくくってくれる。

風味について、三輪さんは次のようにもおっしゃる。「やや枯れた果実、微かなカカオ、そして控えめな香水、そんな風味を私は感じます。香水といってもいわゆるパフューミーという意味ではなく、女性の体香のようなニュアンスですね。あと、オフィシャルの古いボトルやG&Mのマップラベルなど、 スクリューキャップで度数の低いボトルに共通した独特のオールドフレーバーがあります。おそらく、カラメルの経年変化によるものではないでしょうか。 」

31660794_143867858.jpgG&Mのマップラベルに共通の風味があることは私も認識していたが、スクリューキャップの古いオフィシャルボトルにも、共通のニュアンスは確かにあるかもしれない。決してモルト本来の風味ではなく、経年によって生まれたものだ。恐らく賛否の分かれるファクターだとは思うが、私は嫌いではない。

ラガヴーリン12年 “ホワイトラベル”, 43%

 【香り】 煙、潮風、マーマレード、吸い物、ユーカリオイル。
 【味】 オレンジキャンディ。心地いい古酒特有のヒネ感。

supernova.jpgウルトラ・ピーテッドなアードベッグ、『スーパーノヴァ』が先月の20日にコミッティー会員向けにリリースされた。ブルイックラディオクトモア(フェノール値は公称131ppm)に触発されたのかどうかはわからないが、スーパーノヴァのフェノール値は100ppm以上だという。まあ計り方次第では数値はどうとでも出せるそうなので、その辺りを競うのは不毛な気もするのだが、へヴィピーテッドモルトを造る老舗としてのプライドからなのだろうか。なお、残念ながらコミッティ向けのスーパーノヴァは、すでに完売している。しかし5月末には、一般向けにリリースされる予定だという。

そのスーパーノヴァのテイスティング・ノートが、モルト・アドヴォケートのジョン・ハンセル氏のブログに掲載されたので紹介しようと思う。以下はその訳文だ。


他の若いアードベッグと比較すると、より風味豊かで、より密度が高く、そしてよりスモーキーだ。力強さに満ちてはいるが繊細なキャラクターをも備えており、かすかな潮っぽさと海藻、より顕著な土っぽさ、タール、すす、エスプレッソ、タバコ、草、そしてチョコレートファッジといったアロマが感じられる。またそれらの風味は、舌でも感じ取ることができる。口に含むと、‘通常よりやや元気な’カスクストレングス(例えばルネッサンスとか)といった感じで風味が立ち始める。だが、もしあなたが圧倒的なピートやタール、そして煙の風味にノックアウトされたいと考えているなら、最初はちょっと拍子抜けするかもしれない。しかし、徐々にピートの香りが支配的になっていき、まるで溶岩のように最高潮に達し、スーパーノヴァが普通のアードベッグでないことが分かる。フィニッシュの余韻は太く温かく、いつまでも長く続く。また、奥の方に隠れてしまっているために感じとりにくい大麦の熟成感やバニラの甘さが、アードベッグというウイスキーの好ましい特徴、すなわちタールや熱、そしてスモークといった要素とうまくバランスを保っている。

スーパーノヴァのテイスティングは面白くて仕方がなく、思わず目を見はるような体験だ。比較的若いウイスキーであるにもかかわらず、熟成がうまくいっている。ただし、シェリーやオークの風味がちょっと強すぎるウイスキーと同じように、強烈過ぎるピートの香りは、ライトピーテッドのアードベッグに見られるような、好ましい繊細な複雑さを覆い隠してしまいがちだ。その点が、私がこのウイスキーに90点台のスコアを与えなかった唯一の理由である。だが、スモーキーなウイスキーに目のないマニアには、ぜひ一度はトライして欲しいウイスキーだ。

モルト・アドヴォケート誌の評価: 89点


2004年にリリースされたライトピーテッドのアードベッグ、キルダルトンは個人的には高く評価した。煙という鎧がはずされて表れた、「繊細な複雑さ」に美味しさを見出せたからだ。だからハンセル氏の言いたいことはよく分かる。しかし現行品のアードベッグには、「繊細な複雑さ」を求めるのはちょっと酷かもしれない。40度に加水されているとは言え、ブラスダがそれをよく表している。スーパーノヴァは、価格から考えても若いアードベッグであることは間違いない。スモーキー過ぎるから減点したという話は、このウイスキーに限って言えばちょっと的外れな気もする。

rosebank2.jpg昨年の9月22日に、ローズバンク蒸留所が復活か?という記事を書いたが、先週何ともがっかりさせるニュースが流れてきた。スコットランド中央警察によれば、総額数十万ポンド相当の銅製・鉄製の蒸留器機が、キャメロンのローズバンク蒸留所から盗まれたという。犯行は、12月25日から1月20日までの間に行なわれた可能性が高いとのこと。中古器機の再販価値は低いのだが、それにも関わらず盗まれたのは、恐らくスクラップ市場で売ることが目的だろうというのが警察の見解だ。

ファルカーク警察犯罪捜査部のヒュー・ルーデン刑事は、次のように話している。「犯人は周到な準備をした上で建物へ侵入し、数週間にわたって蒸留器機を取り外したようです。蒸留器機がスクラップとして売買される可能性はあります。過去4週間にわたって蒸留所地域の内外で車両か人物を見かけなかったか、あるいは事件に関すると思われる情報ならどんなに些細なものであっても、警察に通報してくれるように皆さんに呼びかけていくつもりです。」

もし蒸留器等が戻って来なければ、ローズバンクの血を引くファルカーク蒸留所の誕生はなくなる。また、何らかの経緯を経て新蒸留所が創業できたとしても、それはローズバンクとは無関係の蒸留所ということになってしまう。何とも残念な話だ。

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【プロフィール】
HN:
MUNE
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性別:
男性
自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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