02 | 2025/03 | 04 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
30 | 31 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
スプリングバンク蒸留所とグレンガイル蒸留所の操業を最長2年間停止すると、先週の金曜日にJ&A・ミッチェル社が発表した。原料と燃料の価格高騰が理由だという。
この操業停止により42名のスタッフのうちの7名は、例え任意であるにせよ強制的であるにせよ職を失うことになるらしい。ミッチェル社のセールス・マーケティング部門の責任者であるケイト・ライト女史は、「このアナウンスを聞いて、スタッフは皆強いショックを受けています。ほとんどのスタッフは、10年から15年にわたってここで働いています。ですのでこの決定を、決して軽い気持ちでは受け取れませんでした。
私たちのような零細企業にとって、昨今の原料価格の高騰はあまりにも急激すぎました。もし他の蒸留所が私たちと同じような措置をとったとしても、少しもおかしなことではありません。スプリングバンク蒸留所は180年もの間どこの企業にも買収されず、独立した家族経営で運営されてきました。大事なことは、今後もそれは変わらないということです。」と、コメントしている。
またライト女史は、「スプリングバンクのウイスキーは熟成するのに最低7年を要します。そのことから考えて、操業を止めていてもビジネス的に影響が出ない最長期間は2年なのです。私たちは今後、ウイスキーをこれまでの90%の出荷量で、国内および国外の市場に出していくことができると思います。」とも述べている。
しかし、SWA(スコッチ・ウイスキー協会)のキャンベル・エヴァンス氏は、「インドや中国、南米市場の拡大しつつある需要に背を向ける、理解に苦しむ判断です。」と、この操業停止の決定に首をひねる。
またブルイックラディ蒸留所のマネージング・ディレクターであるマーク・レイニア氏も、「奇妙な人たちが下した、奇妙な判断ですね。そんなビジネスは他に見たことがありませんよ。もちろん大麦と燃料価格の高騰は、ブルイックラディ蒸留所にも打撃を与えました。しかし過去6年間、私たちは増産に増産を重ね、今年は年間700,000リットルもの生産ペースで蒸留を行なっています。それに比べ、スプリングバンクの生産量は私たちのよりはるかに少なく、年間わずかに150,000リットル程度ではありませんか。」と、厳しいコメントだ。
2006年にキルホーマン蒸留所が逆風も顧みず創業し頑張っていることを思えば、確かにスプリングバンクの判断はちょっと弱気であるようにも思える。ただ当事者である彼らの考えも、やはり尊重はすべきだろう。しばらくは動向を見守りたい。
ロッホ・ローモンド蒸留所はいろいろな意味でユニークな蒸留所だ。SWA(スコッチ・ウイスキー協会)には加盟しておらず、一貫して独自の路線を歩んでいる。彼らのユニークな点のひとつが、いわゆる“サイレント・モルト”を製造しそれをモルト・ウイスキーとして扱っていることだ。
サイレント・モルトとは麦芽を連続式蒸留器で蒸留した「モルト“100%”ウイスキー」のことで、ポット・スティル(単式蒸留器)とは違い高い純度で蒸留される。そのため原料由来の香味に乏しく、サイレント・モルトなどと呼ばれている。
しかしこれは、スコットランドでは歴史の中で淘汰されてきた手法でもある。例えばキャメロンブリッジ蒸留所では、1880年から1929年にかけてのほぼ半世紀、サイレント・モルトを製造していたという記録が残されているが、結果的には失敗だった。「麦芽はポットスティルで蒸留するもの」という不文律は、スコッチウイスキーの長い歴史で育まれた“伝統”なのだ。そしてこのサイレント・モルトを、“モルト・ウイスキー”と呼ばないことは世界中で共通した認識でもある。
さて、そのロッホ・ローモンド蒸留所が、この6月から施行されるスコッチウイスキーの新法のからみで苦慮しているという。すなわち、サイレント・モルトのカテゴリー分けに関してである。新しい法定義では、販売するウイスキーには5つのカテゴリー、「シングル・モルト」、「シングル・グレーン」、「ブレンデッド」、「ブレンデッド・モルト」、「ブレンデッド・グレーン」のいずれかをラベル等に明記することが義務付けられたからだ。
法律で定められたからには、これまでのような「サイレント・モルトもモルト・ウイスキーのひとつ」という蒸留所独自のルールは通用しない。そこでロッホ・ローモンドはSWAに対し「第6番目のカテゴリー」の設置を提案するという策を講じたのだが、SWAの返事は彼らを落胆させるものだった。
ロッホ・ローモンド蒸留所マネージャーのジョン・ピーターソン氏は、この一件について次のようにコメントしている。「スコッチのカテゴリー定義の変更により、弊社は不公平な扱いを受けることになります。100%大麦麦芽を原料に造られた(サイレント・モルト)ウイスキーが、連続式蒸留器で蒸留されたというだけの合理性を欠く理由でグレーン・ウイスキーとして分類されることになるからです。エネルギー効率という観点からは、ポット・スティルで2回蒸留するよりも連続式蒸留器で1回蒸留する方が優れています。正当な理由のもと、私たちは革新的なウイスキー造りを行なっているのですが、SWAはそういった技術的な面にはとんと興味がないようです。」
ピーターソン氏によれば、彼らが出す多くのブレンデッドにサイレント・モルトが含まれているとのこと。また「ロスデュー (Rhosdhu)」というブランド名で、サイレント・モルトを長期にわたって販売する計画もあるという。生産すること自体は違法ではないので問題ないのだが、モルト100%の「ロスデュー」をシングル・グレーンとして売らなければならないのは大いに不満ではあろう。かつてはオールド・ロスデューの名で5年物のシングル・モルト(ヴァッテド・モルトだという噂もあった)が発売されていたが、現在は製造されていないようだ(これもサイレント・モルトだったのだろうか?)。改めて「オールド・ロスデュー」の名が復活するのか、単に「ロスデュー」としてリリースされるのかは不明。
まあ、ロッホ・ローモンドの主張もわからないではないが、この件ではSWAは英断を下したと思う。やはり、麦芽の香りがあってこそのモルト・ウイスキーだろう。低価格であるのは歓迎すべきことだが、この件での大事な論点は決してそこではない。ホワイト・スピリッツと大差ないといわれてもおかしくないサイレント・モルトが、「モルト・ウイスキーに準ずる酒」のように扱われることには私は違和感を覚える。
地球の温暖化にともない海面が上昇すれば、沿岸地域の蒸留所は水没してしまう可能性があるという記事を以前書いたが、気温の上昇については他にもウイスキー産業を脅かす要素があるのだという。地球温暖化がこのまま進めば、スコッチ産業は将来衰退する可能性が高いという記事が、6月5日付けのプレス・アンド・ジャーナル紙(スコットランド)に載った。今回提起された問題はかなり本質的なものであり、ウイスキーファンや業界関係者にとっては何とも気の滅入る話だ。
その筋の専門家によれば、このまま気温が上昇し続ければ、今後70年以内にスコットランドにはワイン造りに最適な環境が訪れるというのだ。すなわちそれは、ウイスキーの熟成には適さない環境に変わることを意味する。段階的に変化していくのであれば、70年とはいえ決して遠い将来ではないだろう。インペリアル・カレッジ・ロンドンのリチャード・セリー教授は、次のようにコメントしている。
「スコットランドでは2080年までに気温が2度上がると考えられており、それはまさにワインの生産に適した条件なのです。その温度は小麦や大麦には理想的とはいい難く、そうなるときっと私たちは皆アイスランド産のウイスキー飲むことになるでしょう。グレート・グレン渓谷やネス湖、そしてキャムシー・フェル山などが、ピノ・ノワール、シャルドネなどの品種を産出するカリフォルニアのナパヴァレーやシャンパーニュ地方と同じ土俵の上のライバルとなる日が、そのうちやってくるかもしれないのです。」
科学的、理論的にはそういうことになるのだろう。しかし現実問題として考えるなら、ウイスキーからワインへのシフト、これは生産者にとってはとてつもなく高いハードルだと思う。ちなみにセリー教授のこのコメントだが、あまりにのんきで能天気だ。生産者側の事情がまったく汲まれていないから、きっとそう感じてしまうのだろう。
またグレート・グレン渓谷に住む不動産管理人のひとりも、次のようにコメントしている。「ブドウを育てるのは簡単なことではありません。フランスでさえ、ぶどうにとって好ましくない夏を迎えたなら、もうよいワインは造れないのですから。英国南部のいくつかのブドウ畑では、確かにうまく栽培が行われているようです。でも北部に住む私たちにとって、それはとても遠い世界のことのように感じています。」
またスコッチウイスキー協会のデイヴィッド・ウィリアムソン氏は、「産業はその地域の自然環境に依存するものです。環境が与える影響を、私たちは広い視野で注意深く見守っています。そして何十年もの先を見越した上で、その産業が環境にうまく対処していけるように見極めている最中です。」とのコメントを出している。やはり、環境の変化とはケンカをしても無駄だということなのだろう。
来月北海道の洞爺湖で開かれる主要8か国(G8)首脳会議では、地球温暖化を始めとした環境問題への対策が主要な議題のひとつだという。大きな成果を期待したい。
かつてローランド地方にラングホルム(Langholm)という蒸留所があった。1765年に創業し、1917年には閉鎖されている。この蒸留所については、アルフレッド・バーナード氏の著書「THE WHISKY DISTILLERIES OF THE UNITED KINGDOM (1886)」の中にも書かれているのだが、その記事の中に『バーチ・ウイスキー (Birch Whisky)』というちょっと聞きなれない言葉が出てくる。当時のラングホルム蒸留所のマネージャーが、その秘伝の製法を父親から受け継ぎ、このバーチ・ウイスキーなるものを造っているとバーナード氏に語ったというのだ。
バーチとは“樺 (かば)”のことだ。樺のウイスキーとはいったい何なのだろう。樺材で作られた樽で寝かされたウイスキーのことでは?と、おそらく最初は誰もが考えるのではないだろうか。しかし調べてゆくうちに、この木の材質はどうやら酒樽に向いていないということがわかってきた。だとすれば、細かいチップ等に加工し、風味づけに使用したということも考えられる。だが、はたして樺の木の風味は、ウイスキーと合うのだろうか・・・?
樺とウイスキーの相性なら、実際に樺材をウイスキーに浸してみればわかることだ。ちなみに樺の木のエキスには薬効があるという。「バーチバーク (barkとは樹皮のこと)」の名でハーブティーが販売されているので、これをウイスキーに浸してみようと思い立った。また同名のエッセンシャルオイルも世の中にはある。エッセンシャルオイルなら、瞬時にウイスキーとの相性が判断できる。幸いどちらも入手することができた。さっそく実験である。
ベースに使うウイスキーにはボトラーズボトルのローズバンク16年(56.5%)、それとオフィシャルボトルのグレンキンチー10年(43%)の2種類をチョイスした。ローランドモルトを選んだのは、ラングホルムのウイスキーの味になるべく近づけたかったからというのもあるが、むしろニュートラルなスコッチの風味との相性が知りたかったからという理由の方が強い。第一、バーチ・ウイスキーはブレンデッドウイスキーだった可能性だって充分ある。加えた分量だが、ハーブティーはウイスキー50ミリリットルに対し大さじ1杯ほど、エッセンシャルオイルはウイスキー400ミリリットルに対し1滴とした。4つのサンプルは密閉し、常温で24時間放置した。
さて実験結果だが、いずれのサンプルにも同じ系統の特徴的な香りがしっかりと付加された。私は真っ先に膏薬を連想した。そしてヘアトニック、レモングラス、森林等を思わせるアロマが次々に現れる。余談だがヘアトニックといえば、昔「ミスタア・ロバーツ」という映画で、薬用アルコールをコーラで着色し、ヨードチンキとヘアトニックで風味をつけてスコッチの偽物を作るという場面があった。そんなことを思い出し思わず苦笑。
ちなみに後からわかったことだが、バーチバークには抗リウマチ、関節炎の緩和などの効能があるそうだ。かつてカナダのイヌイットが治療に用いていたともいう。「真っ先に膏薬を連想した」私は、思わずほうと唸ってしまったのだが実際に関係あるかどうかはわからない。
極めて個性的ではあるが、バーチ・ウイスキーの香りは決して悪いものではないとも思う。しかし、ウイスキーと樺の木が合うかどうかという問いに対しては、普及しなかったという事実がすべてを物語っているのではないだろうか。
春から初夏への移り変わりを肌で感じる昨今、ハイボールがことのほか美味しい。
ハイボールというカクテルは広義ではあらゆる酒をソフトドリンクで割ったものらしいが、一般的には蒸留酒をソーダやトニックウォーターなどの炭酸飲料で割ったものを指す。特に日本ではウイスキーをソーダで割ったものをハイボールと呼ぶことが一般的だ。語源に関しては諸説あるが、ゴルフ用語に由来するという説はよく聞く。
ウイスキーとソーダ、そして氷だけという、極めてシンプルなレシピがこのカクテルの特色でもある。しかしシンプルであるが故に、ちょっとした違いや作り方のコツが味を左右する。ではどのように作れば、美味しいハイボールになるのだろうか。
近頃サントリーとニッカがブロガー向けのイベントに力を入れているが、特にサントリーは旬であるハイボールのレクチャーを盛んにおこなっているようだ。山崎蒸溜所のオフィシャルブログには、「教えます!“すごいハイボール”のつくりかた」なんていう記事も載っている。この記事の中に、あまり一般的には知られていないかもと思われる記述があったので紹介しておこうと思う。要約すると、「アルコールと水(氷)が混ざると化学反応によって熱(希釈熱)が発生し、グラスの中の温度が上がってしまう。なのでその発熱を考慮に入れ、ソーダを加える前に氷でウイスキーをしっかりと冷やしてやることが大事なポイント。」なんだそうな。美味しいカクテルを作るためには、どうやら化学の知識までも必要とするらしい。
ウイスキーの種類によってもハイボールの性格は変わってくる。いろいろな意味で両極端なのが、スコッチとバーボンだ。スコッチウイスキーの繊細な風味は炭酸にかき消されてしまうケースも多い。スコッチのハイボールは、ベースの選択によっては美味しくも不味くもなる奥の深いカクテルだ。経験的に言うと、風味が比較的ニュートラルで個性の突出していないスコッチが、ハイボールには合う。他方バーボンをベースにすれば、適当な銘柄で適当に作っても大体は美味しくできあがるから不思議だ。
ハイボールに限らず、スコッチでカクテルを作るのは難しい。知名度・人気ともに高いスコッチのハイボールではあるが、ウイスキーを主役と見た場合、ストレートの美味しさを超える味には決してならないと、私は思っている。スコッチというのは、気難しい酒なのだ。スコッチのハイボールは、スコッチとは別の飲み物だという位置づけを私自身はしている。
にもかかわらず、喉の渇きを癒したいときに、スコッチのハイボールに食指が動くことがままあることもまた事実だ。バーボンやその他の大味なウイスキーでは出せない、ドライで上品な味わいを楽しめるからである。
なお、美味しいハイボールを主観的に定義するなら、“濃くて、よく冷えている”ものだ。ウイスキーの分量は、できればダブルでいただきたい。ただし濃さについては、好みがあるだろうから一律に「ハイボールの美味しさ」を定義することは難しい。各々にあった濃さを見つけて欲しいと思う。