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今月の31日のアードベッグ・デーに、新商品の「オーリヴェルデ」が数量限定で発売される。オーリヴェルデとは、ポルトガル語で「Gold and Green」の意味。黄金色に輝くウイスキーの色(auri=金)と、アードベッグのアイコン的なグリーンのボトル(verdes=緑)に由来する。ブラジル国旗もその配色からオーリヴェルデと呼ばれ、今回のリリースは同国が主催する今年のFIFAワールドカップを祝う意味もあるという。またブラジル・ナショナルチームも、オーリヴェルデの愛称で呼ばれることもある(日本では親しみやすい「カナリア」のほうが有名だが)。
「アードベッグ・デー」についても簡単に説明しておこう。アイラ島では毎年5月末から6月にかけての1週間(今年は最終日が5月31日)、「ジ・アイラ・フェスティバル・オブ・ミュージック&モルト」というイベントが行われる。文字通り、ウィスキーと音楽の祭典で、世界中からアイラモルトファンが訪れ賑わう。期間中は日替わりで各蒸留所の「オープン・デー」が開催され、様々な趣向を凝らしたイベントが催される。「アードベッグ・デー」はアードベッグ蒸溜所のオープン・デーを伸展させたもので、フェスティバルに来ている人だけでなく世界中のファンにアードベッグで乾杯してほしいという目的で2012年に制定された。
蒸留製造の最高責任者ビル・ラムズデン博士は、今回の限定商品について以下のように語っている。(MHDのプレスリリースより引用)
「オーリヴェルデを造るにあたり、私には表現したい味わいの明確な構想がありました。そしてそれを実現するための特別なレシピを完成させたのです。結果は私の期待をはるかに超え、アードベッグらしさあふれる味わいでありながら、まったく新しいユニークな表情を持つアードベッグを造りあげることに成功しました。オーリヴェルデを口に含んだ瞬間、フィルターに残ったコーヒー粉や甘草、メープルハム、麦芽やビスケット、白胡椒など、甘さと塩気の素晴らしいバランスを持った複雑な味わいが口内に広がります。アードベッグでは、常に新しい試みを行いますが、今年のアードベッグ・デーに発売されるオーリヴェルデも、アードベッグ・ファンだけでなく、世界中の人々の心を捉えることは間違いないでしょう。」
MHDによれば、「樽のふたの部分に特殊な熱処理加工をほどこし、スモーキーなアードベッグに、モカコーヒーやクリーミーなバニラの風味が加わり、夢のような味わいが実現した。」とのことで、それ以上の説明はない。「ふた」は原文では「cask lids」となっていて、これはもちろんダボ栓ではなく鏡板のこと。「特殊な熱処理加工」について直接MHDに問い合わせたところ、ラムズデン博士はにやりと笑っただけで教えてくれなかったそうで、ヒントとして「(鏡板の)表面積を増やしている」とだけ語ってくれたという。また今回はチョコレートモルト(深焙りした麦芽のことで、グレンモーレンジィ・シグネットでは主原料として使われた)を使わずに、同じような味わいを出したかったのだそうだ。表面積を増やすためには何らかの方法で凹凸をつけたのだと想像できるが、もしかしたら「アリゲーター・チャー」なのではあるまいか。アリゲーター・チャーとは、バーボンバレルなどに施されるもっとも強く焦がす焼き方のことで、表面に浮き上がるワニのウロコを連想させるような四角いパターン模様からそう呼ばれている。ワニのウロコのようなテクスチャーになることは、「表面積が増える」と見なすこともできる。なお同手法でつくられた「アードベッグ・アリゲーター」は2011年に数量限定でリリースされている。
発売前に試飲する機会をいただいたので、テイスティングノートを記しておこう。
【アロマ】
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軽やかな潮風、海岸の焚き火跡、雨に濡れた土草、青リンゴ。加水するとシャープになり、レモンとハーブ。
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バニラファッジ、カフェオレ、白煙、キッパーへリング。粉っぽいテクスチャー。加水するとアイスココア。フィニッシュは心地いい潮風と甘いカフェオレ。
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なおラムズデン博士のテイスティングノートは以下のとおり。
【アロマ】
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タール、ハーブのアロマとともに、かすかにモカが香る。
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コーヒーの風味に燻製した根菜、メープルベーコンやスモークサーモンの野性的な風味。スモーキーなバニラの余韻が長く続く。
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50本限定で金色のボトルのオーリヴェルデもつくられ、関係者やブロガーたちに配られた。もちろん中身はまったく同じもの。裏ラベルには「NOT FOR RESALE」と表記されているにも関わらず、さっそくオークションに出品している不心得者がいるようで呆れるばかりだ。
わが国屈指のウイスキーインポーターであり、ボトラーでもあるスコッチモルト販売が、「ザ・テイスター」シリーズの第6弾を発売する。「ザ・テイスター」は、モルトウイスキー愛好家に選定を依頼し、ボトリングする同社のオリジナルシリーズ。第5弾が出たのが2011年1月なので、約3年ぶりのリリースとなる。
今回の「ザ・テイスター」第6弾では、僭越ながら私がテイスター役を務めさせていただいた。選んだシングルモルトは、インペリアル1995の18年。ドイツのボトラー、ザ・ウイスキーエージェンシーが提供してくれたこのインペリアルは、馥郁とした熟成香を放ち、甘酸っぱい果実のような味わいで、テイスティングしたサンプルの中ではひときわ素晴らしかった。
Release | Distillery | Distilled | Age | Alc. | Out-turn | Taster | |
1st | Sep 2008 | Laphroaig | 1998 | 9yo | 58.4% | 294 | 山岡秀雄 |
Ardbeg | 2001 | 6yo | 58.7% | 301 | |||
2nd | Aug 2009 | Fettercairn | 1975 | 33yo | 58.5% | 120 | Carsten Ehrlich |
3rd | Nov 2009 | Bunnahabhain | 1976 | 32yo | 55.7% | 120 | 山岡秀雄 |
4th | Aug 2010 | Port Ellen | 1982 | 27yo | 57.0% | 156 | 中村信之 |
5th | Jan 2011 | Glentauchers | 1975 | 34yo | 43.7% | 158 | Carsten Ehrlich |
6th | Apr 2014 | Imperial | 1995 | 18yo | 56.2% | 242 | 吉村宗之 |
【アロマ】
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トップノートには新鮮なシトラスと若草。ミルフィーユのように重なったアロマを一枚づつはがしていくと、エニシダの花、蜂蜜、白桃、パイナップル、バニラなどが次々と現れる。加水すると甘酸っぱいオレンジの花。
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完熟のアプリコットやオランジェット、ナッツ、ヌガーなどの芳醇な味わい。ボディが厚く、高いアルコール度数を感じさせないまろやかな口当たり。フィニッシュには黒胡椒やシナモン、チコリ、タンニンが現れ、心地いい余韻が長く続く。
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インペリアルはスペイ川中流域のカロンにあった蒸留所だが、現在は存在しない。1897年、ダルユーイン蒸留所(1852-)の第2工場として、スペイ川を挟んだ対岸に建造された。折しもその年は、ヴィクトリア女王在位60年のダイヤモンドジュビリーに当たっており、インペリアルという名前はそれに因んでつけられたという。スコッチウイスキーの蒸留所名は、地名や自然環境などに由来するケースがほとんどなのだが、インペリアルは数少ない例外の一つ。1989年にアライド・ディスティラーズ社がオーナーになり、それ以降バランタインなど同社のブレンデッドウイスキーの原酒として使用されてきたが、1998年に生産休止。2005年、ペルノ・リカール社によって買収されるが、同年に閉鎖が決定した。2012年の秋には、残念ながら建物も取り壊されてしまった。
なおインペリアルのあった場所には、ペルノ・リカール社の新しい蒸留所が建設される予定だ。すでに建設許可も下り、近々着工されるという。蒸留所名はまだ発表されていないが、「インペリアル」の名が引き継がれるのかどうか、気になるところだ。
グレンモーレンジィのプライベート・エディション第5弾、「コンパンタ」が今月末にリリースされる。日本でも22日から出荷を始める予定だという。
グレンモーレンジィのプライベート・エディションは、蒸留・製造総責任者を務めるビル・ラムズデン博士の「秘密のキャビネット(温めてきた構想や貴重な原酒など、インスピレーションの源)」から選び抜かれた、特徴が際立つ希少な原酒から生み出される、革新的で希少な限定ウイスキーのコレクションのこと。過去のリリースでは全てが高い評価を得ており、貴重なコレクターズアイテムとなっている。
「コンパンタ」は、ブルゴーニュのグランクリュ「クロ・ドゥ・タール」のワイン樽で後熟させた原酒と、コート・デュ・ローヌの甘口酒精強化ワインの樽で後熟させた原酒のアッサンブラージュから生まれたウイスキー。コンパンタ(companta)とはゲール語で「友情」を意味し、ラムズデン博士と同じく崇高な目的を持つフランスの仲間たちの友情を祝うためにつけられた名だという。余談だが、たしかラフロイグの「カーディス」も、ゲール語で「友情」の意味だったはず・・。
クロ・ドゥ・タール(Clos de Tart)はブルゴーニュ屈指のグランクリュとして知られ、若いうちはタンニンが強いが長く寝かせると真価を発揮するタイプ。長熟のクロ・ドゥ・タールは、カシスやバラの花などの複雑なブーケを放つ。ブルゴーニュ地方の南に位置するコート・デュ・ローヌ(Côtes-du-Rhône)は、ミュスカ種をメインに使ったヴァン・ドゥ・ナチュレル(甘口酒精強化ワイン, Vin Doux Naturel)の産地として有名で、上品で洗練されたデザートワインをつくる。
Glenmorangie Private Edition |
Age | Alc. | Special Notes |
Sonnalta PX | 12yo | 46% | ・Extra-matured in Spanish ex- Pedro Ximenez casks ・IWSC 2010 Gold Medal |
Finealta | NAS | 46% | ・A painstaking recreation of a recipe dating back to 1903 ・IWSC 2012 Gold Medal |
Artein | 15yo | 46% | ・Extra-matured in Super Tuscan (Sassicaia) casks ・IWSC 2013 Gold Medal |
Ealanta | 19yo | 46% | ・Matured in virgin American white oak casks ・IWSC 2013 Gold Medal ・World Whisky Of The Year in Jim Murray's Whisky Bible 2014 |
Companta | NAS | 46% | ・Extra-matured in Grand Cru casks from Clos de Tart and those of a lusciously sweet fortified wine from Côtes du Rhône |
ラムズデン博士は、今回の限定商品に対する想いを以下のように語っている。(輸入元のプレスリリースより引用)
「ウイスキーを追加熟成させるための最高の樽を求めて、20年以上もフランスの有名なワイナリーを巡る旅を重ねてきた中で、たくさんの魅力的なワイン、希少なワインを飲む機会がありました。ワイン愛好家としては、やはり一番忘れられない旅はブルゴーニュでした。彼らがワインに注ぎ込む細心の注意と情熱にはいつも驚嘆させられました。ブルゴーニュの中でも小さいワイナリーは、収穫量や経費や時間などを気にする様子もなく、ただひたすら最高のワインを造るという作業を疲れも知らずに続けていました。これはグレンモーレンジィと同じ精神です。完璧を求めるためには何も彼らを遮るものはありません。この共通の精神が私にインスピレーションを与え、フランスワインへの愛、そして長い旅の間に出会った友人たちへの究極のトリビュートを造るきっかけになりました。クロ・ドゥ・タールの樽は、グレンモーレンジィ特有のエレガントでフローラルな個性に、さらなるボディと深いベリーの風味を与えてくれました。この力強いスパイシーな個性を補完するために、コート・デュ・ローヌの甘口の酒精強化ワインで後熟させた原酒を選びました。少し時間はかかりましたが、綿密な調整を経て、力強さと優しさの完璧なバランスのアッサンブラージュにたどりつくことができました。」
試飲する機会をいただいたので、テイスティングノートを記しておこう。
【アロマ】
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熟したラズベリー、カシス、タンニン、マッシュルーム、ココアなど、複雑で豊潤な香りが次々と現れる。加水するとオレンジシャーベット。
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口に含むとまずタンニンのアタック。次第にドライフルーツのアプリコット、黒胡椒、シナモンと変わっていく。若干サルファリーだが、深みが増している印象。加水でミルクココアとオレンジキャンディ。フィニッシュは熟した果実とタンニンの心地いい余韻が長く続く。
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なお輸入元によるテイスティングノートは以下のとおり。
【アロマ】
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赤いベリーや、森の湿った下草などの「秋」の豊かな香り。薪の煙のニュアンスと、ナッツのような心地よい樽香が重なる。
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チェリーや赤いベリー、煮込んだフルーツのスパイシーな味わいに、砂糖漬けのプラム、ブラッドオレンジ、ローズヒップのシロップ、ミルクチョコレート、ブラウンシュガーの風味が現れ、口全体を包みこむ長いフィニッシュへとつながっていく。
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ドライなアロマと濃厚な果実感が印象的なウイスキー。熟成にせよ後熟にせよ、ワイン樽の使用はリスクが大きいというのが私の持論だが、このコンパンタは比較的バランスよく仕上がっている。さすがラムズデン博士の渾身の作品だ。
ハイランド・パークの“ヴァルハラ・コレクション”第3弾が、今月の7日にリリースされた(日本の代理店、レミーコアントロージャパンからは、まだアナウンスがない)。北欧神話のインスピレーションから生まれたこのシリーズは、2012年に雷神「ソー (Thor)」、2013年に火神「ロキ (Loki)」と発売されたが、今年出る第3弾は愛と豊穣を司る女神「フレイヤ (Freya)」だという。
今回のボトルは、ハイランド・パークとしては珍しく明るい緑色に着色されていて、とても目を引く。これは高緯度地方でしばしば観測されるオーロラが、フレイヤのまとう羽に反射した光によって現れるという言い伝えがあるためだという(オーロラの色は、大気の密度や発光する原子の種類によって赤や桃色などを呈することもあるが、最も一般的なのは緑色)。
Valhalla Collection | Age | Alc. | Price |
THOR | 16yo | 52.1% | £120.00 |
LOKI | 15yo | 48.7% | £130.00 |
FREYA | 15yo | 51.2% | £140.00 |
その名が示すように、「ソー」は力強く、「ロキ」はとてもスモーキーなキャラクターを備えていた。「フレイヤ」の風味ははたしてどんなものなのか、とても興味深い。女神フレイヤは、「美の象徴 (The Fair One)」としても知られる存在。「深淵で艶めかしいフレイヤの魅力がよく表れた、初々しい金色の魅惑的なウイスキー」だと、同蒸留所の関係者は説明する。すなわちソーやロキとは明らかに違った、むしろ対極的な風味だといいたいのだろう。オフィシャルサイトには、テイスティングノートが載っているので転載しておこう。
アロマ:
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アーモンドとマダガスカル産のバニラ。ホワイトチョコレートが現れ、
続いて砂糖づけのサクランボ、マンゴーとメロンの力強いウェーブ。 そして、クリームソーダの雲に包まれる。 |
フレーバー:
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オレンジピールとバタースコッチキャンディ、 そしてバラの花びらが
オレンジの花と生姜とともに甘さをもたらす。 ピートの煙を軽やかにまとった、 弾ける発泡性の砂糖菓子とレモングラス、 そしてトロピカルフルーツ。 |
フィニッシュ:
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複雑かつ優美。長く後を引くスパイスと軽やかな燻煙は、果樹園の
やわらかな果実、トーストしたココナッツ、そして軽い焦げと絡み合う。 円熟した深みと気分の高揚。 |
また気になるのは熟成樽の種類だが、公開されている動画の中で同蒸留所のグローバルブランドアドヴォケートを務めるダリル・ホールデン氏が、「バーボン樽の原酒を、100%使用している。」と語っている(2:00あたり)。バーボン樽熟成のハイランド・パークは数が少なく、なかなかお目にかかれない。機会があれば、ぜひテイスティングしてみたい。
現在アイラ島で新しい蒸留所の建築計画が進んでいる。スコッチ文化研究所が発行する『ウイスキー通信』のコラムでもこの話題にはふれたが、続報が届いたので改めて記事にしておきたい。
建設予定地は、ボウモアの町から南西に3キロメートルほど離れた湾岸に位置するガートブレック(Gartbreck)農場。蒸留所名もガートブレックになる予定だという。規模は現在アイラ最小のキルホーマンよりも、さらに小さなマイクロ蒸留所になるとのこと。このあたりには以前立ち寄ったことがあるが、手つかずの自然が残されている素晴らしいロケーションだ。
計画を進めているのは、ジャン・ドネイ氏。彼は仏ブルターニュに本拠を置くケルティック・ウィスキー社のオーナーでもあり、同社は本格派フレンチシングルモルトとの呼び声も高いグラン・アー・モーを生産するウイスキーメーカーとして知られる。2014年5月に着工、2015年秋に生産を開始する予定で、ビジターセンターも設置、年間生産量は60,000リットルを見込んでいるという。すべての仕込みをピーテッド麦芽で行い、原料大麦の20%はアイラ島産のものを、それ以外はスコットランド本島から輸送したものを使う予定だとドネイ氏は話す。なお熟成には主にバーボン樽を使用し、一部の原酒はシェリー樽にも詰める予定だという。
興味深いのは、フロアモルティングを行い、そしてポットスティルの加熱方式にスチーム式ではなく直火焚きを採用するなど、伝統的なつくり方にこだわっている点だ。他のアイラ島の蒸留所で直火焚き方式を採用しているところはなく、スコットランド全体でも数えるほどしかない。伝統的な直火焚きを採用する蒸留所が少なくなったのは、スチーム式に比べコストがかかる上に温度調節が難しく、スティルの寿命が短いというデメリットがあるためだ。
ガートブレックが創業すれば、アイラでは9つ目の稼働蒸留所になる。ウイスキーが飲めるのは早くとも2018年とまだ先の話だが、どんなシングルモルトになるのか今から楽しみだ。