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20100627100801_ugly-betty-still-bruichladdich.jpgブルイックラディ蒸留所のジム・マッキューワン氏が進めていたポート・シャーロット蒸留所の創業計画が頓挫したという。その理由だが、この新蒸留所のウリにするはずだったローモンドスティルが原因らしい。このスティルには、その異様な外観から「醜いベティ (Ugly Betty)」なんていうニックネームがつけられ、トップの部分にはイラスト付きのプレートまで取りつけられている。

ローモンドスティルは、20世紀半ばにハイラム・ウォーカー社が開発した蒸留器。蒸溜釜のネックの部分は円筒形になっており、内部には蒸気の還流率を調整するために角度を変更できる棚が、3段設けられていた。またスワンネックとコンデンサーをつなぐラインアームも、角度の変更ができるという優れもの。

inverleven0905114.jpgローモンドスティルは1959年にインヴァリーヴン蒸留所(1938-1991)に試験的に導入され、通常のポットスティルと並べて設置された。ローモンドスティルで造られたウイスキーは「ローモンド」と呼ばれたが、結局一度も発売されることなく、1970年代後半には操業が止められてしまった。ローモンドは正に幻のシングルモルトなのだ。

ブルイックラディが導入したのは、このインヴァリーヴンの中古のローモンドスティルだ。しかしシミュレーションの結果、このローモンドスティルではモルトの生産は厳しいという結論を出したのだという。

そこでブルイックラディは、何とジンを造るという奇策に打って出た。今月の3日から、すでに生産を開始しているという。当ブログの4月5日付けの記事で、「ブルイックラディ蒸留所がジンを造るかも」といったエイプリルフール記事を紹介したが、それが現実となった形だ。伝説のローモンドスティルを鳴り物入りで導入したブルイックラディ蒸留所だっただけに、「結局使えませんでした。」では格好がつかなかったのは確かだろう。

ジンの名前はまだ公けにはなっておらず、コリアンダーや杜松(ねず)の実といった一般的なものを始め、30種類もの植物を使って香り付けがされていることのみが伝わってきている。うち21種類は、アンゼリカやヤチヤナギ、セイヨウカワラマツバ、メース、ホウキ花などのアイラ島産の植物だという。

ローモンドスティルで造られるポート・シャーロットが飲めなくなったのは、個人的には極めて残念だ。しかしこの蒸留所の創業計画は、何らかの形でぜひ復活させて欲しいものだ。

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拙著『うまいウイスキーの科学』の出版を記念して、パーティーを開いていただくことになった。 

スコッチ文化研究所の土屋さん、渋谷さん、谷嶋さん、Pub摩幌美の堀内さんたちが発起人となり企画してくださったもので、厚く御礼申し上げる次第だ。

たくさんの方々にご参加いただけたら嬉しく思う。


 1521474537_211.jpg      1521474537_232.jpg      1521474537_195.jpg

- 日時 -
7月31日(土) 14:00~16:00
※13:30開場

- 場所 -
COHIBA ATMOSPHERE TOKYO
(コイーバ・アトモスフィア東京)
東京都港区西麻布1-14-1 井門西麻布ビル1F
Tel:03-5414-0025
WEB:http://www.cohiba-atmosphere.jp/

- 参加費 -
6,000円
(『うまいウイスキーの科学』付/フリードリンク&フード)

- 定員 -
立食80名

- 申込先 -
スコッチ文化研究所
件名を「出版パーティ参加希望」として、
お名前・電話番号・メールアドレスをご記入の上
info@scotchclub.orgまで

- お問合せ先 -
スコッチ文化研究所
Tel:03-5774-4142

- 発起人 -
土屋守  渋谷寛  谷嶋元宏  坂本芳  堀内貞明(Pub摩幌美)

SN3B0049.jpgウイスキーの風味には果実や花など、一般に「好ましい」と受け取られるものもあれば、人によって評価が分かれるものもある。シェリー樽で熟成されたモルトにしばしば見られる硫黄臭は、私はあまり得意ではない。硫黄臭が苦手だと自覚して以来、そのファクターは少なければ少ないほどいいという単純な物差しで判断をしてきた。ただ過去を振り返ると、強弱はあるにせよ硫黄臭が付き物のシェリー樽熟成のモルトを、美味しいと感じたときがあったのも確かだ。だとすれば、自身の味覚が変わったのだろうか?

そんな問いに、ひとつの答えを示してくれるシングルモルトに最近出会った。軽く目から鱗が落ちたのだが、ウイスキーを飲んでそういう体験をしたというのは、ここ2~3年ではちょっと記憶にない。マキロップチョイスのコールバーン、1980年ヴィンテージ。ボトリングは2001年1月なので、10年近く前にリリースされたものだ。

このモルトの風味で記憶は巻き戻され、まるで過去にタイムスリップしたかような錯覚を覚えた。呼び覚まされたのは、かつて「美味しい」と感じた、シェリー樽熟成のシングルモルトの懐かしい風味。その風味のもっとも特徴的で興味深い点は、硫黄臭が決して微弱ではないことだ。にもかかわらず、硫黄臭の存在はまったく違和感がなく、むしろ心地いいアクセントになっている。また風味全体のバランスも素晴らしく、アルコール度数が高い割には鼻や舌への刺激もまろやかだ。

このコールバーンは特殊なのだろうか? しかし、「懐かしい」と感じたことも確かだ。硫黄臭がプラス面に作用している化学的な原因は、飲んでいるだけではまったくわからない。ただ100%ではないにせよ、その要因が硫黄臭自身ではなく、それ以外の要素にあることは明確に感じる。マッチングとバランスの問題のなのだろうか。そもそも、このコールバーンは熟成がとてもうまくいっており、ベーシックな部分でのウイスキーとしての完成度がとても高い。そのため多少の硫黄臭なら風味の深みを与える程度にしか作用しないということなのかもしれない。

いずれにせよ、「歓迎されざるお客」である硫黄臭が他のメンバーたちとも仲良くやり、その結果総合的なパフォーマンスを引き上げていることは事実である。硫黄臭の強いウイスキーのテイスティングは、今後こういった例を多少なりとも鑑みようと考えている。


Coleburn 1980/2004
 (62.9%, McKillop’s Choice, sherry wood, cask #1261)

【アロマ】
濃厚なプルーン、湿ったレザー、硫黄、煙、古びたウェアハウス、
古木につく苔
【フレーバー】
完熟オレンジ、ブランデーケーキ、硫黄、シナモンキャンディ、
蜂蜜がけのクルミ
【総 評】
風味がとても複雑で重厚だ。アロマがミルフィーユのように幾重にも
重なっており、あまりに深くてアロマの底が見えない。

umai_whisky01.jpgこのたび、拙著『うまいウイスキーの科学』(サイエンス・アイ新書)を上梓した。今週にも書店に並ぶ予定(16日頃)なので、この場でPRさせていただこうと思う。

基本的にビギナー向けの内容だが、「ウイスキーの科学」というテーマにそぐうよう、第1章で製造工程についてはそれなりに詳しく説明してある。ウイスキーコニサー資格認定試験を受けた方、もしくは勉強されている方には馴染みのある内容だと思うが、初心者向けに不必要だと思う部分は削ぎ落とし、足りない箇所は加筆した。

umai_whisky02.jpg第2章では、スコットランドのモルトウイスキー蒸留所を紹介している。なお、このブログのエントリーのようなマニアックな内容を期待されるとちょっと困るのだが、創業を計画中の蒸留所(事実上頓挫や破綻したものも含む)の紹介にもページを割いてみた。なお閉鎖された蒸留所の紹介は、紙幅の関係で割愛させていただいた。もちろん『失われた蒸留所』(出版未定)には含めるつもりでいる。

第3章の「ウイスキーのおいしい飲み方」はあくまでも個人の主観なので、異論もあろうかとは思うが参考にしていただければ幸いだ。


第1章 ウイスキーの科学
      『ウイスキーの起源』
      『ウイスキーとは?』
      『モルトウイスキーの原料』
      『モルトウイスキーの製造工程』
第2章 スコットランドの蒸留所
      『ウイスキーと風土の関係』
         ≪ハイランド≫
         ≪ローランド≫
         ≪キャンベルタウン≫
         ≪アイラ≫
         ≪スペイサイド≫
         ≪アイランズ≫
第3章 ウイスキーのおいしい飲み方
      『ウイスキーの飲み方』
         ●ストレート
         ●ハイボール
         ●水割り
         ●オンザロック
      『ウイスキーを使ったカクテル』


もし見かけたら、お手に取りご覧いただけたら嬉しい。

annandale.jpgローランド地方のダンフリースシャーに、アナンデールという蒸留所がかつてあった。1920年に閉鎖された、いわゆる失われた蒸留所だ。蒸留設備は閉鎖後間もなく撤去されたが、建物はほぼ完全な形で残されている。そのアナンデール蒸留所が、ほぼ90年ぶりに復活しようとしている。来年の夏の終わり頃には、操業を開始する予定だという。

アナンデールを甦らせたのは、実業家大学教授でもあるデイヴィッド・トムソン氏だ。2007年に蒸留所を買い取り、同年に夫人のテレサ・チャーチさんとともにアナンデール・ディスティラリー社を創設した。蒸留所再建は英政府からも奨励され、補助金が出たという。

旧アナンデール蒸留所は、農夫のジョージ・ドナルドによって1830年に創業された。仕込水は、街に引かれているものと同じミドルビー川からの水を使用し、冷却や動力用にはガリーランズ川から引いた水を使った。1887年、老朽化した設備や建物が改築される。動力は水車に代わって蒸気タービンが設置され、煙突はブロック製の大きなものに置換された。1920年、当時のオーナーだったジョン・ウォーカー&サンズ社が閉鎖を決定。1924年以降、敷地はロビンソン家によって農場として使用されてきた。

オリジナルのアナンデールの蒸留設備に関する記録は、何も残されていないという。すなわちアナンデール復活は、新生アナンデールの誕生だということもできる。これについては、2008年1月14日付けの The Scotch Blog に、興味深いインタビュー記事が載っていた。ブログ筆者のケヴィン・アースキン氏は、「かつてのアナンデール・ウイスキーの味を知っていたり、あるいはウイスキーのサンプルを持っている人物が、もしいたらどうしますか?」と尋ねている。それに対しトムソン氏は、「もしいたとしても、恐らく名乗り出てはくれないでしょう。そもそもアナンデールのウイスキーは、そのほとんどがブレンデッドのジョニーウォーカーの原酒として使われていたはずなので、ボトリングされたシングルモルトは少なかったのではないでしょうか。それにアナンデールのシングルモルトは、実はたいして美味しくなかった、そんな気が私はするのです。」と答えている。

「実はたいして美味しくなかった」というトムソン氏の考えは、まるでイソップ童話の「狐と葡萄」のようだが説得力はある。もし本音だとすれば、オリジナルにこだわる動機は、彼にとってはまったくないわけだ。ともあれ、蒸留所の数が少ないローランドで、新しいウイスキーが誕生するのは喜ばしいことである。早ければ2014年には、アナンデールのシングルモルトが飲めるかもしれない。

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【プロフィール】
HN:
MUNE
HP:
性別:
男性
自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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