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サントリーがスコットランドに、来年にも新しい蒸留所を建造するという。同社が所有するオーヘントッシャンとボウモアを、組み合わせたような蒸留所になるらしい。その名もオーヘンボウイ(Auchentoshan + Bowmore = Auchenbowie)という冗談のような名前だが、同名のがスターリングシャーにある。この地に建設されるのであれば、新蒸留所のモルトは南ハイランド産ということになる。

このスクープ記事が掲載されたのは、セルジュ・ヴァレンティン氏のサイト、ウイスキーファン(Whiskyfun)。ボウモア蒸留所の、アンガス・マクレルド氏のインタビューをYouTubeで視聴できる。マクレルド氏は新蒸留所のマネージャーに就く予定だという。

※この件の真偽についてサントリー広報部に問い合わせたところ、「事実ではない」という回答を得た。(6/4 23:17)

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supernova2010.jpgアードベッグ・スーパーノヴァのセカンドボトリング、2010年度版が今月の31日にいよいよ発売される。昨年一般販売に先駆けて、コミッティメンバー向けにリリースされたものもカウントすると、2010年度版はサードボトリングという見方もできる。しかしコミッティボトルと通常販売の2009年度版の中身はまったく同じものであるため、スーパーノヴァ2010は事実上セカンドボトリングというわけだ。

さてそのスーパーノヴァ2010だが、アルコール度数は少しアップして60.1%(前回は58.9%)だという。もちろんノンチルフィルタリングで、価格は79.99ポンド。テイスティングノートはオフィシャルサイトほか、先行試飲した方々のブログでも読むことができる。モルト・アドヴォケートのジョン・ハンセル氏のブログにも掲載されたので紹介しようと思う。


とてもダイナミックで、複雑、そして力強い。葉を燻した煙、コールタール、ダークチョコレートチップを散りばめたコーヒーファッジ、燻製のオリーブ、海藻のペッパーサラダ、果実(レモンやライム)、オランダ・ジン、かすかに塩気のある草、そして花の香り(スミレ?)が次々と現れる。昨年リリースされたファーストボトリングのスーパーノヴァと比べると、よく似てはいるがややリッチで、葉を燻した煙と成熟した大麦の風味が一層強く感じられる。また、力まかせな感じが薄れ、より洗練されたような感触もある。今回のボトルの方が、若干ではあるが私は好きだ。

モルト・アドヴォケート誌の評価: 90点


スコアは2009年度版が89点だったので、1点アップしたことになる。前回90点台の点数を与えなかった理由として、「煙たすぎて、繊細な複雑さが覆い隠されてしまったからだ」と述べていたハンセル氏だが、今回はその点が解消されたということなのだろうか。なお、ウイスキーファン(Whiskyfun)のセルジュ・ヴァレンティン氏も、昨年・今年とハンセル氏と同じような採点をしている。ともあれ、スーパーノヴァ2010の試飲はとても楽しみだ。

image690.jpg樽の影響が強く出すぎ、渋みの強いモルトはしばしばある。食べ物やシガーとのマリアージュで、その渋みを楽しむのもいいがそれも程度問題だ。先日、ひょんなことでミラクルフルーツが入手できた。渋いモルトに有効かどうか、試してみたのでレポートしようと思う。

ミラクルフルーツというのは、その実自体は甘くないが次に食べた物を甘く感じさせる作用をもっている果実で、ミラクルベリーとも呼ばれる。この不思議な作用は、果実に含まれる「ミラクリン」という物質が、酸味を感じた際に舌の甘味受容体を刺激するため酸味が甘く感じられるというものだ。ミラクリンは複数の糖鎖が結合した糖タンパク質で、24,600の分子量をもつ化合物。

ミラクルフルーツが発見されたのは、1725年のこと。フランスの探検家シェヴァリエ・デ・マルシェ(Chevalier des Marchais)が、西アフリカの人々が食事の前にこの果物を採って噛んでいることを知り、その効能に気付いたという。その酸味を軽減する作用だが、30~120分程度で消えるため扱いはわりと楽だ。また熱に弱いため、熱いものを食べたり飲んだりすると、効果の持続時間はさらに短くなる。

ウイスキーのサンプルには、13年物のジャパニーズモルトを用意した。シェリー樽熟成のシングルカスクで、度数は63%というかなりマッチョなウイスキーだ。アロマはとてもドライ。ストレートで口に含むとかなりスパイシーに感じられ、まるで舌から揮発するような感触もある。

さて、実験開始だ。まずミラクルフルーツを口に含み、噛んで果肉と種が口全体にいきわたるように舌でころがす。それを1~2分続け種を吐き出し、ウイスキーを口に含む。本来は酸味の軽減に効果のあるミラクルフルーツなのだが、渋みに対しても明らかに効果が認められた。完全になくなったわけではないのだが、まるで渋みの要素がフィルターで濾し取られたかのように感じる。ただしその分、味の奥行きが浅くなり、複雑さも減少するようだ。また収斂性が軽くなったせいだろうか、アルコール度数も下がったような錯覚を覚える。しかし飲み込むときは喉が本来の度数を感じるため、もう少しでむせそうになった。余韻は口中と喉のギャップのせいで、口の中だけ軽く麻酔をかけられたような不思議な感覚が残る。

ついでに、風味のバランスがとれた別のシングルモルトを飲んでみる。劇的な変化はないが、甘みがアップする。ただし加糖したかのような甘さであり、ややしつこく感じられた。アルコール度数はやはり下がったように感じられ、フィニッシュは前のジャパニーズモルトと同じような、何とも不思議な余韻があとを引く。

結果としては、予想以上の効果はあった。ご興味のある向きは、飲みにくいと感じるウイスキーに1回試してみてはいかがだろうか。なお、今回の実験は興味本位で行ったものだが、ウイスキーの楽しみ方としては邪道だと強く思う。

StuartRobertson.jpgインディペンデントボトラーのダンカン・テイラー社が、ハントリーという新蒸留所の創業を計画してから何年か経つ。最初にその話を聞いたのは2007年頃だったか。その後大きなニュースはなかったが、同社オフィシャルブログの20日付けのエントリーに、人事に関する最新情報が載った。スプリングバンク蒸留所を退職したスチュアート・ロバートソン氏が、新蒸留所の開発部門責任者としてとし就任することになったという。ロバートソン氏はディアジオ社でマネージメントの経験を積み、その後スプリングバンクで管理責任者を務めたベテランだ。なおスプリングバンク蒸留所のマネージャーのポストは、ギャヴィン・マクラクラン氏が引き継いでいる。

tokyo_eandco2_b.jpgダンカン・テイラー社は、ビジネスマンのアベ・ロッセンベルグ氏がチャーリー・グットマン氏とともに、1938年にアメリカ合衆国で設立したボトリングメーカーだ。1960年代の初頭から、スコットランド全域の数多くの蒸留所のニューフィリングの樽を購入し、これらの古酒は「ピアレス」や「レアレスト・オブ・ザ・レア」といったシリーズで現在リリースされている。1994年にロッセンベルグ氏が85歳で死去。その後、ダンカン・テイラー社は一時的に慈善団体の監督下に置かれるが、2000年にユアン・シャンド氏はアラン・ゴードン氏と共同でダンカン・テイラー社を買収し、現在に至っている。なお同社は樽の総保有数ではいわゆるビッグ4には及ばないものの、古酒、特に1960年代ヴィンテージ樽の保有数ではインディペンデントボトラーとしてはナンバーワンだそうである。

huntly.jpg新蒸留所ができると、ハントリーという名の蒸留所は歴史上3つ目ということになる。過去にもハントリーという名の蒸留所は、2つほどあったのだ。1つ目は1798年にアバディーンシャーで創業したが、翌年に閉鎖している。創業者名は記録に残っていない。2つ目はアバディーンシャーのブリッジ・オブ・ボギーでハントリー・ディスティラリー社によって創業された。1824年に操業を始めたが、同年に操業停止。1832年、ジョン・ロバートソン社が新しいオーナーとなり操業を再開するが、1860年に休業。1867年頃までに閉鎖されたといわれている。なお同蒸留所には別名があり、ピリーズ・ミル(Pirries Mill もしくは Peiries Mill)とも呼ばれていた。

ハントリー蒸留所の最大の特徴は、地球に優しいエコな蒸留所であることだ。スコットランドでは初となる、完全なカーボンニュートラル蒸留所なのだという。近くにあるグレンドロナック蒸留所も、二酸化炭素を回収するウォッシュバックを導入し環境に配慮した操業を行っているが、ハントリーはその考え方を更に推し進めている。カーボンニュートラルというのは、燃料にバイオマス(石油や石炭の代替エネルギーとして使われる植物のこと)を使用し、大気中の二酸化炭素を増やさないという考え方だ。植物由来の原料の場合、燃やして二酸化炭素を放出しても、その二酸化炭素中の炭素は元来植物が光合成によって大気中から取り込んだものなので、大気の二酸化炭素濃度は常に一定に保たれるわけである。このようなサイクルは炭素循環と呼ばれるが、石油や石炭に含まれる炭素は地中に埋没し自然界で循環していない炭素なので、これらを燃やすことはすなわち大気中の二酸化炭素の濃度を上げることになるのだ。

またこの蒸留所のユニークな点は、モルトウイスキーばかりでなくシングルグレーン、さらにはジンやウォッカまで生産する予定であること。ホワイトスピリッツにまで手を広げるのであれば、ダンカン・テイラーらしさがある面白い製品を期待したいものだ。シェットランド諸島のブラックウッド蒸留所が、かつて造っていたジンのように。もちろんハントリーのシングルモルトは、それ以上に楽しみである。

aberfeldy001.jpgあまり話題にならなかったが、昨年末のエディンバラ国際空港の免税店の売り場リニューアルを記念し、アバフェルディのカスクストレングスのオフィシャルボトルが免税店限定販売でリリースされた。このアバフェルディだが、1997年ヴィンテージの18年物で、なんとシングルカスクである。248本限定(実際には260本分とれたらしい)で、価格は250ポンドだ。免税店限定の商品ではあるが、オンラインショップでプレオーダーすることも可能だ。このアバフェルディのような限定品は、プレオーダーしておけば完売を憂えることなく現地に赴ける。

この度のアバフェルディ・シングルカスクのリリースは、バカルディ社とバカルディ・グローバル・トラベル・リテール・ディヴィジョン社、そしてワールド・デューティ・フリー社の3社共同で実現したものだ。樽のチョイスはデュワーズのマスターブレンダー、ステファニー・マクロード女史、ワールド・デューティ・フリーのマーク・リッチーズ氏とニゲル・サンドルズ氏の3名が行い、販売はバカルディ・グローバル・トラベル・リテール・ディヴィジョン社がイニシアチブをとった。

ステファニー・J・マクロードさんは、ブレンデッドの名門デュワーズの7代目のマスターブレンダー。同社の160年の歴史の中では唯一の女性マスターブレンダーで、官能分析と熟成学のエキスパートだそうだ。

バカルディ・グローバル・トラベル・リテール・ディヴィジョン社は、ヨーロッパ旅行者を支援することを目的に、バカルディ社から独立した法人として2006年に設立された組織。ワールド・デューティ・フリーは英国内の8つ国際空港(ヒースロー、ガトウィック、スタンステッド、シティ、バーミンガム、マンチェスター、グラスゴー、エディンバラ)を主軸に免税店事業を管理運営する組織で、BAA(英国空港公団)が100%出資する子会社だ。

現在、アバフェルディのオフィシャルボトルのラインナップは12年と21年のみで、いずれもアルコール度数は40%だ。加水されてなお46%というボトルも増えている昨今、このラインナップは、シングルモルトファンにとってはあまりに物足りない。今回のシングルカスクのリリースは、単発とはいえ嬉しいニュースだが、あまりシングルモルトの販売に積極的でないバカルディ社のこれまでの動向を考えるなら、このようなボトルのリリースはこれっきりという可能性はある。

※内容に一部誤りがありましたので、加筆訂正いたしました。(4/26 21:50)

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【プロフィール】
HN:
MUNE
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性別:
男性
自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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