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ウイスキーの風味には果実や花など、一般に「好ましい」と受け取られるものもあれば、人によって評価が分かれるものもある。シェリー樽で熟成されたモルトにしばしば見られる硫黄臭は、私はあまり得意ではない。硫黄臭が苦手だと自覚して以来、そのファクターは少なければ少ないほどいいという単純な物差しで判断をしてきた。ただ過去を振り返ると、強弱はあるにせよ硫黄臭が付き物のシェリー樽熟成のモルトを、美味しいと感じたときがあったのも確かだ。だとすれば、自身の味覚が変わったのだろうか?
そんな問いに、ひとつの答えを示してくれるシングルモルトに最近出会った。軽く目から鱗が落ちたのだが、ウイスキーを飲んでそういう体験をしたというのは、ここ2~3年ではちょっと記憶にない。マキロップチョイスのコールバーン、1980年ヴィンテージ。ボトリングは2001年1月なので、10年近く前にリリースされたものだ。
このモルトの風味で記憶は巻き戻され、まるで過去にタイムスリップしたかような錯覚を覚えた。呼び覚まされたのは、かつて「美味しい」と感じた、シェリー樽熟成のシングルモルトの懐かしい風味。その風味のもっとも特徴的で興味深い点は、硫黄臭が決して微弱ではないことだ。にもかかわらず、硫黄臭の存在はまったく違和感がなく、むしろ心地いいアクセントになっている。また風味全体のバランスも素晴らしく、アルコール度数が高い割には鼻や舌への刺激もまろやかだ。
このコールバーンは特殊なのだろうか? しかし、「懐かしい」と感じたことも確かだ。硫黄臭がプラス面に作用している化学的な原因は、飲んでいるだけではまったくわからない。ただ100%ではないにせよ、その要因が硫黄臭自身ではなく、それ以外の要素にあることは明確に感じる。マッチングとバランスの問題のなのだろうか。そもそも、このコールバーンは熟成がとてもうまくいっており、ベーシックな部分でのウイスキーとしての完成度がとても高い。そのため多少の硫黄臭なら風味の深みを与える程度にしか作用しないということなのかもしれない。
いずれにせよ、「歓迎されざるお客」である硫黄臭が他のメンバーたちとも仲良くやり、その結果総合的なパフォーマンスを引き上げていることは事実である。硫黄臭の強いウイスキーのテイスティングは、今後こういった例を多少なりとも鑑みようと考えている。
Coleburn 1980/2004
(62.9%, McKillop’s Choice, sherry wood, cask #1261)
【アロマ】
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濃厚なプルーン、湿ったレザー、硫黄、煙、古びたウェアハウス、
古木につく苔 |
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完熟オレンジ、ブランデーケーキ、硫黄、シナモンキャンディ、
蜂蜜がけのクルミ |
【総 評】
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風味がとても複雑で重厚だ。アロマがミルフィーユのように幾重にも
重なっており、あまりに深くてアロマの底が見えない。 |
先月末に神保町のバー、ポルカドッツ・アンド・ムーンビームスで古いオフィシャルのラガヴーリンを飲ませていただいたので、テイスティング・ノート等を書き残したいと思う。
店主の三輪さんは、「このラガヴーリンは、いわゆる“ホワイトラベル”と呼ばれているオフィシャルボトルですね。ボトルの肩に馬の刻印(ホワイトホースのロゴマーク)がないタイプなので、70年代にボトリングされた後期タイプだと思います。前期タイプだとコンディションは開けてみないとわからないケースも多いのですが、後期タイプはハズレが結構少ないですね。このボトルも大変いいコンディションだと思います。」とおっしゃる。
さっそくいただいてみたが、香りに経年のへたりはほとんど感じられない。煙と果実がバランスよく絡み合い、まろやかに鼻に抜ける。喉越しにもインパクトがあり、状態の良さをうかがわせた。フィニッシュでは、心地いい苦味と潮の風味、そして暖かさが締めくくってくれる。
風味について、三輪さんは次のようにもおっしゃる。「やや枯れた果実、微かなカカオ、そして控えめな香水、そんな風味を私は感じます。香水といってもいわゆるパフューミーという意味ではなく、女性の体香のようなニュアンスですね。あと、オフィシャルの古いボトルやG&Mのマップラベルなど、 スクリューキャップで度数の低いボトルに共通した独特のオールドフレーバーがあります。おそらく、カラメルの経年変化によるものではないでしょうか。 」
G&Mのマップラベルに共通の風味があることは私も認識していたが、スクリューキャップの古いオフィシャルボトルにも、共通のニュアンスは確かにあるかもしれない。決してモルト本来の風味ではなく、経年によって生まれたものだ。恐らく賛否の分かれるファクターだとは思うが、私は嫌いではない。
『ラガヴーリン12年 “ホワイトラベル”, 43%』
【香り】 煙、潮風、マーマレード、吸い物、ユーカリオイル。
【味】 オレンジキャンディ。心地いい古酒特有のヒネ感。
新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、先日グレン・エイヴォン50年(Glen Avon, 実際の発音は“エイウォン”と濁らないらしい)を抜栓したので、テイスティング・ノートを書き残したいと思う。
このグレン・エイヴォンだが、G&M社(Gordon & MacPhail)がボトリングした蒸留所名の明かされていないシングルモルトである。その酒質からグレンリヴェットだともグレンファークラスだとも言われるが、その判断はなかなか難しい。というのも、この銘柄はヴィンテージや熟成年数違いで何種類か出されているのだが、それぞれで微妙にキャラクターが違っているためだ。比較的若いものには繊細なグレンリヴェットには不似合いな荒々しい力強さを感じるが、この50年のように「もしかしてリヴェットかも?」と思わせる極めて繊細な要素もあったりする。
この正体不明のシングルモルトが、グレンリヴェット、もしくはグレンファークラスのいずれかだろうと考えられているのには、G&M社が抱えていた蒸留所名使用制限の問題も大きく関与している。特にグレンファークラス蒸留所が、インディペンデント・ボトラーに対してなかなか名前の使用許可を出さないことは有名だ。
またグレン・エイヴォンという名称の由来が、いずれの蒸留所をも示唆している可能性がある点も興味深い。19世紀の半ばにグレンエイヴォン(Glenavonと一語で綴る)という蒸留所が、実はザ・グレンリヴェット蒸留所の創業者の息子であるジョン・G・スミスによって操業されていたのだ。この蒸留所のウイスキーのハーフボトルが、ロンドンで開かれたオークションで14,750ポンドという高値で落札されたのは記憶に新しい。
一方グレンエイヴォン蒸留所は、バリンダロッホにあったという記録も残されている。グレンファークラス蒸留所の所在地はずばりバリンダロッホであり、ボトラーのキングズバリー社がグレンファークラスをバリンダロッホのブランド名で販売していることもよく知られている。もっとも、ウイスキーによっては蒸留所とあまり関係のないブランド名がつけられるケースもままあるので、蒸留所の推測には参考程度の情報と考えたほうが望ましいのだが・・・。
さて主題のテイスティングだが、この手のモルトはとても評価が難しい。現行品と同じ土俵では比べられないからである。それをやるのは、例えるならクラシックカーを現代の車と競わせるようなもので、ある意味ナンセンスだ。酒においても老齢は斟酌してやるべきで、古酒はやはりそれなりの基準で見てやらなくてはならない。
香りはフルーティで複雑。フレーバーはややウッディだが、喉越しには力強さもありコンディションはまずまずだ。50歳という年齢を考えれば、驚くほどかくしゃくとしている。
【香り】 オレンジオイル、洋梨の皮、レザー、雨ざらしの樽。加水でレモンピール。
【味】 チョコレートがけのレーズン、シナモン、樹皮、ゴム。加水で渋みが顕著に。
【フィニッシュ】 シナモンキャンディ。フルーティで心地よいが、渋味が長く残る。