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わが国屈指のウイスキーインポーターであり、ボトラーでもあるスコッチモルト販売が、「ザ・テイスター」シリーズの第6弾を発売する。「ザ・テイスター」は、モルトウイスキー愛好家に選定を依頼し、ボトリングする同社のオリジナルシリーズ。第5弾が出たのが2011年1月なので、約3年ぶりのリリースとなる。

今回の「ザ・テイスター」第6弾では、僭越ながら私がテイスター役を務めさせていただいた。選んだシングルモルトは、インペリアル1995の18年。ドイツのボトラー、ザ・ウイスキーエージェンシーが提供してくれたこのインペリアルは、馥郁とした熟成香を放ち、甘酸っぱい果実のような味わいで、テイスティングしたサンプルの中ではひときわ素晴らしかった。

Release Distillery Distilled Age Alc. Out-turn Taster
1st Sep 2008 Laphroaig 1998 9yo 58.4% 294 山岡秀雄
Ardbeg 2001 6yo 58.7% 301
2nd Aug 2009 Fettercairn 1975 33yo 58.5% 120 Carsten Ehrlich
3rd Nov 2009 Bunnahabhain 1976 32yo 55.7% 120 山岡秀雄
4th Aug 2010 Port Ellen 1982 27yo 57.0% 156 中村信之
5th Jan 2011 Glentauchers 1975 34yo 43.7% 158 Carsten Ehrlich
6th Apr 2014 Imperial 1995 18yo 56.2% 242 吉村宗之
【アロマ】
トップノートには新鮮なシトラスと若草。ミルフィーユのように重なったアロマを一枚づつはがしていくと、エニシダの花、蜂蜜、白桃、パイナップル、バニラなどが次々と現れる。加水すると甘酸っぱいオレンジの花。
【フレーバー】
完熟のアプリコットやオランジェット、ナッツ、ヌガーなどの芳醇な味わい。ボディが厚く、高いアルコール度数を感じさせないまろやかな口当たり。フィニッシュには黒胡椒やシナモン、チコリ、タンニンが現れ、心地いい余韻が長く続く。

インペリアルはスペイ川中流域のカロンにあった蒸留所だが、現在は存在しない。1897年、ダルユーイン蒸留所(1852-)の第2工場として、スペイ川を挟んだ対岸に建造された。折しもその年は、ヴィクトリア女王在位60年のダイヤモンドジュビリーに当たっており、インペリアルという名前はそれに因んでつけられたという。スコッチウイスキーの蒸留所名は、地名や自然環境などに由来するケースがほとんどなのだが、インペリアルは数少ない例外の一つ。1989年にアライド・ディスティラーズ社がオーナーになり、それ以降バランタインなど同社のブレンデッドウイスキーの原酒として使用されてきたが、1998年に生産休止。2005年、ペルノ・リカール社によって買収されるが、同年に閉鎖が決定した。2012年の秋には、残念ながら建物も取り壊されてしまった。

なおインペリアルのあった場所には、ペルノ・リカール社の新しい蒸留所が建設される予定だ。すでに建設許可も下り、近々着工されるという。蒸留所名はまだ発表されていないが、「インペリアル」の名が引き継がれるのかどうか、気になるところだ。

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ハイランド・パークの“ヴァルハラ・コレクション”第3弾が、今月の7日にリリースされた(日本の代理店、レミーコアントロージャパンからは、まだアナウンスがない)。北欧神話のインスピレーションから生まれたこのシリーズは、2012年に雷神「ソー (Thor)」、2013年に火神「ロキ (Loki)」と発売されたが、今年出る第3弾は愛と豊穣を司る女神「フレイヤ (Freya)」だという。

今回のボトルは、ハイランド・パークとしては珍しく明るい緑色に着色されていて、とても目を引く。これは高緯度地方でしばしば観測されるオーロラが、フレイヤのまとう羽に反射した光によって現れるという言い伝えがあるためだという(オーロラの色は、大気の密度や発光する原子の種類によって赤や桃色などを呈することもあるが、最も一般的なのは緑色)。

Valhalla Collection Age Alc. Price
THOR 16yo 52.1% £120.00
LOKI 15yo 48.7% £130.00
FREYA 15yo 51.2% £140.00

その名が示すように、「ソー」は力強く、「ロキ」はとてもスモーキーなキャラクターを備えていた。「フレイヤ」の風味ははたしてどんなものなのか、とても興味深い。女神フレイヤは、「美の象徴 (The Fair One)」としても知られる存在。「深淵で艶めかしいフレイヤの魅力がよく表れた、初々しい金色の魅惑的なウイスキー」だと、同蒸留所の関係者は説明する。すなわちソーやロキとは明らかに違った、むしろ対極的な風味だといいたいのだろう。オフィシャルサイトには、テイスティングノートが載っているので転載しておこう。

アロマ:
アーモンドとマダガスカル産のバニラ。ホワイトチョコレートが現れ、
続いて砂糖づけのサクランボ、マンゴーとメロンの力強いウェーブ。
そして、クリームソーダの雲に包まれる。
フレーバー:
オレンジピールとバタースコッチキャンディ、 そしてバラの花びらが
オレンジの花と生姜とともに甘さをもたらす。 ピートの煙を軽やかにまとった、
弾ける発泡性の砂糖菓子とレモングラス、 そしてトロピカルフルーツ。
フィニッシュ:
複雑かつ優美。長く後を引くスパイスと軽やかな燻煙は、果樹園の
やわらかな果実、トーストしたココナッツ、そして軽い焦げと絡み合う。
円熟した深みと気分の高揚。

また気になるのは熟成樽の種類だが、公開されている動画の中で同蒸留所のグローバルブランドアドヴォケートを務めるダリル・ホールデン氏が、「バーボン樽の原酒を、100%使用している。」と語っている(2:00あたり)。バーボン樽熟成のハイランド・パークは数が少なく、なかなかお目にかかれない。機会があれば、ぜひテイスティングしてみたい。

現在アイラ島で新しい蒸留所の建築計画が進んでいる。スコッチ文化研究所が発行する『ウイスキー通信』のコラムでもこの話題にはふれたが、続報が届いたので改めて記事にしておきたい。

建設予定地は、ボウモアの町から南西に3キロメートルほど離れた湾岸に位置するガートブレック(Gartbreck)農場。蒸留所名もガートブレックになる予定だという。規模は現在アイラ最小のキルホーマンよりも、さらに小さなマイクロ蒸留所になるとのこと。このあたりには以前立ち寄ったことがあるが、手つかずの自然が残されている素晴らしいロケーションだ。

計画を進めているのは、ジャン・ドネイ氏。彼は仏ブルターニュに本拠を置くケルティック・ウィスキー社のオーナーでもあり、同社は本格派フレンチシングルモルトとの呼び声も高いグラン・アー・モーを生産するウイスキーメーカーとして知られる。2014年5月に着工、2015年秋に生産を開始する予定で、ビジターセンターも設置、年間生産量は60,000リットルを見込んでいるという。すべての仕込みをピーテッド麦芽で行い、原料大麦の20%はアイラ島産のものを、それ以外はスコットランド本島から輸送したものを使う予定だとドネイ氏は話す。なお熟成には主にバーボン樽を使用し、一部の原酒はシェリー樽にも詰める予定だという。

興味深いのは、フロアモルティングを行い、そしてポットスティルの加熱方式にスチーム式ではなく直火焚きを採用するなど、伝統的なつくり方にこだわっている点だ。他のアイラ島の蒸留所で直火焚き方式を採用しているところはなく、スコットランド全体でも数えるほどしかない。伝統的な直火焚きを採用する蒸留所が少なくなったのは、スチーム式に比べコストがかかる上に温度調節が難しく、スティルの寿命が短いというデメリットがあるためだ。

ガートブレックが創業すれば、アイラでは9つ目の稼働蒸留所になる。ウイスキーが飲めるのは早くとも2018年とまだ先の話だが、どんなシングルモルトになるのか今から楽しみだ。

シーバス・ブラザース社ペルノ・リカール社系列)が、バランタイン17年の「シグネチャー・ディスティラリー」シリーズを発表したのが昨年のこと。バランタインは40種類以上の原酒がブレンドされた、スコッチを代表するブレンデッドウイスキー。その中の4種類のキーモルト原酒、グレンバーギスキャパミルトンダフ、そしてグレントハースを、それぞれの蒸留所ごとに特徴を際立たせたのが「シグネチャー・ディスティラリー」シリーズだ。昨年リリースされたのはグレンバーギ・エディション(免税店向け)とスキャパ・エディションの2種類。そして第3弾として、ミルトンダフ・エディションがこのたび発売された。なお残るグレントハース・エディションは来年リリースの予定だという。もちろんいずれも数量限定の商品だ。

ミルトンダフといえばバランタイン、バランタインといえばミルトンダフといってもいいくらい、原酒の中でもミルトンダフはちょっと特別な存在だ。「シグネチャー・ディスティラリー」シリーズの4本の中では、真打といえるだろう。「ミルトンダフというモルトは、バランタイン17年の土台になり、ブレンドにおいてその実力を発揮します。ミルトンダフのキャラクターは、他の原酒の目立ち過ぎる特徴を馴らすのです。シナモンのニュアンスがブレンドに温もりを与え、花の香りが他のモルトのフルーティな甘みのバランスをとります。」と、メーカーは説明している。ブレンドを行ったのは、もちろんマスターブレンダーのサンディ・ヒスロップ氏

なお『ザ・スコッチ -バランタイン17年物語-』(グレアム・ノウン著・1996年)の中で、先代のマスターブレンダー(当時は現役)であるロバート・ヒックス氏は、バランタイン17年におけるミルトンダフの役どころについて次のように述べている。「木の芽のような、かすかに蜂蜜がかった豊かな香りを与えてくれる。(中略)夏の花の香りが匂い立つように強く、全体のトーンを完璧に整えてくれる・・」。すなわちミルトンダフは、個性豊かなモルトたちのまとめ役ということなのだろう。

昨年のスキャパ・エディションは、もともと韓国市場向けに出されたものだったが、バランタインの代理店サントリーが日本にも引いたので飲まれたかたも多いと思う。まずまずの仕上がりで、「Whisky World」誌主催の Whisky World Award 2012 でも、ブレンデッド/ブレンデッドモルト部門で本命と目されていたデュワー・ラトレー・ブレンデッドモルトを押し退け、みごと最優秀賞を獲った。ミルトンダフ・エディションの仕上がりには、自ずと期待が高まる。

このたびバカルディ社は、シングルモルトのグレン・デヴェロンを免税店向けにリニューアルした。ラベルやパッケージのデザインも一新され、「ロイヤル・バラ・コレクション」という新シリーズでの発売となる。グレン・デヴェロンはこれまでは10年が主力商品だったが、新シリーズは16年、20年、30年と長熟にシフトしている。気になるのは価格だが、16年(1,000ml)が40.99ポンド(約6,000円)、30年が150ポンド(約22,000)だという。20年は不明だが、だいたいの想像はつく。

樽のチョイスはもちろん、バカルディ社系列ジョン・デュワーズ&サンズ社のマスターブレンダー、ステファニー・J・マクロード女史だ。彼女は160年の同社の歴史の中では唯一の女性マスターブレンダーで、官能分析と熟成学のエキスパートだという。余談だが今巷で話題のフレーバード・スコッチウイスキー、「デュワーズ・ハイランダーハニー」は彼女が手がけた製品。実はこれ、スコッチとしては初のフレーバードウイスキーなのだが、あのお堅いスコッチウイスキー協会がよく認可したものだ。

閑話休題。グレン・デヴェロンを生産しているのは、マクダフ蒸留所だ。ウイスキー名が蒸留所名でない、数少ないシングルモルトのひとつ。現在バカルディ社が所有している蒸留所は、アバフェルディ、オルトモア、クレイゲラキ、 マクダフ、ロイヤル・ブラックラの5つだが、マクダフとロイヤル・ブラックラはこれまでブレンデッドの原酒供給蒸留所と位置づけられていた。だから今回のグレン・デヴェロン新シリーズのリリースは、ちょっとしたニュースなのだ。

バカルディ社は、もともとシングルモルトの販売には関心が薄く、唯一その気を見せていたのがアバフェルディ。しかしこのアバフェルディも、あくまでもブレンデッドの原酒という位置づけであり、デュワーズブランドの引き立て役に利用されている感は拭えない。オルトモアとクレイゲラキは一応ボトリングはされているものの、本当に売る気があるのか首をかしげたくなるくらい影が薄い。

グレン・デヴェロンといえば、故マイケル・ジャクソン氏がロマンチックな名前だとおっしゃっていたことが思い出される。近年のグレン・デヴェロンは、実はまったく飲んでない。昔のデヴェロンは大変旨かったが、今はどうなんだろうか。もし機会があればぜひ飲んでみたいものだ。

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【プロフィール】
HN:
MUNE
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性別:
男性
自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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