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highlandpark50-11.jpgハイランド・パークの50年が、いよいよベールを脱いだ。リリースの告知は昨年あたりからあったが、満を持しての発売だ。1960年ヴィンテージでアルコール度数は44.8%、アウトターンは275本だという。50年物としては本数が多いが、同ヴィンテージの5樽のリフィルカスクがヴァッティングされているためだ。さて、気になる価格だが、10,500ポンド(約137万円)だという。10月いっぱい、ロンドンの百貨店ハロッズで独占販売を行うらしい。なお、海外からのオーダーは受け付けていない。

highlandpark50-7.jpgボトルデザインは個性的でとても目を引くが、巷では賛否両論あるようだ。帯やロープの流れるようなデザインはオークニーの自然を讃えたもので、「海」や「荒々しい気候」、「時の流れ」といった意味が込められているのだそうだ。金属部分は銀製で、手作業で作られているという。上部の円の中にはハイランド・パークのロゴマークがレイアウトされており、ボトルの裏の同じ位置には聖マグナス大聖堂の正面の丸窓と同じデザインのマークが描かれている。聖マグナス大聖堂はオークニーのメイン島カークウォール、すなわちハイランド・パークと同じ村にある教会で、世界でもっとも北にある教会としても知られる。

デザインを手掛けたのは、ニューヨークを拠点に活躍する若手宝飾デザイナー、メイヴ・ジリーズさん。メイヴ(Maeve)といえば古代のケルト神話に登場する女王と同じ名だが、彼女はエディンバラの出身だという。2004年にメイヴォナ(MaeVona)というオリジナルのブランドを立ち上げ、現在世界各国で事業を展開中だ。彼女のデザインにはいずれもケルティックテイストが感じられ、ケルト模様の好きな当方の琴線をくすぐる。彼女自身、実はハイランド・パークのファンなのだそうで、オークニーにも幼い頃からよく訪れていたとのこと。

オフィシャルサイトには、テイスティングノートが乗っているので転載しておこう。

色:
透明感と、磨かれたマホガニーの輝き。
香り:
複雑で何層にも重なっている。まず、埃っぽい木と古いタバコ袋が現れる。次第に果実とスパイスが強くなっていき、調理した西洋スモモ、レーズン、ナツメグが全体に広がる。
味:
素晴らしいタンニンが感じられ、リッチでスパイシー。そしてワックスのニュアンスのあるマスコバド糖(黒砂糖)が前面に現れる。加水するとオレンジピール、樟脳、そしてクローブ。
フィニッシュ:
長くとてもスパイシー。わずかに煙があとを引く。

ハイランド・パーク50年の記事は、セルジュ・ヴァレンティン氏のサイト、ウイスキーファン(Whiskyfun)にも載っている。期間限定でハロッズでしか販売しないこと、そして輸出しないことについて皮肉たっぷりに書かれてあり、思わず苦笑してしまう。テイスティングノートも添えてあるので、オフィシャルサイトのものと比較するのも面白い。

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supernova2010.jpgアードベッグ・スーパーノヴァのセカンドボトリング、2010年度版が今月の31日にいよいよ発売される。昨年一般販売に先駆けて、コミッティメンバー向けにリリースされたものもカウントすると、2010年度版はサードボトリングという見方もできる。しかしコミッティボトルと通常販売の2009年度版の中身はまったく同じものであるため、スーパーノヴァ2010は事実上セカンドボトリングというわけだ。

さてそのスーパーノヴァ2010だが、アルコール度数は少しアップして60.1%(前回は58.9%)だという。もちろんノンチルフィルタリングで、価格は79.99ポンド。テイスティングノートはオフィシャルサイトほか、先行試飲した方々のブログでも読むことができる。モルト・アドヴォケートのジョン・ハンセル氏のブログにも掲載されたので紹介しようと思う。


とてもダイナミックで、複雑、そして力強い。葉を燻した煙、コールタール、ダークチョコレートチップを散りばめたコーヒーファッジ、燻製のオリーブ、海藻のペッパーサラダ、果実(レモンやライム)、オランダ・ジン、かすかに塩気のある草、そして花の香り(スミレ?)が次々と現れる。昨年リリースされたファーストボトリングのスーパーノヴァと比べると、よく似てはいるがややリッチで、葉を燻した煙と成熟した大麦の風味が一層強く感じられる。また、力まかせな感じが薄れ、より洗練されたような感触もある。今回のボトルの方が、若干ではあるが私は好きだ。

モルト・アドヴォケート誌の評価: 90点


スコアは2009年度版が89点だったので、1点アップしたことになる。前回90点台の点数を与えなかった理由として、「煙たすぎて、繊細な複雑さが覆い隠されてしまったからだ」と述べていたハンセル氏だが、今回はその点が解消されたということなのだろうか。なお、ウイスキーファン(Whiskyfun)のセルジュ・ヴァレンティン氏も、昨年・今年とハンセル氏と同じような採点をしている。ともあれ、スーパーノヴァ2010の試飲はとても楽しみだ。

Abhainn_Dearg.jpgアウターヘブリディーズのルイス島に、アビン・ジャラク(Abhainn Dearg)蒸留所がオープンしたのが2008年のこと。彼らのファーストボトルのオンライン販売が、このたび英国国内で開始された。熟成はまだ3年を経ていないので、中身はもちろんウイスキーとは呼べないニュースピリットだ。価格は38.8ポンド(約5,400円)、500本限定で容量は500ミリリットルだとのこと。オフィシャルサイトで購入できる。頼めば日本まで送ってくれるのかどうか気になるところではあるが、現在問い合わせ中だ。

Abhainn_Dearg2.jpg今月の16日にはグラスゴーにあるマクソーリーズというミュージックバーで、アビン・ジャラク・スピリットの試飲会が開かれた。同蒸留所の創業者でオーナーのマーク・テイバーン氏立会いのもとで行われたとのことで、準オフィシャルな試飲会と考えることもできる。ニュースピリットの詰められた30リットルの小さな樽が店に持ち込まれ、参加者は鏡板に取り付けられた蛇口から直接グラスにそそいでテイスティングしたという。YouTubeにもその様子を収めた動画がアップされている。最初に挨拶をしているのがテイバーン氏だ。親しい人々からはマーク(Merk)ではなくマルコ(Marko)の愛称で呼ばれている。

蒸留所があるのは、ルイス島の西岸に位置するカーニッシュ村。この島の正反対の東岸には、最大の港町であるストーノウェイがある。ストーノウェイでは、かつてショーバーン(Shoeburn, 1829-1840頃)という名の蒸留所が操業していた。ルイス島に蒸留所ができたのそれ以来で、およそ170年ぶりのことだ。ただし、それはライセンスを取得した公認蒸留所の話で、10年くらい前までは密造が普通に行われていたとテイバーン氏はいう。ちょっと驚きだ。

またアビン・ジャラクは、現在スコットランドでもっとも西に位置する蒸留所でもある。2005年に、ブルイックラディに代わってもっとも西に位置する蒸留所となったのはキルホーマンだったが、わずか4年でその座をアビン・ジャラクに譲った。ちなみに、バラ島にアイル・オブ・バラ蒸留所(残念ながら計画が頓挫している可能性が高い)がもし完成したら、最西端の蒸留所はまた替わることになる。

それにしてもマイクロディスティラリーとはいえ、着実に準備をすすめしっかりと創業までこぎつけたアビン・ジャラクは立派だ。いや褒められるべきは、テイバーン氏か。単純な比較はできないが、派手に宣伝し多くの資金をかき集めておきながら長期にわたって足踏みしているブラックウッドレディバンクなどとは、まるで正反対の印象を受ける。どんな素晴らしい計画でも、絵に描いた餅で終わっては何の意味もない。

mortlach70yo.jpgとうとう出たかという感じだが、70年物のウイスキーが今月の11日にリリースされた。モートラックのシングルモルトで、発売したのはG&M(ゴードン&マクファイル)社だ。同社が1938年ヴィンテージの樽をまだ持っているという話は以前からあったので大きな驚きはないが、“70年”というウイスキーにそぐわない数字に対してはある種の感慨をおぼえる。GM社はかつてモートラックの60年物も発売しているが、40%に加水してボトリングされていた。しかし今回はカスクストレングスの46.1%で詰められており、この違いは大きい。

なお60年物のウイスキーなら、数は少ないがこれまでにいくつかボトリングされている。いずれもシングルモルトだが、例えばマッカラン60年(1926年蒸留, 42.6%)、ベン・ネヴィス63年(1926年蒸留, ?%)、ロイヤル・ブラクラ(1924年蒸留, 40%)等だ。しかし「70 year old」とラベルに表記されたウイスキーは今だかつてない。

GM社のオフィシャルサイトにはテイスティングノートが載っているので転載しておく。恐らく発表会に招かれたウイスキー専門家のチャールズ・マクリーン氏のテイスティングだと思われる。

色:
太陽の光で漂白された光沢のあるマホガニー。
香り:
柔らかなアロマ。ろうそくと果実がすぐに現れる。初めはただのロウソクだが、火が消されて一筋の煙が立ち上るロウソクに変化。マデイラケーキに埋まっているマラスキーノチェリーと、しばらくしてオレンジを思わせる新鮮でジューシーなシトラス系の香り、その後アプリコットジャムが前面に。薄く削ったアーモンドと花の香りも現れ、軽いココナッツオイルに変化していく。
味:
驚くほど元気がよく、味わいがはっきりとしている。スムースで滑らかな口当たり。最初は甘みが感じられるが、その後ややドライなテイストに変化。しかし、渋みはそれほど強くない。ドライイチジクとタバコのニュアンス、そして興味をそそるほのかな煙。余韻には、かんなで削られた硬材(広葉樹)のニュアンスが感じられ、長く後を引く。ティースプーン1杯の水を加えると、テクスチャーはさらにスムースに。新鮮でほのかな甘みは、梅のような心地いい酸味に変化し、すすのような煙がフィニッシュを締めくくる。
コメント:
すばらしい! くたびれた樽や、もろみ、だぼ栓に被せる布のニュアンスはまったくなく、繊細で新鮮、いきいきとしていてフルーティなウイスキー。独特なワックスと煙の風味は今日ではあまり見かけないが、1960年代以前のウイスキーにはよく見られた特徴だ。

このモートラック70年だが、GM社が今回新たに作った「ジェネレーションズ」と名付けられたシリーズの第1弾ボトルだという。発表会は、エディンバラ城で賑々しく行われたとのこと。価格は10,000ポンド(約135万円)で54本限定だ。決して安い値段ではないが、まあ妥当な金額ではないだろうか。なお、200ミリリットルの小型ボトルも、2,500ポンドで162本販売することになっている。

※エディンバラ城での発表会の動画を、YouTubeで見つけたのでアップしました(5/23)

70f3fbb9.jpeg毎年1月25日には、スコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズの生誕を祝う「バーンズ・サパー」が、至るところで開かれる。今年は、ちょうど250周年なのだそうだ。

スコッチ業界も例年以上の賑わいを見せているが、その中でエドリントン・グループが記念ボトルとしてフェイマス・グラウスの37年物(バーンズは37歳の若さで死去している)を250本限定でリリースした。ちなみにこのフェイマス・グラウス、中身はブレンデッド・モルトだそうで、マスター・ブレンダーのジョン・ラムゼイ氏が1971年の最初に蒸留された原酒を厳選してヴァッティングしたものだとのこと。

john_byrne.jpgラベルにも手がかかっている。スコットランドの芸術家で劇作家としても知られる、ジョン・バーン氏の描いたロバート・バーンズの肖像画がプリントされているのだ。バーン氏はビートルズのレコードジャケットのイラストなども手がけたことがあり、本国での知名度はとても高い人物。

ただしこのボトルは、チャリティ・オークション専用の商品だという。そこで落札しなくては、実は入手できないのだ。順を追って説明すると、このフェイマス・グラウス37年を入手するためには、まずロバート・バーンズの生誕を祝うイベントを開催しなくてはならない。これは特に形式は問われず、プライベートなものでも問題ないとのこと。そしてそこで何らかのチャリティ・オークションを開く必要があり、それらの内容はwww.burnssupper2009.comにあらかじめ登録しておかなくてはならない。現時点で1,500ものイベントが世界中から登録されているという。なお競り値は、400ポンドからスタートせよとのことだ。

イベントの形式や、入札者の資格は確かに問われていない。しかし、手段と目的が逆転している後付けの慈善活動に、後ろめたさを感じないという図太さは要求されるようだ。登録はまだ間に合うので、その点に自信のある向きはぜひトライされたい。

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【プロフィール】
HN:
MUNE
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性別:
男性
自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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