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Annandale01.jpg1920年に閉鎖されたアナンデール蒸留所を、復活させる計画が進んでいるという記事を昨年の6月に書いた。その後の進捗についてはなかなか情報がつかめずにいたのだが、ようやく続報が届いた。どうやら計画はスケジュールどおりには進んでおらず、今年の夏か秋には創業の予定だったのだが1年半ほど遅れるらしい。

そもそも同蒸留所の再建への道は、スタートから平坦ではなかった。地元ダンフリーズ&ガロウェイの行政機関に提出した事業計画書に対し、スコットランド環境保護庁(SEPA)と道路管理の管轄部門から計画不備への懸念が伝えられたのだが、それに首尾よく対応できなかったことが最初のつまずきだった。計画書が出されたのは2009年の始めだが、4月に差し戻し。同年12月に再提出し、ようやく承認されたのは翌2010年の5月だった。そしてこの度、ようやく着工できた次第だ。

オーナーのデイヴィッド・トムソン氏は、蒸留所のオープンまでは1年半かかると話す。となると創業は2013年の始め頃だろうか。2014年にはニュースピリッツのお披露目をする予定らしいが、それ以降は8年間熟成する2020年まで一切ボトルのリリースはしないそうだ。

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Kilchoman100.jpg今月の16日に“100%アイラ”のシングルモルトウイスキーが、キルホーマン蒸留所からリリースされた。100%アイラとは、すなわち原料の大麦栽培、製麦、蒸留、熟成、ボトリングのすべてをアイラ島で行ったということ。同蒸留所は創業時「100%アイラ」を目標として掲げ、一昨年には同コンセプトのニュースピリッツも発売しているので大きな驚きはないが、いよいよ出たかというのが正直な感想でもある。

100%アイラといえばブルイックラディでも同じような製品を出しているが、彼らは製麦を外部(インヴァネスのベアーズモルト社)に委ねているので正確には100%アイラとはいえない。なので今回のキルホーマンの製品には、それなりの意味がある。

この100%アイラのキルホーマンだが、加水されたアルコール度数50%のものと、カスクストレングスで詰められた蒸留所限定販売ボトルの2種類がリリースされている。公表されているそれぞれのスペックは、以下の通り。

Edition Alc. Outturn Price Description
Normal edition 50.0% 11,300 £69.00 Combination
of fresh and refil bourbon barrels
for over 3 years
Special edition 61.3% 1,060 £149.00 Presented in a hand crafted
american white oak
presentation box,
available from the distillery only

bowmore6636.jpg先日、神保町の“Bar1969”でオールドボトルのボウモア、Cask No.6636 for SANDRO MONTANARI のテイスティングをさせていただいた。このボトルは、イタリアの伝説的なウイスキーコレクターであり、バーマンでもあった故エドアルド・ジャコーネ氏(1928-96)のいわゆるジャコーネ・ボウモアとは樽違いのもの。

サンドロ・モンタナリ氏もイタリアでは著名なウイスキー収集家であり、イタリア人コレクターの「ビッグファイブ」に数えられる。ちなみにあとの4人は、ジュゼッペ・ベニョーニ氏ミルコ・カサーリ氏ジョルジオ・ダンブロシオ氏、そしてコレクターたちのバイブル「THE BEST COLLECTION OF MALT SCOTCH WHISKY」を、かつて出版したこともあるヴァレンティノ・ザガッティ氏といった面々。

ジャコーネ・ボウモアは、彼の経営していたサロンバー「ウイスキーテカ (Whiskyteca, イタリア語でウイスキーコレクションやウイスキー展示館といった意味)」の20周年を記念して詰められたもので、樽ナンバーはと6634と6635とがある。1969年蒸留、1978ボトリングの若いボウモアだ。私は6634の方しか飲んだことがないが、フレッシュなグレープフルーツの風味が特徴的で、9年しか寝かせてないとは思えないほど熟成香が立っている。

今回いただいたモンタナリ・ボウモアも樽番号以外のスペックは同じで、仕上がりもジャコーネ・ボウモアに準ずる素晴らしいものだ。グレープフルーツと潮風が心地いいハーモニーを奏で、レモンキャンディのような甘酸っぱいフレーバーがたまらない。ボトリングされてから、20年以上経っているとは思えないほどコンディションもいい。わずかなひねは感じられるが、オールドボトルらしさが感じられ、私は好きだ。なおテイスティングノートは、当日同席させていただいたI氏のブログにも載っている。

なお神保町の“Bar1969”は会員制のバーだが、非会員でも入店OKだと店主はおっしゃる。もしご興味があれば案内させていただくので、お気軽にメールmixiメッセにてお知らせいただけたらと思う。

以下は同系統ボウモアの、ウェブで拾えた資料だ。テキストのみの資料もあり、実物と照らし合わせたわけでもないので間違っている箇所があるかもしれないが、参考にしてもらえたら嬉しい。

Cask No. Distilled Bottled Alc. Cask Label
color
Description
222 1968 1977 59.7
%
Sherry Cream Crested top
Limited edition of 280 bottles
Red cap
6634 1969 1978 58
%
Sherry Grey Special bottling
for the 20th anniversary
of Edoardo Giaccone's
whiskyteca at Salo
Limited edition of 300 bottles
6635 1969 1978 58
%
Sherry Grey Special bottling
for the 20th anniversary
of Edoardo Giaccone's
whiskyteca at Salo
Limited edition of 300 bottles
6636 1969 1978 58
%
Sherry Cream Bottled for Sandro Montanari
Bologna
Cream Bottled for Garbi Giancarlo
Cream Special bottling
for the 15th anniversary
of Monica Brothers
Parma
Cream Bottled for Bar Eden
Imola
Cream Bottled for Papa Noe
6638 1969 1978 58
%
Sherry Cream Bottled for Luigi Veronelli
Cream No name limited edition
of 300 bottles (?)
6639 1969 1978 58
%
Sherry Cream No name limited edition

追記:
テイスター山岡氏の5月9日付けのブログにも、テイスティングノートが掲載されている。


ニュージーランドや日本などでの災害の影響もあるのだろう、今年のエイプリルフールは、世界的に見てもおしなべて静かに過ぎ去ったように思う。私も今回は、昨年のような四月馬鹿なウイスキー記事を紹介する気は起きなかったのだが、マスター・オブ・モルトの記事がちょっとした力作だったので、これだけでも紹介しよう。



1906年に蒸留された、105年もののウイスキー見つかる!」
A 105 Year Old Whisky, distilled in 1906

aislatorten105hrs.jpgおよそ8か月前、アバディーン在住の歴史家アリー・シセル氏は、17世紀に建てられたという古い自宅を修繕する準備として地下室を片付けていた。すると部屋の奥で、山と積まれた家財や調度品のものかげに、埃まみれの古びた樽があるのに気づいたという。中を調べてみたところ、アルコールが入っていることがわかった。鏡板には“AISLA T'ORTEN 1906”と書かれてある。そこで彼はマスター・オブ・モルトに、何やら珍しそうな樽を自宅で見つけたのだが・・・と、メールで問い合わせた。

そのメールの内容は常識とはあまりにかけ離れたものであったため、マスター・オブ・モルトのメンバーは最初は信じられなかったという。しかしよく調べてみると、アイラ・トテンという蒸留所がかつて西ハイランドに実在し、しかもそのウイスキーは一度もボトリングされていないことが判明した。そこで彼らはシセル氏に連絡を取り、サンプルを送ってくれるよう頼んだ。取り寄せたサンプルを分析した結果、どうやら本物の古いウイスキーであることがわかったという。

資料によれば、蒸留所を建築したのはアセニアス・シモンヴェントという人物。彼は長年務めていた税吏の仕事をを辞め、アハラクル(西ハイランドの観光都市フォート・ウィリアムより、さらに40キロメートルほど西に位置する村)を流れるシール川(今日ではサーモン釣りの名所として知られる)のほとりに蒸留所を建てることを決意する。その創業資金を捻出するため、地元の小さな複合事業に全財産を投資したという。1904年の始めには首尾よく着工にこぎ着け、1906年2月に蒸留所は完成。石造りの建物の内部には2基のポットスティルが設置され、その上部には異様に背の高いラインアームと精留器が取り付けてあった。仕込み水はシール川から引き、生産能力は年間およそ50,000リットルが見込まれたという。

aislatorten105hr3s.jpg2月17日に操業を開始し、最初の蒸留が行われた。ニューポットが詰められた、記念すべき一つ目の樽がウェアハウスに運ばれた後、悲劇は起きた。蒸留所が出火し、人命は失われなかったもののほとんどの建物と設備は消失したという。幸いだったのは、少し離れた場所にあったウェアハウスだけが、かろうじて被災を免れたこと。アセニアス・シモンヴェントはその3年後、失意の中78歳で世を去ったという。かくしてアイラ・トテンは、わずか1日だけ存在した蒸留所となった。

アリー・シセル氏から届いたサンプルの分析を終えたマスター・オブ・モルトのメンバーは、ウイスキーと樽のさらなる調査を行うため、程なくしてシセル氏の自宅を訪ねた。慎重に精査した結果、本物であるとの確信を得た彼らは、シセル氏に樽を購入したい旨を申し出たという。彼は快諾してくれた。

素晴らしい地下室環境の恩恵にあずかり、樽の保存状態はまさに奇跡に近い。経年変化による木材の痛みは随所に見られるものの、外観の損傷はほとんど見当たらないという。樽の種類はシェリーバットで、びっしりと木目の詰まった上質なオーク材が使われている。

樽からウイスキーを払い出すと、容量は762ミリリットルしかなかった。うち700ミリリットルはフルボトルに詰め、12ミリリットルをテイスティング用として取り分け、残りの50ミリリットルは後世のために、一部の関係者だけしか知らない場所に秘蔵した。

ボトリングしたこのアイラ・トテンを販売するべきかどうかについては、社内で激しく議論されたという。論議を尽くし、最終的には販売することを決定した。このウイスキーは、史上もっとも高価な蒸留酒になるだろう。

Distilled
Bottled
Age
Alc.
Outturn
Cask Type
Cask Size
Price
17th February 1906
8th March 2011
105 yo
40.7%
1
Sherry
Butt
£870,000


といった感じだ。ソースサイトにはテイスティングノートもしっかりと載せてあり、満腹感はかなりある。87万ポンドと言われてもぴんとこないかもしれないが、およそ1億2000万円だ。

確かによく練られた記事ではあるが、細部の詰めの甘さが若干目につく。ポットスティルの説明では、原文では「rectifier」と書かれてあるが、これは「purifier」とすべきだろう。どちらも和訳は精留器だが、構造的には異質なものだ。レクティファイヤーは連続式蒸留器の精留塔か、もしくはポットスティルならローモンドスティルについてるあの円筒状の装置を指す。ハイラム・ウォーカー社がローモンドスティルを開発したのは20世紀の半ばであり、1906年にはまだ存在しない。

それとボトルの画像だが、100年以上シェリーバットに寝かせたにしてはウイスキーの暗赤色度が乏しく、透明感があってきらきらし過ぎている点でリアリティを欠いている(特にネック部分)。ちなみに、私がイメージするアイラ・トテン105年は、こんな感じだ。また樽の保存環境がよくても、半世紀程度の熟成で度数が40%を切ってしまうケースがあるという事実を踏まえれば、105年ものが40.7%というのはやはり不自然だと言わざるを得ない。

glenlivet70yo.jpg先日リリースされたばかりのグレンリヴェット70年が、東日本大震災のチャリティボトルとしてオークションに出品されるという。

ゴードン&マクファイル社は、新シリーズ「ジェネレーション」の第2弾として、グレンリヴェットの70年を今月8日に発表した。1940年蒸留のシェリーバット1樽からカスクストレングスでボトリングされたもので、アルコール度数は45.9%。フルボトルは100本の限定販売で、価格は13,000ポンドだという。なお200ミリリットルの小瓶も同時にリリースされ、こちらは175本限定で3,200ポンドだ。

オークションにかけられるのは、フルボトルの通しナンバー1番「001/100」だ。実はグレンリヴェット70年の話題は、スコッチ文化研究所が発行する「ウイスキー通信」に連載中のコラム「ニュースなウイスキー」の次号で取り上げたのだが、チャリティオークションのニュースが届いたのは原稿の締め切りの後だった。そのため、この場で補足しておこうと思う。

1940_cask.jpgゴードン&マクファイル社の共同最高責任者、マイケル・アーカート氏は言う。「弊社は30年以上にわたり、日本と取り引きをさせていただいてます。私たちにとって重要なことは、日本の被災者の方々を支援すること、そして救援資金を募ることです。今回のような悲劇に直面したとき、人は何か行動を起こさなくてはと考えるのですが、私たちはみな無力だと感じてしまうものです。人々が広い心で、呼びかけに応じてくださることを願っています。」

スコットランド・ボナムズオークションの最高経営責任者、ミランダ・グラント氏は幼少のころ日本に住んでいたことがあるという。「瓦礫の山や命を落とした人々を目にしてショックを受けた方々の助けになれれば、私たちは本当に喜ばしく思います。そして、多くの義援金が集まるよう切望しています。」と、グラント氏はコメントしている。

オークションは、今月29日の19時(現地時間)から開催の予定。落札価格は、13,000~15,000ポンドと予想されている。私の生涯の友であるスコッチウイスキーが、被災者の救済と被災地の復興に一役買ってくれるのは本当に嬉しい。

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【プロフィール】
HN:
MUNE
HP:
性別:
男性
自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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