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サントリーがスコットランドに、来年にも新しい蒸留所を建造するという。同社が所有するオーヘントッシャンとボウモアを、組み合わせたような蒸留所になるらしい。その名もオーヘンボウイ(Auchentoshan + Bowmore = Auchenbowie)という冗談のような名前だが、同名のがスターリングシャーにある。この地に建設されるのであれば、新蒸留所のモルトは南ハイランド産ということになる。

このスクープ記事が掲載されたのは、セルジュ・ヴァレンティン氏のサイト、ウイスキーファン(Whiskyfun)。ボウモア蒸留所の、アンガス・マクレルド氏のインタビューをYouTubeで視聴できる。マクレルド氏は新蒸留所のマネージャーに就く予定だという。

※この件の真偽についてサントリー広報部に問い合わせたところ、「事実ではない」という回答を得た。(6/4 23:17)

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StuartRobertson.jpgインディペンデントボトラーのダンカン・テイラー社が、ハントリーという新蒸留所の創業を計画してから何年か経つ。最初にその話を聞いたのは2007年頃だったか。その後大きなニュースはなかったが、同社オフィシャルブログの20日付けのエントリーに、人事に関する最新情報が載った。スプリングバンク蒸留所を退職したスチュアート・ロバートソン氏が、新蒸留所の開発部門責任者としてとし就任することになったという。ロバートソン氏はディアジオ社でマネージメントの経験を積み、その後スプリングバンクで管理責任者を務めたベテランだ。なおスプリングバンク蒸留所のマネージャーのポストは、ギャヴィン・マクラクラン氏が引き継いでいる。

tokyo_eandco2_b.jpgダンカン・テイラー社は、ビジネスマンのアベ・ロッセンベルグ氏がチャーリー・グットマン氏とともに、1938年にアメリカ合衆国で設立したボトリングメーカーだ。1960年代の初頭から、スコットランド全域の数多くの蒸留所のニューフィリングの樽を購入し、これらの古酒は「ピアレス」や「レアレスト・オブ・ザ・レア」といったシリーズで現在リリースされている。1994年にロッセンベルグ氏が85歳で死去。その後、ダンカン・テイラー社は一時的に慈善団体の監督下に置かれるが、2000年にユアン・シャンド氏はアラン・ゴードン氏と共同でダンカン・テイラー社を買収し、現在に至っている。なお同社は樽の総保有数ではいわゆるビッグ4には及ばないものの、古酒、特に1960年代ヴィンテージ樽の保有数ではインディペンデントボトラーとしてはナンバーワンだそうである。

huntly.jpg新蒸留所ができると、ハントリーという名の蒸留所は歴史上3つ目ということになる。過去にもハントリーという名の蒸留所は、2つほどあったのだ。1つ目は1798年にアバディーンシャーで創業したが、翌年に閉鎖している。創業者名は記録に残っていない。2つ目はアバディーンシャーのブリッジ・オブ・ボギーでハントリー・ディスティラリー社によって創業された。1824年に操業を始めたが、同年に操業停止。1832年、ジョン・ロバートソン社が新しいオーナーとなり操業を再開するが、1860年に休業。1867年頃までに閉鎖されたといわれている。なお同蒸留所には別名があり、ピリーズ・ミル(Pirries Mill もしくは Peiries Mill)とも呼ばれていた。

ハントリー蒸留所の最大の特徴は、地球に優しいエコな蒸留所であることだ。スコットランドでは初となる、完全なカーボンニュートラル蒸留所なのだという。近くにあるグレンドロナック蒸留所も、二酸化炭素を回収するウォッシュバックを導入し環境に配慮した操業を行っているが、ハントリーはその考え方を更に推し進めている。カーボンニュートラルというのは、燃料にバイオマス(石油や石炭の代替エネルギーとして使われる植物のこと)を使用し、大気中の二酸化炭素を増やさないという考え方だ。植物由来の原料の場合、燃やして二酸化炭素を放出しても、その二酸化炭素中の炭素は元来植物が光合成によって大気中から取り込んだものなので、大気の二酸化炭素濃度は常に一定に保たれるわけである。このようなサイクルは炭素循環と呼ばれるが、石油や石炭に含まれる炭素は地中に埋没し自然界で循環していない炭素なので、これらを燃やすことはすなわち大気中の二酸化炭素の濃度を上げることになるのだ。

またこの蒸留所のユニークな点は、モルトウイスキーばかりでなくシングルグレーン、さらにはジンやウォッカまで生産する予定であること。ホワイトスピリッツにまで手を広げるのであれば、ダンカン・テイラーらしさがある面白い製品を期待したいものだ。シェットランド諸島のブラックウッド蒸留所が、かつて造っていたジンのように。もちろんハントリーのシングルモルトは、それ以上に楽しみである。

aberfeldy001.jpgあまり話題にならなかったが、昨年末のエディンバラ国際空港の免税店の売り場リニューアルを記念し、アバフェルディのカスクストレングスのオフィシャルボトルが免税店限定販売でリリースされた。このアバフェルディだが、1997年ヴィンテージの18年物で、なんとシングルカスクである。248本限定(実際には260本分とれたらしい)で、価格は250ポンドだ。免税店限定の商品ではあるが、オンラインショップでプレオーダーすることも可能だ。このアバフェルディのような限定品は、プレオーダーしておけば完売を憂えることなく現地に赴ける。

この度のアバフェルディ・シングルカスクのリリースは、バカルディ社とバカルディ・グローバル・トラベル・リテール・ディヴィジョン社、そしてワールド・デューティ・フリー社の3社共同で実現したものだ。樽のチョイスはデュワーズのマスターブレンダー、ステファニー・マクロード女史、ワールド・デューティ・フリーのマーク・リッチーズ氏とニゲル・サンドルズ氏の3名が行い、販売はバカルディ・グローバル・トラベル・リテール・ディヴィジョン社がイニシアチブをとった。

ステファニー・J・マクロードさんは、ブレンデッドの名門デュワーズの7代目のマスターブレンダー。同社の160年の歴史の中では唯一の女性マスターブレンダーで、官能分析と熟成学のエキスパートだそうだ。

バカルディ・グローバル・トラベル・リテール・ディヴィジョン社は、ヨーロッパ旅行者を支援することを目的に、バカルディ社から独立した法人として2006年に設立された組織。ワールド・デューティ・フリーは英国内の8つ国際空港(ヒースロー、ガトウィック、スタンステッド、シティ、バーミンガム、マンチェスター、グラスゴー、エディンバラ)を主軸に免税店事業を管理運営する組織で、BAA(英国空港公団)が100%出資する子会社だ。

現在、アバフェルディのオフィシャルボトルのラインナップは12年と21年のみで、いずれもアルコール度数は40%だ。加水されてなお46%というボトルも増えている昨今、このラインナップは、シングルモルトファンにとってはあまりに物足りない。今回のシングルカスクのリリースは、単発とはいえ嬉しいニュースだが、あまりシングルモルトの販売に積極的でないバカルディ社のこれまでの動向を考えるなら、このようなボトルのリリースはこれっきりという可能性はある。

※内容に一部誤りがありましたので、加筆訂正いたしました。(4/26 21:50)

supernova.jpgウルトラ・ピーテッドなアードベッグ、『スーパーノヴァ』が先月の20日にコミッティー会員向けにリリースされた。ブルイックラディオクトモア(フェノール値は公称131ppm)に触発されたのかどうかはわからないが、スーパーノヴァのフェノール値は100ppm以上だという。まあ計り方次第では数値はどうとでも出せるそうなので、その辺りを競うのは不毛な気もするのだが、へヴィピーテッドモルトを造る老舗としてのプライドからなのだろうか。なお、残念ながらコミッティ向けのスーパーノヴァは、すでに完売している。しかし5月末には、一般向けにリリースされる予定だという。

そのスーパーノヴァのテイスティング・ノートが、モルト・アドヴォケートのジョン・ハンセル氏のブログに掲載されたので紹介しようと思う。以下はその訳文だ。


他の若いアードベッグと比較すると、より風味豊かで、より密度が高く、そしてよりスモーキーだ。力強さに満ちてはいるが繊細なキャラクターをも備えており、かすかな潮っぽさと海藻、より顕著な土っぽさ、タール、すす、エスプレッソ、タバコ、草、そしてチョコレートファッジといったアロマが感じられる。またそれらの風味は、舌でも感じ取ることができる。口に含むと、‘通常よりやや元気な’カスクストレングス(例えばルネッサンスとか)といった感じで風味が立ち始める。だが、もしあなたが圧倒的なピートやタール、そして煙の風味にノックアウトされたいと考えているなら、最初はちょっと拍子抜けするかもしれない。しかし、徐々にピートの香りが支配的になっていき、まるで溶岩のように最高潮に達し、スーパーノヴァが普通のアードベッグでないことが分かる。フィニッシュの余韻は太く温かく、いつまでも長く続く。また、奥の方に隠れてしまっているために感じとりにくい大麦の熟成感やバニラの甘さが、アードベッグというウイスキーの好ましい特徴、すなわちタールや熱、そしてスモークといった要素とうまくバランスを保っている。

スーパーノヴァのテイスティングは面白くて仕方がなく、思わず目を見はるような体験だ。比較的若いウイスキーであるにもかかわらず、熟成がうまくいっている。ただし、シェリーやオークの風味がちょっと強すぎるウイスキーと同じように、強烈過ぎるピートの香りは、ライトピーテッドのアードベッグに見られるような、好ましい繊細な複雑さを覆い隠してしまいがちだ。その点が、私がこのウイスキーに90点台のスコアを与えなかった唯一の理由である。だが、スモーキーなウイスキーに目のないマニアには、ぜひ一度はトライして欲しいウイスキーだ。

モルト・アドヴォケート誌の評価: 89点


2004年にリリースされたライトピーテッドのアードベッグ、キルダルトンは個人的には高く評価した。煙という鎧がはずされて表れた、「繊細な複雑さ」に美味しさを見出せたからだ。だからハンセル氏の言いたいことはよく分かる。しかし現行品のアードベッグには、「繊細な複雑さ」を求めるのはちょっと酷かもしれない。40度に加水されているとは言え、ブラスダがそれをよく表している。スーパーノヴァは、価格から考えても若いアードベッグであることは間違いない。スモーキー過ぎるから減点したという話は、このウイスキーに限って言えばちょっと的外れな気もする。

rosebank2.jpg昨年の9月22日に、ローズバンク蒸留所が復活か?という記事を書いたが、先週何ともがっかりさせるニュースが流れてきた。スコットランド中央警察によれば、総額数十万ポンド相当の銅製・鉄製の蒸留器機が、キャメロンのローズバンク蒸留所から盗まれたという。犯行は、12月25日から1月20日までの間に行なわれた可能性が高いとのこと。中古器機の再販価値は低いのだが、それにも関わらず盗まれたのは、恐らくスクラップ市場で売ることが目的だろうというのが警察の見解だ。

ファルカーク警察犯罪捜査部のヒュー・ルーデン刑事は、次のように話している。「犯人は周到な準備をした上で建物へ侵入し、数週間にわたって蒸留器機を取り外したようです。蒸留器機がスクラップとして売買される可能性はあります。過去4週間にわたって蒸留所地域の内外で車両か人物を見かけなかったか、あるいは事件に関すると思われる情報ならどんなに些細なものであっても、警察に通報してくれるように皆さんに呼びかけていくつもりです。」

もし蒸留器等が戻って来なければ、ローズバンクの血を引くファルカーク蒸留所の誕生はなくなる。また、何らかの経緯を経て新蒸留所が創業できたとしても、それはローズバンクとは無関係の蒸留所ということになってしまう。何とも残念な話だ。

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【プロフィール】
HN:
MUNE
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性別:
男性
自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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