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harris01.jpgアウターヘブリディーズ諸島のハリス島に、蒸留所ができるという噂が流れたのが今年の3月頃だった。その後関連の情報はほとんどなかったのだが、半年ぶりに続報が届いた。ハリス島の蒸留所計画については、半ばで頓挫したブラックウッドアイル・オブ・バラと同じパターンかもと、正直なところ特に気に留めていなかったのだが、ルイス島(ハリス島とは陸続きで1つの島になっている。北側をルイス島、南側をハリス島と呼ぶ)のアビン・ジャラクが軌道に乗りつつあることを考えると、今追い風は吹いているのかもしれない。

アイル・オブ・ハリス蒸留所の創業を計画しているのは、イングランド・オクスフォードに住むアメリカ国籍のビジネスマン、アンダーソン・ベイクウェル氏。「蒸留所をオープンさせる目的は、まず地元の雇用を創出することです。原材料には地元農家の栽培した大麦を使い、通や鑑定家に高く評価される美味しいウイスキーを造りたいですね。一部の大手蒸留所のように、熟成やボトリングは船で運んでメインランドでというやり方はしたくありません。それらをハリス島で行えば、さらに雇用は増やせるわけですからね。」とベイクウェル氏は話す。

建設予定地は、フェリーのターミナルもある島の中心地ターバート。目標とする年間生産量は90,000リットルだそうで、エドラダワーグレン・スコシアど同じくらいの規模だ。個人経営としてはまずまずの大きさだろう。ちなみにアビン・ジャラクは、20,000~30,000リットルなので、その違いは歴然だ。また仕込みなどに使う水は、東ターバート川が流れ込む、現在使われていない2つの貯水池から引く予定だという。気になるのはポットスティルだが、外国人であるベイクウェル氏はアビン・ジャラクのように伝統的な密造スティルを模倣することには、こだわらない可能性もある。

今後のスケジュールだが、2012年中には着工し2015年にオープンする予定だという。アビン・ジャラクのマーク・テイバーン氏は、蒸留所が完成するまでの苦労について「本当に苦難の連続だった。」と語っている。アンダーソン・ベイクウェル氏も、どうか最後まで諦めずに頑張ってほしい。

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Annandale01.jpg1920年に閉鎖されたアナンデール蒸留所を、復活させる計画が進んでいるという記事を昨年の6月に書いた。その後の進捗についてはなかなか情報がつかめずにいたのだが、ようやく続報が届いた。どうやら計画はスケジュールどおりには進んでおらず、今年の夏か秋には創業の予定だったのだが1年半ほど遅れるらしい。

そもそも同蒸留所の再建への道は、スタートから平坦ではなかった。地元ダンフリーズ&ガロウェイの行政機関に提出した事業計画書に対し、スコットランド環境保護庁(SEPA)と道路管理の管轄部門から計画不備への懸念が伝えられたのだが、それに首尾よく対応できなかったことが最初のつまずきだった。計画書が出されたのは2009年の始めだが、4月に差し戻し。同年12月に再提出し、ようやく承認されたのは翌2010年の5月だった。そしてこの度、ようやく着工できた次第だ。

オーナーのデイヴィッド・トムソン氏は、蒸留所のオープンまでは1年半かかると話す。となると創業は2013年の始め頃だろうか。2014年にはニュースピリッツのお披露目をする予定らしいが、それ以降は8年間熟成する2020年まで一切ボトルのリリースはしないそうだ。

ニュージーランドや日本などでの災害の影響もあるのだろう、今年のエイプリルフールは、世界的に見てもおしなべて静かに過ぎ去ったように思う。私も今回は、昨年のような四月馬鹿なウイスキー記事を紹介する気は起きなかったのだが、マスター・オブ・モルトの記事がちょっとした力作だったので、これだけでも紹介しよう。



1906年に蒸留された、105年もののウイスキー見つかる!」
A 105 Year Old Whisky, distilled in 1906

aislatorten105hrs.jpgおよそ8か月前、アバディーン在住の歴史家アリー・シセル氏は、17世紀に建てられたという古い自宅を修繕する準備として地下室を片付けていた。すると部屋の奥で、山と積まれた家財や調度品のものかげに、埃まみれの古びた樽があるのに気づいたという。中を調べてみたところ、アルコールが入っていることがわかった。鏡板には“AISLA T'ORTEN 1906”と書かれてある。そこで彼はマスター・オブ・モルトに、何やら珍しそうな樽を自宅で見つけたのだが・・・と、メールで問い合わせた。

そのメールの内容は常識とはあまりにかけ離れたものであったため、マスター・オブ・モルトのメンバーは最初は信じられなかったという。しかしよく調べてみると、アイラ・トテンという蒸留所がかつて西ハイランドに実在し、しかもそのウイスキーは一度もボトリングされていないことが判明した。そこで彼らはシセル氏に連絡を取り、サンプルを送ってくれるよう頼んだ。取り寄せたサンプルを分析した結果、どうやら本物の古いウイスキーであることがわかったという。

資料によれば、蒸留所を建築したのはアセニアス・シモンヴェントという人物。彼は長年務めていた税吏の仕事をを辞め、アハラクル(西ハイランドの観光都市フォート・ウィリアムより、さらに40キロメートルほど西に位置する村)を流れるシール川(今日ではサーモン釣りの名所として知られる)のほとりに蒸留所を建てることを決意する。その創業資金を捻出するため、地元の小さな複合事業に全財産を投資したという。1904年の始めには首尾よく着工にこぎ着け、1906年2月に蒸留所は完成。石造りの建物の内部には2基のポットスティルが設置され、その上部には異様に背の高いラインアームと精留器が取り付けてあった。仕込み水はシール川から引き、生産能力は年間およそ50,000リットルが見込まれたという。

aislatorten105hr3s.jpg2月17日に操業を開始し、最初の蒸留が行われた。ニューポットが詰められた、記念すべき一つ目の樽がウェアハウスに運ばれた後、悲劇は起きた。蒸留所が出火し、人命は失われなかったもののほとんどの建物と設備は消失したという。幸いだったのは、少し離れた場所にあったウェアハウスだけが、かろうじて被災を免れたこと。アセニアス・シモンヴェントはその3年後、失意の中78歳で世を去ったという。かくしてアイラ・トテンは、わずか1日だけ存在した蒸留所となった。

アリー・シセル氏から届いたサンプルの分析を終えたマスター・オブ・モルトのメンバーは、ウイスキーと樽のさらなる調査を行うため、程なくしてシセル氏の自宅を訪ねた。慎重に精査した結果、本物であるとの確信を得た彼らは、シセル氏に樽を購入したい旨を申し出たという。彼は快諾してくれた。

素晴らしい地下室環境の恩恵にあずかり、樽の保存状態はまさに奇跡に近い。経年変化による木材の痛みは随所に見られるものの、外観の損傷はほとんど見当たらないという。樽の種類はシェリーバットで、びっしりと木目の詰まった上質なオーク材が使われている。

樽からウイスキーを払い出すと、容量は762ミリリットルしかなかった。うち700ミリリットルはフルボトルに詰め、12ミリリットルをテイスティング用として取り分け、残りの50ミリリットルは後世のために、一部の関係者だけしか知らない場所に秘蔵した。

ボトリングしたこのアイラ・トテンを販売するべきかどうかについては、社内で激しく議論されたという。論議を尽くし、最終的には販売することを決定した。このウイスキーは、史上もっとも高価な蒸留酒になるだろう。

Distilled
Bottled
Age
Alc.
Outturn
Cask Type
Cask Size
Price
17th February 1906
8th March 2011
105 yo
40.7%
1
Sherry
Butt
£870,000


といった感じだ。ソースサイトにはテイスティングノートもしっかりと載せてあり、満腹感はかなりある。87万ポンドと言われてもぴんとこないかもしれないが、およそ1億2000万円だ。

確かによく練られた記事ではあるが、細部の詰めの甘さが若干目につく。ポットスティルの説明では、原文では「rectifier」と書かれてあるが、これは「purifier」とすべきだろう。どちらも和訳は精留器だが、構造的には異質なものだ。レクティファイヤーは連続式蒸留器の精留塔か、もしくはポットスティルならローモンドスティルについてるあの円筒状の装置を指す。ハイラム・ウォーカー社がローモンドスティルを開発したのは20世紀の半ばであり、1906年にはまだ存在しない。

それとボトルの画像だが、100年以上シェリーバットに寝かせたにしてはウイスキーの暗赤色度が乏しく、透明感があってきらきらし過ぎている点でリアリティを欠いている(特にネック部分)。ちなみに、私がイメージするアイラ・トテン105年は、こんな感じだ。また樽の保存環境がよくても、半世紀程度の熟成で度数が40%を切ってしまうケースがあるという事実を踏まえれば、105年ものが40.7%というのはやはり不自然だと言わざるを得ない。

glenlivet70yo.jpg先日リリースされたばかりのグレンリヴェット70年が、東日本大震災のチャリティボトルとしてオークションに出品されるという。

ゴードン&マクファイル社は、新シリーズ「ジェネレーション」の第2弾として、グレンリヴェットの70年を今月8日に発表した。1940年蒸留のシェリーバット1樽からカスクストレングスでボトリングされたもので、アルコール度数は45.9%。フルボトルは100本の限定販売で、価格は13,000ポンドだという。なお200ミリリットルの小瓶も同時にリリースされ、こちらは175本限定で3,200ポンドだ。

オークションにかけられるのは、フルボトルの通しナンバー1番「001/100」だ。実はグレンリヴェット70年の話題は、スコッチ文化研究所が発行する「ウイスキー通信」に連載中のコラム「ニュースなウイスキー」の次号で取り上げたのだが、チャリティオークションのニュースが届いたのは原稿の締め切りの後だった。そのため、この場で補足しておこうと思う。

1940_cask.jpgゴードン&マクファイル社の共同最高責任者、マイケル・アーカート氏は言う。「弊社は30年以上にわたり、日本と取り引きをさせていただいてます。私たちにとって重要なことは、日本の被災者の方々を支援すること、そして救援資金を募ることです。今回のような悲劇に直面したとき、人は何か行動を起こさなくてはと考えるのですが、私たちはみな無力だと感じてしまうものです。人々が広い心で、呼びかけに応じてくださることを願っています。」

スコットランド・ボナムズオークションの最高経営責任者、ミランダ・グラント氏は幼少のころ日本に住んでいたことがあるという。「瓦礫の山や命を落とした人々を目にしてショックを受けた方々の助けになれれば、私たちは本当に喜ばしく思います。そして、多くの義援金が集まるよう切望しています。」と、グラント氏はコメントしている。

オークションは、今月29日の19時(現地時間)から開催の予定。落札価格は、13,000~15,000ポンドと予想されている。私の生涯の友であるスコッチウイスキーが、被災者の救済と被災地の復興に一役買ってくれるのは本当に嬉しい。

matisse.jpg台湾のウイスキーと言えばキング・カー蒸留所のカヴァランが有名だが、マティスというブランドもある。マティス社はキング・カー蒸留所とは違い、スコッチウイスキーのボトリングのみを行っている会社だ。そのマティス社が、このたび派手なプロモーションを仕掛けてきた。同社がボトリングした800ポンドのキャパドニック1972を、スコットランド第一大臣アレックス・サモンド氏によってチャリティオークションに出品してもらうというもの。

先日行われたサモンド氏へのボトル進呈式には、ウイスキーライターのジム・マーレー氏が招かれ、彼によってキャパドニック1972が手渡された。他の誰でもなく、ジム・マーレー氏が招かれたのには、実は訳がある。彼の著書であるウィスキー・バイブルの2007年度版に、マティス12年が取り上げられ89点という高得点が与えられたからだ。

オークションは今月の11日に、スコットランドのファイフにあるセント・アンドリューズにて開催される。売上金は、がん患者や障害者、ホームレスらを支援する団体に全額寄付される予定だ。

マティス社は、2000年に ヤン・テンクェイ氏によって創業されたインディペンデントボトラーズだ。2008年にオープンしたキング・カー蒸留所よりも歴史は古く、台湾のウイスキー業界では先駆者といえるだろう。同社の製品は、シングルモルト、ブレンデッドモルト、ブレンデッドスタンダード、ブレンデッドプレミアムの4種類に大別される。どの製品にも蒸留所名は明記されておらず、「マティス」というブランド名で統一されている。すなわち、今回のチャリティオークションに出されるキャパドニックは、例外ということになる。

ちなみにこのマティス社だが、ブランドイメージを作り上げることに何よりも力を入れていることでも有名だ。CMには有名歌手や映画俳優、そして売れっ子の映像ディレクターらを起用し、アーティストのプロモーションビデオ顔負けの作品を作っている。だが肝心のウイスキーが、そのイメージに伴っていないとの厳しい指摘もあるようだ。

たとえば、こんな例もある。2008年に出されたウイスキーマガジン73号のテイスティングコーナーで、「マティス・オールドブレンデッドウイスキー」が取り上げられた。だがこのウイスキー、“オールド”とはいうものの実は3年物。テイスターのデイヴ・ブルーム氏がつけた点数は6.0点、「3年熟成で“オールド”って、どういうこと?」と、きついコメントを残している。サントリーオールドは、熟成年数を謳わないで正解だったかもしれない。

ともあれ、このキャパドニック1972にいくらの値がつくのか、興味のあるところだ。

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【プロフィール】
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MUNE
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男性
自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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