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27か所もの蒸留所と800万樽ものウイスキーを所有する、世界最大のアルコールメーカーであるディアジオ社。このディアジオ社が、「The Scotch Blog (アメリカから発信されている、スコッチをテーマにしたブログ)」を運営しているケヴィン・アースキン氏に、このたび謝罪をしたという。
いきさつはこうだ。年末から年始にかけて、2006年のベストウイスキーを一般からの投票で決定するコンペティションが The Scotch Blog 上で行われており、その中で明らかに不正と判る投票が見つかった。同じ銘柄に対する大量の投票がメールで送られてきたのだが、いずれも同じメールアドレスで同じ書式だったという。しかも送り先のアドレスがすべて同じように間違っていたという(それでも届いたらしい)、漫画に出てくる間抜けな泥棒でもやらないようなへまをやったらしい。しかもそのメールの差出人アドレスには“diageo”という見慣れた社名が・・・。
怒り心頭に達したアースキン氏は、1月7日付けのブログ記事の中でその一件を痛烈に批判。その記事の中では社名は明かさず仄めかすまでに留めたのだが、どういう経緯でか直ちにディアジオ社の知るところとなった。事態を重く見た会社は、内部調査で首謀者がアメリカ支社のブランドマネージャーだったことを突き止めたのだ。
このブログ記事の最後には、この八百長首謀者に対するメッセージが皮肉たっぷりに書かれてあり思わず吹き出してしまった。「もし銀行強盗をやろうと思ったら、必ず名札ははずしましょうね。」とか、「コンテストで八百長を本気でやりたいのなら、賄賂を渡しましょう。その方がよほど成功する可能性が高いですよ。」とか・・・。
このコンペティションだが、まだ歴史は浅く今回で第2回目だ。その名も「ドラミー賞(Drammie Awards)」。もちろん音楽業界の「グラミー賞(Grammy Awards)」をモジったもの。受賞の対象はウイスキーそのものに限らない。関連の人物や団体、ウェブサイト、本、キャンペーンなども対象となり、以下の8つの部門に分類されノミネートされている。投票はまだ受け付けているので、ご興味のある向きはぜひ!
●ベスト・パッケージ/マーケッティング・キャンペーン賞
Best Packaging/ Marketing Campaign
●お買い得で賞 (この値段なら文句は言えないというウイスキーに)
Bang for the Buck
●ディスティラー/ブレンダー/インディペンデント・ボトラー賞
Distiller/Blender/Independent Bottler of the Year
●モスト・イノべーティブ・ニュー・プロダクト賞 (最も革新的だった新製品に)
Most Innovative New Product
●ベスト・ニュー・プロダクト賞 【ウイスキー】
Best New Product (whisky)
●ベスト・ニュー・プロダクト賞 【ウイスキー以外】
Best New Product (Non-whisky i.e., book, resource, web site, etc)
●モスト・アンダーレイテッド・ウイスキー賞 (最も過小評価されているウイスキーに)
Most under-rated-whisky
●ワースト・マーケッティング・キャンペーン賞
Worst Marketing Campaign
好景気を続けるロシアだが、どうやらその資本がスコッチ業界にも投入される運びになりそうだ。ロシアのある事業団体が、グレングラッソ蒸留所の買収をめぐってエドリントン社と交渉中だというニュースが、昨年末から年始にかけて流れてきている。業界筋によれば、交渉はすでに大詰めの段階だという。
国家資本主義体制のもとに創設された国策会社が、蒸留所のオーナーとなるその歴史的な意味合いは大きい。企業の乗っ取りが横行しているだとか、元スパイが毒殺されただとかいう話を聞くたび、この国は相変わらずなんだなと思う。蒸留所のカラーが、某蒸留所のように大きく塗り変えられないことを祈りたい。
またそんな好景気に後押しされ、ロシア国内でのスコッチ人気もかなり熱を帯びてきているという。2000年には前年の5,000,000ポンドだった輸出額が20,000,000ポンドにまで跳ね上がり、2005年には25番目に重要な輸出相手国となったという統計も出ている。ちなみにロシアで売れているシングルモルトの4大銘柄は、グレンフィディック、マッカラン、グレンモーレンジ、そしてブルイックラディだとのこと。ロシアでジャパニーズ・ウイスキーの人気が高まっているという記事(2007年7月13日付け)を半年ほど前に書いたが、ローカルなカテゴリーには収まりきらないほどこの国のウイスキー人気は熱いようだ。
さてグレングラッソといえば、フェイマスグラウスやカティサークといった有名どころのブレンデッド原酒としては知られる銘柄だが、シングルモルトはあまり見かけない。というのも、元々ほとんどがブレンデッド用として使われていた上に、操業を停止していた時期も多かったためシングルモルトとして出回っている量はごくわずかなためだ。ウイスキーライターのチャールズ・マクリーン氏は、「オーナーが話題にしない蒸留所」なんていう辛辣な批評をしている。
これまでに当方が飲んだグレングラッソは恐らく10種類程度に過ぎないが、いずれのボトルもまずまずの仕上がりだったという印象を持っている。THE Whisky World 誌上で2006年ベストウイスキーに選ばれたのもグレングラッソだった。閉鎖されてしまう蒸留所というのは、得てしてクォリティ面にそれなりの原因があったりするものだが、この蒸留所は数少ない例外のひとつだと個人的には位置づけている。ウイスキーライターのエリザベス・ライリー・ベル女史も、グレングラッソ蒸留所を「隠れた宝石」だと評している。マクリーン氏と違ってよくわかってるねえ、彼女は(笑)。
1月26日(土)、神田神保町のバー・ポルカドッツ・アンド・ムーンビームスにて試飲会を開催することが決まった。今回のテーマはアードベッグである。前回が11月17日だったのでほぼ2か月ぶり、正確に言えば10週間ぶりの開催となる。また皆様とご一緒させていただくことを、とても楽しみにしている。
舌を包み込む土っぽいテクスチャーと、まるで液体の煙を飲んでいるかのようなスモーキーさが魅力のアイラモルト、アードベッグ。今回はそんなアードベッグの90年代に蒸留されたボトラーズものを中心に飲み比べてていただこうと思っている。
そしてその最後を締めくくるのは、オフィシャルの1972年ヴィンテージ。その希少さと価格の高騰で気軽には飲めなくなりつつある70年代ヴィンテージのアードベッグだが、今回は90年代のボトルとの比較も楽しみながらご堪能いただけたら幸いだ。
『アードベッグ・テイスティング会』
日時: 1月26日(土)
第1部: 16:30~18:30
第2部: 19:00~21:00
場所: Bar PolkaDots & MOONBEAMS
(バー・ポルカドッツ・アンド・ムーンビームス)
千代田区神田神保町2-2-12 サンエスビルB1F
(東京メトロ神保町駅 A4出口徒歩1分)
TEL: 03-3263-3211
http://www.ff.iij4u.or.jp/~yukiom/
会費: 8,000円
定員: 第1部:11名 第2部:11名 (要予約)
「"TASTE STILL" M&H」 1990-2006 / 58.6%
■新進気鋭のベルギーのボトラー、「M&H」によるボトリング。
「CADENHEAD'S」 1994-2006 / 46%
■老舗ボトラー、ケイデンヘッドのオリジナル・コレクションから。
「"Spirit of Scotland" G&M」 1996-2004 / 50.2%
■G&M社がジャパン・インポート・システムのために樽出しでボトリング。
「SMWS 33.60」 1998-2005 / 58.0%
■ソサエティの2006年オータムボトリングスから。
「"DAILY DRAM" & The Whisky Fair」 2000-2007 / 59.1%
■デイリードラム・シリーズとザ・ウイスキー・フェアとのコラボレーション。
「DB (for France, Cask#2781)」 1972-2004 / 49.2%
■フロアモルティングを行っていた頃のもの。現地ではなんと550ポンドの値がつく。
※各30mlずつ(「DB for France」のみ15ml)
参加のお申し込みは、この日記のコメント欄にご参加希望の旨をお書き込みいただくか、もしくはこちらからどうぞ。
追記(1/19):
ボトルの画像をアップ。
新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、先日グレン・エイヴォン50年(Glen Avon, 実際の発音は“エイウォン”と濁らないらしい)を抜栓したので、テイスティング・ノートを書き残したいと思う。
このグレン・エイヴォンだが、G&M社(Gordon & MacPhail)がボトリングした蒸留所名の明かされていないシングルモルトである。その酒質からグレンリヴェットだともグレンファークラスだとも言われるが、その判断はなかなか難しい。というのも、この銘柄はヴィンテージや熟成年数違いで何種類か出されているのだが、それぞれで微妙にキャラクターが違っているためだ。比較的若いものには繊細なグレンリヴェットには不似合いな荒々しい力強さを感じるが、この50年のように「もしかしてリヴェットかも?」と思わせる極めて繊細な要素もあったりする。
この正体不明のシングルモルトが、グレンリヴェット、もしくはグレンファークラスのいずれかだろうと考えられているのには、G&M社が抱えていた蒸留所名使用制限の問題も大きく関与している。特にグレンファークラス蒸留所が、インディペンデント・ボトラーに対してなかなか名前の使用許可を出さないことは有名だ。
またグレン・エイヴォンという名称の由来が、いずれの蒸留所をも示唆している可能性がある点も興味深い。19世紀の半ばにグレンエイヴォン(Glenavonと一語で綴る)という蒸留所が、実はザ・グレンリヴェット蒸留所の創業者の息子であるジョン・G・スミスによって操業されていたのだ。この蒸留所のウイスキーのハーフボトルが、ロンドンで開かれたオークションで14,750ポンドという高値で落札されたのは記憶に新しい。
一方グレンエイヴォン蒸留所は、バリンダロッホにあったという記録も残されている。グレンファークラス蒸留所の所在地はずばりバリンダロッホであり、ボトラーのキングズバリー社がグレンファークラスをバリンダロッホのブランド名で販売していることもよく知られている。もっとも、ウイスキーによっては蒸留所とあまり関係のないブランド名がつけられるケースもままあるので、蒸留所の推測には参考程度の情報と考えたほうが望ましいのだが・・・。
さて主題のテイスティングだが、この手のモルトはとても評価が難しい。現行品と同じ土俵では比べられないからである。それをやるのは、例えるならクラシックカーを現代の車と競わせるようなもので、ある意味ナンセンスだ。酒においても老齢は斟酌してやるべきで、古酒はやはりそれなりの基準で見てやらなくてはならない。
香りはフルーティで複雑。フレーバーはややウッディだが、喉越しには力強さもありコンディションはまずまずだ。50歳という年齢を考えれば、驚くほどかくしゃくとしている。
【香り】 オレンジオイル、洋梨の皮、レザー、雨ざらしの樽。加水でレモンピール。
【味】 チョコレートがけのレーズン、シナモン、樹皮、ゴム。加水で渋みが顕著に。
【フィニッシュ】 シナモンキャンディ。フルーティで心地よいが、渋味が長く残る。
1772年に創業され、現存する蒸留所の中では最も古い歴史をもつといわれていたいたリトルミル蒸留所が2004年の9月に火災で消失した。さて、繰上がって“最古”の座についた蒸留所ははたしてどこなのだろうか?
順当に考えるならば、最古は1775年創業のグレンタレット蒸留所。その次は、1779年創業のボウモア蒸留所となるはずだ。ところが、実はそうじゃないかも?という興味深い記事が、今月20日付けのヘラルド紙スコットランド版に載った。
グラスゴー大学のスコットランド醸造記録文書保管所(Scottish Brewing Archive)の保管人であるイアン・ラッセル氏によると、「グレンタレットは1775年に、ボウモアは1779年に創業したとそれぞれの蒸留所は主張していますが、税関局の公文書記録には1816年までのボウモア蒸留所の記録が実は残っていないのです。グレンタレット蒸留所も1818年頃までの記録はありません。すなわちこの二つの蒸留所は、最古どころかアードベッグ(1794年~)やオーバン(1794年~)、ブレア・アソール(1798年~)等の蒸留所よりもずっと後に創業したのだということになります。」ということらしい。
多くの資料でグレンタレットは1775年創業、ボウモアは1779年創業と明記されているのでにわかには信じがたい話だが、税関局の記録であれば説得力もある。まあ、どこぞの国のお役所のように記録の管理がずさんだったという可能性は、少なからずあるとは思うが(苦笑)。
もし税関局の公文書記録に間違いがなかったと仮定するならば、最古の座に躍り出るのは1785年創業のグレン・ギリー蒸留所だということもできる。「ということもできる」と文末の歯切れが悪いのは、多くの資料に創業は1798年だと書かれてあるからだ。蒸留所の公式見解も1798年ということになっている。
グレン・ギリー蒸留所の1785年創業説は、1785年に発行されたアバーディーン・ジャーナル紙に書かれてあった記事に基づいたもの。オールド・メルドラム蒸留所(グレン・ギリーの旧名)の、最初の蒸留が行なわれたことを示唆する記事がそれに掲載されていたからなのだそうな。
今回のラッセル氏の疑問提示にグレンタレットやボウモアが黙っているはずもなく、誰もが予想だにしなかった論争の火種が関係者の間ではくすぶり始めているという。“歴史が古い”ことはウイスキーのブランド戦略においては、やはり軽んじられない要素だということらしい。ちなみにボウモア蒸留所を所有しているのはサントリーだが、彼らはグレン・ギリーのオーナーでもある。どちらに転んでも収支バランスがとれるようにも思えるが、天秤にかけるまでもなく税関局の記録は何かの間違いであって欲しいと願っているはずだ。