エムズ・ウイスキー・ダイアリー 忍者ブログ
Whisky topics covered by M's Bar
【カレンダー】
06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ecard_18122007100403.jpgスコットランドの一部の蒸留所が、地球温暖化によって引き起こされる海面の上昇で深刻な脅威に晒されているとの警告が、科学者たちからスコットランドに向けて発せられたという。ボウモアラフロイグタリスカーグレンモーレンジのような海岸沿いに立地する蒸留所は、嵐や押し寄せる波による被害を被る危険性が高まっているというのだ。

政府によって設立されたスコットランド自然遺産局のアドバイザーを務める、グラスゴー大学地理地球科学部のジム・ハンサム博士は、気候の変化がもたらすウイスキー産業への脅威はとても現実的なものだという。「海面が上昇し始めていることはすべてを物語っています。世界的に名の知られた多くの蒸留所を含め、海岸に立地するすべての蒸留所が海水に飲み込まれる危険性をはらんでいるのです。にも関わらず、人々は気候が変化すれば暖かい夏が過ごせるといったよい影響ばかりに目が行ってしまい、想定し得る他のすべての影響にまでは考えが及んでいません。」と、博士は一般人の認識の甘さを憂えている。

またハンサム博士は、20年以内には被害を被る蒸留所が現れる可能性があると強く主張する。「最も深刻な影響が及ぶと思われるのがインナーヘブリディーズ諸島並びにオークニー諸島に立地する各蒸留所、そして本土ではロスシャー州のバルブレアやテインのグレンモーレンジといった蒸留所です。ラフロイグやラガヴーリン等の蒸留所は、高潮の水位線より低い位置に建てられたウェアハウスを持っています。それがまたウイスキーの神秘性や魅力の一端を生み出してもいるのですが、将来完全に海水に没してしまう樽もあるかもしれません。これは由々しき事態です。またブナハーブンのように建物と海岸が向かい合わせになっている蒸留所でも、波による被害を被る可能性があります。最悪の場合は、建物を高台に移設再建しなくてはならないでしょう。またウイスキーを寝かせてあるウェアハウスを、段階的に移設しなくてはならないかもしれません。」

ハンサム博士は、自分は決して心配性ではないし人騒がせなことを言ってるつもりはないという。「私の主な目的は、今後そういう問題に直面するだろうという事実を海岸の蒸留所に伝えることです。そして彼らは今、そのことについて考えるべきなのです。今、沿岸域の管理計画を作成しておけば、将来支払うことになるであろう莫大な出費の金額を幾らかでも抑えられるのですから。」

今年の初めにスコットランド政府が公表したデータによれば、スコットランド沿岸の100,000軒の家屋とビジネスが海や川の水の氾濫の脅威にさらされているという。その内訳は、大多数を占める73,000軒の個人の住宅と5,000棟の商業用の建物が、内陸部の堤防が決壊する危険のある川の近隣。それ以外の18,000軒は、波の被害を被る危険性のある沿岸沿いの地域だとのこと。

ハンサム博士と同様の所見は、スコットランド海洋科学協会の海洋物理学の講師でもあるトビー・シャーウィン博士によっても繰り返し提唱されている。「最悪のケースでは、海面は60センチメートル上昇するでしょう。海面レベル近辺の低い位置に立地している蒸留所にとっては真に憂慮すべき事態であり、今どのように対処すべきかを真剣に議論すべきです。また北方や西方の島々のある地域は地理的に地盤沈下の起こり得る場所で、海面上昇のに対しては一層影響を受けやすいのです。」と、シャーウィン博士はコメントしている。

またウイスキーライターのデイブ・ブルーム氏も、「気候の変化が、ウイスキー産業に影響をもたらすことは疑いようがありません。科学が受け入れられ、それは気が滅入るほどますます正確なものになってきています。」と話している。

126.jpgしかし、ブナハーブン蒸留所のマネージャーであるジョン・マクレラン氏は、建物の立地が波の氾濫に対しとても脆弱であるにもかかわらず、あまり深い関心は示していないという。「そういう段階に至るまでは、まだまだ年数がかかるでしょう。正直に申しますと、この先の50年に何が起きるかよりもむしろ当座のことの方が心配なのです。一連の警告は聞きましたが、眠れなくなるほど気をもむことではありません。」と、マクレラン氏らしいのん気なコメントだ。

英国は今年の夏に集中豪雨に見舞われている。記録的な洪水になり、15,000件もの土地建物と1,500件のビジネスが損害を受けたという。スコッチウイスキー協会のスポークスマンであるデイヴィッド・ウィリアムズ氏によれば、業界は水害の脅威を重く受け止めてすでに対策を講じているとのこと。

地球の温暖化は、スコッチ業界にもかなり深刻な影響を及ぼしているようだ。設備や樽が水没してからでは遅い。特に海面よりも低い位置に建てられたウェアハウスへの対策は、早急に講じて欲しいものだ。

PR

macallan_vintage.jpgエリザベス女王の甥であり、また著名な家具デザイナーとしても知られるデイヴィッド・リンリー子爵。彼の製作したキャビネットに収められた、「ファイン&レア・コレクション」シリーズの6本のレア・マッカランの展示即売会が、今月13日の午後5時半から7時半まで開かれた。場所はロンドンのハロッズ百貨店の地下一階、「バイ・アポイントメント」の一室。

このバイ・アポイントメント(By Appointment)というのは、パーソナルな売買を所望する富裕層向けにハロッズが提供しているスペースだ。地下1階のベイジル通り側の一画に設けられている。

6本のマッカランのヴィンテージは、1937年、1940年、1948年、1955年、1966年、および1970年(何故か上の画像とは違っている)。キャビネットはヨーロッパ・オークとバー・オークを原料に手細工で作られてあり、リンリー製のクリスタル・ウイスキータンブラー6脚とヒューミドール(葉巻き保管庫)、そしてリンリー製家具の特徴のひとつでもある隠し収納ボックスが付いているという。さて気になるお値段だが、なんと55,000ポンド(約12,600,000円)だとのこと。

エドリントン・グループのモルト・ディレクターであるケン・グリア氏は、「リンリーの家具は可能な限り高い水準に到達できるよう、まるでマッカランのように伝統的な技術と新しい技術がバランスよく引き合わせられています。このキャビネットは、そのひとつの証しなのです。その家具にエドリントン社の『ファイン&レア・コレクション』が収められているわけですから、例え高価であっても売れるコレクターズ・アイテムであることは間違いありません。」と、強気なコメントをしている。

贅を尽くしたプレミアム・モルトここに極まれりという感じだが、買い手がついたのかどうか現段階では公表されていない。

foodprog_andrew.jpgアンドリュー・ジェフォード(Andrew Jefford)と言えば「ピート・スモーク・アンド・スピリット(Peat Smoke and Spirit)」の著者としても知られる人物だが、先月10日付けの彼のブログにとても興味深い記事が掲載された。9月28日にグラスゴーで行なわれたマクティアーズのオークションで落札されたボウモアの年代鑑定は大変疑わしいというのだ。

その中で「スコティッシュ・ブリューイング・アーカイヴ(Scottish Brewing Archive)」の公文書保管人であるイアン・ラッセル氏が、ジェフォード氏に宛てた手紙が紹介されている。もちろん内容はこのボウモアに関するものだ。ラッセル氏は7つ疑問点を書き出しているので、抜粋超訳してみる。

1.
ボトルが手吹きで作られたものならば、首の部分が球根状に膨らんでいるのはおかしい。もっと直線的なフォルムになるはず。
2.
19世紀のマター・ボウモアの外観に関して、私の知る限りモリソン・ボウモア社のウェブサイトに掲載されている広告(19世紀後半頃のもの)が唯一の資料である。それによれば、ボトルのガラスの色はとても暗い。それは、透明度の高いガラスが当時はとても高価だったためだ。オークションのボウモアには、1850年頃のボトルという説明がされてあるにも関わらずガラスの透明度が高い。またこの広告に描かれているボトルでも、首の形状は球根状ではなく直線的。
3.
マクティアーズの説明によれば、オリジナルのボール紙カートンに収められているとのこと。しかし19世紀の半ばに流通したウイスキーで、ボール紙のカートンに収められたものがあったという話は見たことも聞いたこともない。しかしこのカートンだが、実物はオークションでお披露目されず、写真の公開どころか一切の説明さえも記述されていない。なので、このカートンに関するコメントはこれ以上は差し控えておく。
4.
液面のレベルは、ボトルの首あたりにまで達している。150年前にボトリングされ、しかもコルクとキャップカバーが破損しているのであれば、中身はもっと蒸発していて然るべき。ただ残念ながら、コルクがいつ破損したのかは判っていない。
5.
ブランド名やロゴマークが広く登録されるようになったのが、1870年代の初頭だったことはよく知られている。それまでのウイスキーのラベルは、簡素な台紙にウイスキー名とボトリングした業者の名前、そして簡単な説明程度しか記述されていないようなものだった。しかしこの“1850年頃に出回った”と説明されたボウモアのラベルは、4色のカラー印刷でとても洗練されている。
6.
私はマクティアーズのマーティン・グリーン氏宛てにボトルの年代考証に関する資料を送ったのだが、件のボウモアが1850年頃のものだという主張を彼は曲げなかった。彼によれば、ボウモアを出品したマター家の末裔を名乗る人物が申し述べた“言い伝え”がその根拠だとのこと。しかしだ。BBCの「Who Do You Think You Are? (イギリスの家系図ブームの引き金となったといえるBBCの人気番組)」を見た方にならすぐに納得してもらえるだろうが、家系図なんてものは長い年月の中でしばしば捻じ曲げられたり混乱したりするもの。ウィリアム・マターというありふれた名前の人物が19世紀にも沢山いたことは想像に難くないし、そのマター家の家系図や言い伝えが正しいなんて保証はどこにもない。
7.
私はこの件をマイケル・モス教授(ウイスキー産業史の名著「スコッチウイスキーの歴史(The Making of Scotch Whisky)」の共著者でもあり、オークションのカタログに記載されるボウモア蒸留所の歴史の執筆なども手がける)に打ち明けた。彼は、件のボウモアが1850年頃のものではありえないと言う。なぜなら、W&J・マターが最初に商標を登録したのは1876年(6年前の1870年からその商標を使用し続けてきたことの申請だった)で、すなわち1869年以前にこのようなラベルのボトルは存在しえないからだと。なお現在彼は、その商標がいつまで登録されていたのかを解明するためにさらに研究を進めているとのこと。

とまあこんな感じだ。6つ目などは「ふーん、そうかも。」という程度だが、7つ目に書かれてある内容は“1850年頃のボウモアではない”ことの動かしがたい証拠だと言えるだろう。なおマイケル・モス教授によれば、「1890年頃」というのが妥当な鑑定だとのこと。

spotthebarrelvertic.jpg今、アイラ島で面白い競技会が開催されている。その名も「ウイスキー樽はいずこに?(Spot the whisky barrel.)」。

どんな競技かというと、上空の飛行機から落とされたウイスキー樽の落下地点を予測し、その正確さを競うといったもの。もちろん、投下される地点は予め明かされている。そして当然といえば当然だが、落とされるのは海の上。しかも空樽で、パラシュートが装着されるとのこと。なお、樽の重さは54キログラムだそうな。樽の着水後、きっかり5分後に陸地からボートがやってきて、3名の審判員がGPS(全地球測位システム)を使って位置を記録するといった運びらしい。

home1.jpg着水地点は飛行機の飛ぶ方向によっても左右されるが、西に向かって時速90マイル(145キロメートル)のスピードで飛行するとのこと。そして、5,000フィート(1,666メートル)の高さから投下するという。偏西風に対しては向かい風ということになるが、必ずしも真西から吹くわけではないので、流される方向は勘に頼るのみか。ちなみにアイラ島の風向き予報がここに載っているが、まあ参考程度にしかならないと思う(笑)。

参加料は25ポンドとまずまずの価格設定。決して安いとは言えないが、賞品は豪華だ。最も近い位置を言い当てた1等賞には、アイラ島内の3エーカーの土地(150,000ポンド相当)とそこに家を建てるために100,000ポンドの現金が用意されている。もしくはキャッシュで250,000ポンドを受け取ることも可能だとか。サッカーグラウンドひとつの面積が1エーカーだそうだから、3エーカーといったら相当な広さだ。ちなみに場所はここ

2位は、現在建築中の新しいホテル「アイラ・ホテル」のペア宿泊券を1名に。滞在期間は1週間だそうな(6,000ポンド相当)。3位は、アイラモルトが詰められているウイスキー樽(ホグスヘッド。ボトルに換算すると250本ほどの分量)を1名に。ウイスキー税はすでに納付済みの樽だとのこと(4,000ポンド相当)。4位は、特製のプレゼンテーションボックスに収められたアイラとジュラのウイスキーの9本セットを1名に(1,000ポンド相当)。これらの賞品も1位の場合と同様、キャッシュでの受け取りが可能だ。

締め切りは来年の3月末日。そして4月の一番最初の安全に飛行機が飛ばせる日に、樽の投下が行なわれる予定だ。一人で何口応募してもいいが、60,000口のエントリーが集まった時点で受付は締め切るとのこと。

参加資格は18歳以上であることだけだ。これは「アイラ・ドリーム」を叶えるチャンスかも・・・?

※この競技会の運営は、イベントと同名のSpot the Whisky Barrel Limitedという会社によって行なわれています。ちゃんと登録された会社であることは間違いないのですが、素性はよくわかりません。エントリーは何とぞ自己責任にてお願いします。

追記(12/17):
ISLAYBLOG.COMというブログの12月16日付けの記事の中で、M's Whisky Diaryと当該記事を紹介していただいた。

nikka2.jpg香港を拠点に活躍しているイギリスのデザイナー、マイケル・ヤングがニッカの新しいウイスキーのボトルをデザインしたとのこと。マットブラックに仕上がったボトルの表面は、一見ランダムに並んだ(蜘蛛の糸のような規則性があるようにも見える)凹凸によって独特の雰囲気を醸し出している。とてもウイスキーのボトルには見えない。

マイケル・ヤングは、イギリスを代表するプロダクトデザイナー。ジャイアントの自転車シュウェップスのバーウェアを始め、ブランディングを含んだデザインプロジェクトを手がけている。2007年7月にはパリのラコステより新シリーズを発表するなど、世界的に様々なジャンルで活躍中だ。

そう言えば、一昨年にリリースされたブラックニッカの誕生40周年記念ボトルが、凹凸こそないが同じような質感のボトルだった。ヤング氏のデザインがどの程度ニッカの意向に沿ったものなのかはわからないが、表面の色と質感はきっとニッカ側からの指示なのだろう。

なおこのウェブサイトに、ウイスキーの名前は「Cloud 9」になるなんてことが書かれてあるが、本当だろうか? Cloud 9 の意味だが、on cloud nine という成句で「とても幸せな」もしくは「天にも昇る心地で」といった意味で使われる。cloud nine とは積乱雲のことで(米国の気象庁で用いられた雲の種類の9区分から)、非常に高くまで上昇することからそうなったらしい。またダンテの「神聖喜劇(The Divine Comedy)」の中では the ninth heaven が神に一番近く、最も幸福であるとされたことに由来するとも。

まあどんな名前になるにせよ、リリースされた途端世間をあっと言わせることは間違いない。おそらくメディアもこぞって取り上げるだろう。今から楽しみだ。

Newer  ≪  HOME  ≫  Older

【プロフィール】
HN:
MUNE
HP:
性別:
男性
自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
【ブログ内検索】
【ランキング】
にほんブログ村 酒ブログ 洋酒へ

人気ブログランキングへ



blogram投票ボタン
忍者ブログ [PR]

Copyright © 1998- Muneyuki Yoshimura. All rights reserved.