エムズ・ウイスキー・ダイアリー 海面の上昇で蒸留所が水没!?
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ecard_18122007100403.jpgスコットランドの一部の蒸留所が、地球温暖化によって引き起こされる海面の上昇で深刻な脅威に晒されているとの警告が、科学者たちからスコットランドに向けて発せられたという。ボウモアラフロイグタリスカーグレンモーレンジのような海岸沿いに立地する蒸留所は、嵐や押し寄せる波による被害を被る危険性が高まっているというのだ。

政府によって設立されたスコットランド自然遺産局のアドバイザーを務める、グラスゴー大学地理地球科学部のジム・ハンサム博士は、気候の変化がもたらすウイスキー産業への脅威はとても現実的なものだという。「海面が上昇し始めていることはすべてを物語っています。世界的に名の知られた多くの蒸留所を含め、海岸に立地するすべての蒸留所が海水に飲み込まれる危険性をはらんでいるのです。にも関わらず、人々は気候が変化すれば暖かい夏が過ごせるといったよい影響ばかりに目が行ってしまい、想定し得る他のすべての影響にまでは考えが及んでいません。」と、博士は一般人の認識の甘さを憂えている。

またハンサム博士は、20年以内には被害を被る蒸留所が現れる可能性があると強く主張する。「最も深刻な影響が及ぶと思われるのがインナーヘブリディーズ諸島並びにオークニー諸島に立地する各蒸留所、そして本土ではロスシャー州のバルブレアやテインのグレンモーレンジといった蒸留所です。ラフロイグやラガヴーリン等の蒸留所は、高潮の水位線より低い位置に建てられたウェアハウスを持っています。それがまたウイスキーの神秘性や魅力の一端を生み出してもいるのですが、将来完全に海水に没してしまう樽もあるかもしれません。これは由々しき事態です。またブナハーブンのように建物と海岸が向かい合わせになっている蒸留所でも、波による被害を被る可能性があります。最悪の場合は、建物を高台に移設再建しなくてはならないでしょう。またウイスキーを寝かせてあるウェアハウスを、段階的に移設しなくてはならないかもしれません。」

ハンサム博士は、自分は決して心配性ではないし人騒がせなことを言ってるつもりはないという。「私の主な目的は、今後そういう問題に直面するだろうという事実を海岸の蒸留所に伝えることです。そして彼らは今、そのことについて考えるべきなのです。今、沿岸域の管理計画を作成しておけば、将来支払うことになるであろう莫大な出費の金額を幾らかでも抑えられるのですから。」

今年の初めにスコットランド政府が公表したデータによれば、スコットランド沿岸の100,000軒の家屋とビジネスが海や川の水の氾濫の脅威にさらされているという。その内訳は、大多数を占める73,000軒の個人の住宅と5,000棟の商業用の建物が、内陸部の堤防が決壊する危険のある川の近隣。それ以外の18,000軒は、波の被害を被る危険性のある沿岸沿いの地域だとのこと。

ハンサム博士と同様の所見は、スコットランド海洋科学協会の海洋物理学の講師でもあるトビー・シャーウィン博士によっても繰り返し提唱されている。「最悪のケースでは、海面は60センチメートル上昇するでしょう。海面レベル近辺の低い位置に立地している蒸留所にとっては真に憂慮すべき事態であり、今どのように対処すべきかを真剣に議論すべきです。また北方や西方の島々のある地域は地理的に地盤沈下の起こり得る場所で、海面上昇のに対しては一層影響を受けやすいのです。」と、シャーウィン博士はコメントしている。

またウイスキーライターのデイブ・ブルーム氏も、「気候の変化が、ウイスキー産業に影響をもたらすことは疑いようがありません。科学が受け入れられ、それは気が滅入るほどますます正確なものになってきています。」と話している。

126.jpgしかし、ブナハーブン蒸留所のマネージャーであるジョン・マクレラン氏は、建物の立地が波の氾濫に対しとても脆弱であるにもかかわらず、あまり深い関心は示していないという。「そういう段階に至るまでは、まだまだ年数がかかるでしょう。正直に申しますと、この先の50年に何が起きるかよりもむしろ当座のことの方が心配なのです。一連の警告は聞きましたが、眠れなくなるほど気をもむことではありません。」と、マクレラン氏らしいのん気なコメントだ。

英国は今年の夏に集中豪雨に見舞われている。記録的な洪水になり、15,000件もの土地建物と1,500件のビジネスが損害を受けたという。スコッチウイスキー協会のスポークスマンであるデイヴィッド・ウィリアムズ氏によれば、業界は水害の脅威を重く受け止めてすでに対策を講じているとのこと。

地球の温暖化は、スコッチ業界にもかなり深刻な影響を及ぼしているようだ。設備や樽が水没してからでは遅い。特に海面よりも低い位置に建てられたウェアハウスへの対策は、早急に講じて欲しいものだ。

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【プロフィール】
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自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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