エムズ・ウイスキー・ダイアリー 100年前のウイスキー、故郷に帰る 忍者ブログ
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Shackleton.jpg以前「南極で100年前のウイスキーを発掘」という記事を書いたが、その続報が届いたので紹介しようと思う。探検家アーネスト・シャクルトンが南極に残したウイスキーは、南極歴史遺産トラスト(Antarctic Heritage Trust)によって100年ぶりに発掘されたが、それが昨年2月6日のこと。その後、ウイスキーは保管されていた木箱ごと、ニュージーランド南島のクライストチャーチにあるカンタベリー博物館に送られた。「英国南極探検1907 (British Antarctic Expedition 1907)」と書かれた木箱はそこで慎重に解凍され、中のボトルが取り出されたという。

shackleton_whisky5wc.jpgウイスキーの銘柄は、ブレンデッドスコッチのマッキンレーズ。現在はインドUBグループ系列のホワイト&マッカイ社が、このブランドのライセンスホルダーだ。UBグループの総帥であるビジェイ・マルヤ氏は、これらの貴重なボトルが南極歴史遺産トラストの倉庫に放置されていることをいやがり、今月の17日に3本のボトルを自家用ジェットに積んでスコットランドに持ち帰った。これらのウイスキーは、今後6週間かけてインヴァーゴードンにある同社の研究室で分析され、マスターブレンダーのリチャード・パターソン氏によってアロマやフレーバーのチェックが行われる予定だという。なおサンプルの抽出方法だが、抜栓はしないで、コルクに注射針を突き刺して抜き出す。これは液体が大気に触れることによって変質するのを防ぐためで、ボトルから古い酒を抽出する際にはよく使われる方法だ。

shackleton_whisky3wc.jpgパターソン氏は、「このウイスキーは氷の中で保存されていたため、フレーバーはほとんど劣化していない可能性が高いですね。また、風味は今日のブレンデッドウイスキーよりも重く、よりピーティであることも予想されます。分析器にかければ原料の大麦の産地と品質を特定できるばかりでなく、麦芽やピート、あるいは含まれている毒素や金属成分をも調べることができます。このサンプルが示す特性は、例えるなら“指紋”のようなものです。それらを手がかりに、現代ではすでに失われてしまった19世紀後期のウイスキー製造工程を推察することもできます。」とコメントしている。

なお分析が終われば、残りのウイスキーとボトルはニュージーランドに送り返されることになっている。というのも、歴史的な南極探検家の遺物は、研究や調査等の目的で一旦掘り起こしても、最終的には発見した場所に戻しておかなくてはならないと、国際法で定められているためだ。ただし例外のケースもあるそうで、その遺物の破損や劣化もしくは盗難を防ぐという見地から、元の場所に戻すよりも常温で保管しておく方が望ましいと判断された場合には、その法律の適用を免れるという。南極歴史遺産トラストは現在その判断をしている最中だと、専務取締役のナイジェル・ワトソン氏は説明している。

ちなみにこのマッキンレーズだが、1896~97年頃にボトリングされたものらしい。オーストラリアのウイスキー専門家は、もし市場にだされたら、9万ドル(約740万円)の値はつくだろうとコメントしている。

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【プロフィール】
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自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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