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whisky_galore.jpg今月の3日に、イングランド南部にあるリュースという町(イースト・サセックス州の州都でもある)でオークションが開かれ、地元ダイバーのボブ・パート氏が興味深いウイスキーを出品した。そのウイスキーとは、1941年から半世紀以上も沈没船とともに海の底で眠っていたスコッチのバランタイン。1970年にパート氏は、英デイリー・ミラー紙からの依頼を受け、ダメージを受けていない6本のウイスキーを回収したのだという。今回出品されたのは、そのうちの1本だとのこと。

その沈没船とは、1941年2月5日にニューヨークへ航行中だったSSポリティシャン号。スコットランド北西の大西洋上に浮かぶアウター・ヘブリディーズ諸島のエリスカー島北岸の沖で、砂州に乗り上げ沈没した。乗組員たちが避難し船がサルベージを待つ間に、地元の漁師が船に忍び込んで大量の密輸ウイスキーを発見。そして彼らはなんと、夜の闇に乗じてウイスキー等の積み荷を運びだしてしまったのだ。積まれていたウイスキーは240,000本とも260,000本とも言われ、そのうちの1割が彼らによって運び出されてしまったとのこと。略奪に加わった19人の島民はその後起訴され、1か月間投獄されたという。

whisky_galore_islay_1.jpgその実話をもとにコンプトン・マッケンジーによって書かれた小説が、かの『ウイスキー・ガロア! (1947)』だ。この本はロングセラーとなり、今でも多くのスコットランド人に愛され続けているという。またこの物語は、小説が出版された翌々年に同名のタイトルで映画化もされた。映画はドタバタのコメディで、略奪の様子がユーモラスに描かれている。なおエキストラとして登場する島民たちだが、すべて実際の島民なのだそうな。

ただし、SSポリティシャン号のウイスキーがオークションに出されたのは今回が初めてではない。サウス・ウイスト島のアマチュアダイバーがサルベージした8本のウイスキーが、1987年のクリスティーズのオークションに出品され£4,000で落札されている。また10年ほど前には、空瓶だが何本かがオークションにかけられたこともあるという。

今回のバランタインの落札価格は2,200ポンド。見事落札したのはパリに住む18歳の青年だという。落札後、彼は次のようにコメントしている。「“ウイスキー・ガロア!”は、子供の頃に、楽しく読みました。今回オークションにそのウイスキーが出品されることを知り、入札しようと決めたのです。正直に言うと、ずいぶんと過小評価されているなとは感じました。このウイスキーは飲みたいです。でも飲まずにこのまま保存しておこうと思っています。」

出品したボブ・パート氏は、ウイスキーよりは赤ワインがお好きだとのこと。「今回の落札の結果には大変満足しています。このウイスキーを拾い上げてきた当時は、こんな高値で売れるとは思いもしませんでした。今頃は家族が、臨時収入を楽しみにしていることでしょう。このウイスキーの背景にある物語に多くの人々が興味をもってくれることは、とても嬉しく思います。中身はコルクを通して蒸発して2センチほど目減りしていますが、きっと飲めるはずです。」と、彼はコメントしている。

なお、かつてSSポリティシャン号からサルベージされたウイスキーが、実際に加えられたブレンデッドスコッチが1,400本限定で発売されたことがあった。その名もずばり『SSポリティシャン (SS Politician)』。近年ダンカン・テイラー社からも同名のウイスキーが出されているが、それとはもちろん別。しかし回収されたウイスキーは12本だったそうだから、目減り分も考慮すると単純計算で1本当たり5ミリリットル程度しか含まれていないことになる。まあそんなもんだろう。この場合大事なのは味ではなく、あくまでも気分だからね。

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【プロフィール】
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自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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