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scotch_grain.jpg日本の靴メーカー、スコッチグレインが「モルトドレッシング」という靴の磨き方を提唱している。モルトとはまさにモルトウイスキーのことで、ウィスキーで伸ばした靴クリームで磨きあげる方法。昨年の夏頃からあちこちの百貨店等で実演を行っており、一目見たいものだとずっと思っていたのだが、なかなか足を運べずにいた。そんな折、今月の17日にタイミングよく池袋西武で行われるのを見ることができたので、レポートしたいと思う。

スコッチグレインは、東京墨田区に本社をおくヒロカワ製靴のオリジナルブランド。スコッチ好きの琴線に触れそうなこのネーミングは、スコットランド伝統の穀物模様の革の名前に由来しているという。スコッチグレインの特徴の一つが、手縫い靴の良さを機械縫いで実現するため考案された伝統的の製法だというグッドイヤーウエルト製法。多くの工程と素材、そして熟練した技を必要とするため大量生産に向いていないが、安定性・耐久性に優れているのだとか。

100417_1607~01.jpgモルトドレッシングは、素材の革質によって向き不向きがあるという。吸油性のいい革がいいのだそうだ。しかし油を吸いやすいことは、すなわち汚れやすいということでもあり、使いたがらない靴メーカーも多いという。スコッチグレインは一部の製品に、モルトドレッシングの効果を高めるためにあえて吸油性の高い皮を使用している。フランス中南部の町、アノネイ産の高級カーフ、ベガノだ。ベガノは、この地で13世紀から引き継がれる伝統の技と最新の鞣製技術が造り出すカーフ。革本来の自然な風合いと、手入れをするほどに光沢が深まる革の味わいが高く評価され、フランスの一流靴メーカーをはじめ、世界の有名ブランドが使用している。

モルトドレッシングの手順だが、あらかじめ靴はブラシでほこりや汚れをおとしておく。靴クリームには、乳化性、液体、固体といくつか種類があるが、ここではもっとも艶の出る固形(KIWIが有名)を使う。綿の古布で、缶入りの固形靴クリームを全体に薄く塗る。クリームのふたにモルトウイスキーをたらし、布を少し湿らせる。布に少しクリームをつけ、靴全体を円を描くようにやさしくなでていく。何度も重ね塗りをし、布のすべりが悪くなったらウイスキーとクリームをつけ足す。納得のいく光沢に仕上がったら、使い古したストッキングで全体を軽く磨いて仕上げる。1足の所要時間は30分程度が目安だ。ウイスキー、クリームともに、少量ずつつけるのがきれいに仕上げるコツだという。

be22ea74.jpg当日私は革靴をはいていたのだが、その靴もモルトドレッシングで磨いてみましょうかという思いがけないお申し出を、実演中の廣川社長からいただいた。モルトドレッシング向きに造られた靴ではないのだが、靴には光沢がよみがえり思わず顔がほころぶ。帰り際、革製の牛のマスコットと、再生紙から造った靴べらをお土産にいただいた。

使用していたモルトウイスキーは、シングルモルトのダルモア12年だった。ウイスキーはモルトウイスキーでなくても同様の効果を得られるとのことなので、他の蒸留所のシングルモルトを使っても違いは出ないのだろう。ちなみに、貴重なシングルモルトを靴磨きにつかうなんてというご意見も、恐らくはあると思う。ただ愛着のある靴であるなら、好きなウイスキーをちょこっと分けてやることが惜しいとは私なら思わない。

モルトドレッシングは面白いアイディアだが、この手の“遊び心”は恐らくスコッチグレインのような高いクォリティがあってこそ活きるのだろう。クォリティに対する自信から生まれる余裕が背景になければ、同じアイディアでも色褪せて、あるいは陳腐に感じてしまうような気がする。

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【プロフィール】
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MUNE
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男性
自己紹介:
 1990年頃、スコッチウイスキーの魅力に開眼、次第に傾斜を深めていく。1998年、ウェブサイト「M's Bar」を開設、書き溜めていたシングルモルトのテイスティングノートを公開。2005年、ウイスキー専門誌「THE Whisky World」の発足メンバーに。現在は、試飲のできるリカーショップ「M's Tasting Room」の運営に携わり、ウイスキー関連のイベントでは講師やアドバイザーなども務める。著書に『うまいウイスキーの科学』(ソフトバンククリエイティブ)など。
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